「男子編」に引き続き「女子編」いってみます。
■選考レースを絞ってはどうか
女子の選考レースの結果は、男子とは大きく異なる。
つまり、世界選手権を除く2つの選考レースの優勝者が日本人であるという点だ。その意味で選考は男子に比べると単純に決まってもおかしくないが、そう簡単でもなさそうだ。
男子同様、一にも二にも3人を選ぶための対象レースが4つあるせいだ。男子のところでも書いたが、「世界陸上は別格」だと思っている。陸連としては、ここでメダルを取れば代表決定というニンジンをぶら下げて奮起を計るという意味が大きいのだろう。
もしそこに--つまり世界選手権のメダルに重きを置くなら、メダルを取れなかった場合には選考レースの対象外にしてはどうか。選考レースの発表は、世界選手権終了後にして、表彰台に上がる選手が現れた場合には、選考レースを2つに絞ればいい。
■第1回名古屋ウイメンズマラソンのレース予想とともに
女子については、今週末の名古屋ウィメンズマラソンが残っているので、その結果次第で代表の行方は大きく変わる可能性がある。その可能性も含めて考えてみたい。
◆重友梨佐
大阪国際の重友は本当に強かった。当日のコンディションも最高だった。風もあまりなく、気温もベストな6℃前後。ほぼ曇り。とはいえ、福士を敵に回して、あのレース展開での、最後ぶっちぎりの勝利は、能力の高さをまざまざと見せつけた。
追い上げてきた2位ウクライナのガメラシュミルコに1分23秒差をつけての圧勝。35㎞からのペースダウンを40秒/5㎞ほどに何とかまとめた。あの苦しそうな表情で走りぬいた根性にも感動した。ゴールの笑顔にも。
課題はレース経験の少なさと、やはり世界と戦うための後半のさらなる粘りだろう。
2時間23分23秒はずいぶんもてはやされたが、この好条件のなかだから、立派ではあっても驚くようなタイムでもない。高橋尚子、渋井陽子、野口みずきが並び立った時代なら平凡な記録だ。
さらなる伸びしろを期待したい。
◆赤羽有紀子
二人目の選考がすでに難しい。赤羽さんは名古屋で走ることを強い意志で決断した。構図としては、男子の堀端と似た立場だが、赤羽さんとは似て非なるというべきだろう。
なんといっても、経験・実績に大きな隔たりがある。レースは一発勝負なので、さまざまな要因に左右されるし、マラソンは長丁場なうえに個人競技で誰も助けてくれないので、小さなことが大きく影響する。だから赤羽さんのような選手でも100%の勝利を、レース前から確約はできない。
それでもなお、国内選手にはこの何レースも負けたことがないし、世界陸上・テグ大会でも5位入賞。優勝した実力者キプラガトまでのタイム差も1分以内(52秒)。堀端のところにも書いたが、赤羽さんより上の4人はすべてアフリカ人(ケニア3人、エチオピア1人)。つまり世界を席巻するアフリカ、とりわけケニア・エチオピア選手以外には負けなかった。女子の場合は、欧米や中国にも強い選手がいる。事情は詳しく知らないがテグ大会にはラドクリフもショブホワも出場していないが、価値のある結果だと思う。
すでに代表に決めてもいいくらいだと思っているが、唯一の懸念はやはり海外の国際レースで勝ち切れていないという点だろうか。赤羽さんが勝った唯一のレースは2011年の大阪国際女子マラソンでタイムも26分台。ベストは2011年ロンドンで出した2時間24分8秒。5000m(日本歴代4位)、10000m(日本歴代5位)、ハーフマラソン(日本歴代3位)とどの長距離種目も日本のトップレベルでトラックのスピードも申し分ないのだが、「圧倒的」とはいかない。
そこに赤羽さんのイメージの弱さがある。世界でも通用するが入賞どまり(それだってすごいけれど)という選手に思われてしまうのではないか。女子マラソンに期待されている結果を考えると、実績のある選手だけに逆に可能性を狭められて見られてしまう。
その意味で、今回名古屋を走ることにしたのはよかったと思う。オリンピック本番を考えればじっくり調整したかったのだろうが、名古屋で、疑われている(メダルの)可能性への懸念を完全に払しょくすることこそが本大会へ向けて何よりもなすべきことだという気がする。
あえて言うなら、奇跡的にコンディションが整った野口でもなければ、赤羽さんが負けるはずがないと思う。がんばってください。
◆?
さすがに、最後の選考レースを残している段階で3人目まで予測することは不可能だ。
ここまでの結果から、世評では横浜国際女子を制した木崎良子選手を「当確」とする意見が多いようだ。尾崎好美とのデッドヒートを制した粘り強さは、一皮むけた感じはしたけれど、万全の尾崎ではない。選考対象の国際レースを優勝した実績は重いので、対象レースが3つなら文句なしなのだが・・・。
もう数日で結果が出ることなので、もし、を連発しても仕方がないといえば仕方がないのだが、それでも「もし」、フラットなコースで朝9時過ぎスタートに変更となった名古屋で、野口、赤羽、尾崎好美あたりがデッドヒートを繰り広げ、2時間22分以内くらいで優勝争いしたら陸連はいったい誰を選ぶのだろう?
男子の結果から類推するに、2度目の選考レースに臨む尾崎はコンディション的にハードなのは否めない。渋井もよほど身体を絞ってくればわからないが、ここ最近のレース内容からすると優勝争いに絡むのは難しい気がする(残念だけれど)。
加納由理、出産後復帰レースの土佐礼子も実績は十分だが、難しそうだ。むしろ中里麗美あたりはそこそこ終盤までもつれる可能性もある気がする。このレースにはほかにも那須川、伊藤舞、再チャレンジの永尾薫、去年の東京を制した福士の練習パートナー・樋口紀子などなど若手中堅の有力選手も多い。
あまりにもいろんなケースがありうるので、すべての可能性を論じていては話が進まない。
わたしは赤羽さんが名古屋を制す、もしくは敗れるにしても終盤までもつれて、という結果を予想しているので、その前提で話を進めたい。
2位にも可能性があるとすれば、問題はおそらくタイムではなくて順位であり赤羽さんとのタイム差になると思う。だいたいこのメンバーでそんなひどいタイムになるはずもない。
ヌデレバ、シモンという名選手も招待されているが、他の招待選手も含めてベテランぞろいで、日本の今回のメンバーの敵ではないと思われるので、日本選手の優勝確率は相当高い。
いずれにしても、代表選考の焦点は選考対象レースを優勝した木崎が選考から漏れるということがありうるのか?という1点に尽きる。
常識的にはありえないだろう。
となれば、結論的には、重友、木崎、そしてタイムや展開に関係なく名古屋の優勝者で決まりということになる。
なんという結論!
繰り返しになるが、野口、赤羽、尾崎が最終盤までデッドヒートを繰り広げ3人とも2時間23分を切るようなタイムだったらどうするのか?
もう、わたしの手には負えない。陸連のお歴々の方々に頭を悩ませていただくしかない。
ただ、そういい可能性は--野口、尾崎のコンディション次第だが--ありえなくもないし、そんなレースになるかもと思っただけでワクワクする。
この3人については、体調が万全で、それなりに練習が積めていれば、いずれ劣らぬ世界トップクラスの能力がある。そういう状態なら木崎よりも実力は上だと思うし、経験が重要なマラソンでは、本大会を考えれば、結果次第ではこの三人を選ぶべきじゃないかという気もする。
しかし、おそらく、このレースからは優勝者しか選ばれない。出場枠は1で、一発勝負の選考会だと考えて臨むしかない。
選手の皆さんの検討を祈ります。
■選考レースを絞ってはどうか
女子の選考レースの結果は、男子とは大きく異なる。
つまり、世界選手権を除く2つの選考レースの優勝者が日本人であるという点だ。その意味で選考は男子に比べると単純に決まってもおかしくないが、そう簡単でもなさそうだ。
男子同様、一にも二にも3人を選ぶための対象レースが4つあるせいだ。男子のところでも書いたが、「世界陸上は別格」だと思っている。陸連としては、ここでメダルを取れば代表決定というニンジンをぶら下げて奮起を計るという意味が大きいのだろう。
もしそこに--つまり世界選手権のメダルに重きを置くなら、メダルを取れなかった場合には選考レースの対象外にしてはどうか。選考レースの発表は、世界選手権終了後にして、表彰台に上がる選手が現れた場合には、選考レースを2つに絞ればいい。
■第1回名古屋ウイメンズマラソンのレース予想とともに
女子については、今週末の名古屋ウィメンズマラソンが残っているので、その結果次第で代表の行方は大きく変わる可能性がある。その可能性も含めて考えてみたい。
◆重友梨佐
大阪国際の重友は本当に強かった。当日のコンディションも最高だった。風もあまりなく、気温もベストな6℃前後。ほぼ曇り。とはいえ、福士を敵に回して、あのレース展開での、最後ぶっちぎりの勝利は、能力の高さをまざまざと見せつけた。
追い上げてきた2位ウクライナのガメラシュミルコに1分23秒差をつけての圧勝。35㎞からのペースダウンを40秒/5㎞ほどに何とかまとめた。あの苦しそうな表情で走りぬいた根性にも感動した。ゴールの笑顔にも。
課題はレース経験の少なさと、やはり世界と戦うための後半のさらなる粘りだろう。
2時間23分23秒はずいぶんもてはやされたが、この好条件のなかだから、立派ではあっても驚くようなタイムでもない。高橋尚子、渋井陽子、野口みずきが並び立った時代なら平凡な記録だ。
さらなる伸びしろを期待したい。
◆赤羽有紀子
二人目の選考がすでに難しい。赤羽さんは名古屋で走ることを強い意志で決断した。構図としては、男子の堀端と似た立場だが、赤羽さんとは似て非なるというべきだろう。
なんといっても、経験・実績に大きな隔たりがある。レースは一発勝負なので、さまざまな要因に左右されるし、マラソンは長丁場なうえに個人競技で誰も助けてくれないので、小さなことが大きく影響する。だから赤羽さんのような選手でも100%の勝利を、レース前から確約はできない。
それでもなお、国内選手にはこの何レースも負けたことがないし、世界陸上・テグ大会でも5位入賞。優勝した実力者キプラガトまでのタイム差も1分以内(52秒)。堀端のところにも書いたが、赤羽さんより上の4人はすべてアフリカ人(ケニア3人、エチオピア1人)。つまり世界を席巻するアフリカ、とりわけケニア・エチオピア選手以外には負けなかった。女子の場合は、欧米や中国にも強い選手がいる。事情は詳しく知らないがテグ大会にはラドクリフもショブホワも出場していないが、価値のある結果だと思う。
すでに代表に決めてもいいくらいだと思っているが、唯一の懸念はやはり海外の国際レースで勝ち切れていないという点だろうか。赤羽さんが勝った唯一のレースは2011年の大阪国際女子マラソンでタイムも26分台。ベストは2011年ロンドンで出した2時間24分8秒。5000m(日本歴代4位)、10000m(日本歴代5位)、ハーフマラソン(日本歴代3位)とどの長距離種目も日本のトップレベルでトラックのスピードも申し分ないのだが、「圧倒的」とはいかない。
そこに赤羽さんのイメージの弱さがある。世界でも通用するが入賞どまり(それだってすごいけれど)という選手に思われてしまうのではないか。女子マラソンに期待されている結果を考えると、実績のある選手だけに逆に可能性を狭められて見られてしまう。
その意味で、今回名古屋を走ることにしたのはよかったと思う。オリンピック本番を考えればじっくり調整したかったのだろうが、名古屋で、疑われている(メダルの)可能性への懸念を完全に払しょくすることこそが本大会へ向けて何よりもなすべきことだという気がする。
あえて言うなら、奇跡的にコンディションが整った野口でもなければ、赤羽さんが負けるはずがないと思う。がんばってください。
◆?
さすがに、最後の選考レースを残している段階で3人目まで予測することは不可能だ。
ここまでの結果から、世評では横浜国際女子を制した木崎良子選手を「当確」とする意見が多いようだ。尾崎好美とのデッドヒートを制した粘り強さは、一皮むけた感じはしたけれど、万全の尾崎ではない。選考対象の国際レースを優勝した実績は重いので、対象レースが3つなら文句なしなのだが・・・。
もう数日で結果が出ることなので、もし、を連発しても仕方がないといえば仕方がないのだが、それでも「もし」、フラットなコースで朝9時過ぎスタートに変更となった名古屋で、野口、赤羽、尾崎好美あたりがデッドヒートを繰り広げ、2時間22分以内くらいで優勝争いしたら陸連はいったい誰を選ぶのだろう?
男子の結果から類推するに、2度目の選考レースに臨む尾崎はコンディション的にハードなのは否めない。渋井もよほど身体を絞ってくればわからないが、ここ最近のレース内容からすると優勝争いに絡むのは難しい気がする(残念だけれど)。
加納由理、出産後復帰レースの土佐礼子も実績は十分だが、難しそうだ。むしろ中里麗美あたりはそこそこ終盤までもつれる可能性もある気がする。このレースにはほかにも那須川、伊藤舞、再チャレンジの永尾薫、去年の東京を制した福士の練習パートナー・樋口紀子などなど若手中堅の有力選手も多い。
あまりにもいろんなケースがありうるので、すべての可能性を論じていては話が進まない。
わたしは赤羽さんが名古屋を制す、もしくは敗れるにしても終盤までもつれて、という結果を予想しているので、その前提で話を進めたい。
2位にも可能性があるとすれば、問題はおそらくタイムではなくて順位であり赤羽さんとのタイム差になると思う。だいたいこのメンバーでそんなひどいタイムになるはずもない。
ヌデレバ、シモンという名選手も招待されているが、他の招待選手も含めてベテランぞろいで、日本の今回のメンバーの敵ではないと思われるので、日本選手の優勝確率は相当高い。
いずれにしても、代表選考の焦点は選考対象レースを優勝した木崎が選考から漏れるということがありうるのか?という1点に尽きる。
常識的にはありえないだろう。
となれば、結論的には、重友、木崎、そしてタイムや展開に関係なく名古屋の優勝者で決まりということになる。
なんという結論!
繰り返しになるが、野口、赤羽、尾崎が最終盤までデッドヒートを繰り広げ3人とも2時間23分を切るようなタイムだったらどうするのか?
もう、わたしの手には負えない。陸連のお歴々の方々に頭を悩ませていただくしかない。
ただ、そういい可能性は--野口、尾崎のコンディション次第だが--ありえなくもないし、そんなレースになるかもと思っただけでワクワクする。
この3人については、体調が万全で、それなりに練習が積めていれば、いずれ劣らぬ世界トップクラスの能力がある。そういう状態なら木崎よりも実力は上だと思うし、経験が重要なマラソンでは、本大会を考えれば、結果次第ではこの三人を選ぶべきじゃないかという気もする。
しかし、おそらく、このレースからは優勝者しか選ばれない。出場枠は1で、一発勝負の選考会だと考えて臨むしかない。
選手の皆さんの検討を祈ります。