3月4日に行われたびわ湖毎日マラソン。ありがたい?ことに、メールなどで「出てるの?」といった問い合わせが相次いで驚いた。
出たいのはヤマヤマだけれど、残念ながら「出てません」いや、「出れません」。
びわ湖毎日マラソンの参加資格は2時間30分。もちろん陸連登録して公式レースを走り認定を受けた記録でなければならない。ハードルが高い。果てしなく。東京スカイツリー並みといっていい。
それはともかく、今回の結果は選考委員からすれば、予想もしない悩ましい結果だったにちがいない。今週末の名古屋ウィメンズマラソンでもって男女ともに選考レースが終わり、12日にも代表が発表になる。女子も名古屋の結果次第では混沌を極める可能性がある。
なぜこういうことになるかといえば、マラソンほど内的・外的要因に結果が影響されやすい競技はないということだ。内的要因については個々人の問題なので、人生同様やむをえないが、競技時間が長いゆえに外的要因--すなわち天候・気候・コースレイアウトなどだ--を総合的に「公平に」判断するなど実際には不可能で、にもかかわらず4レースの結果を並べて判断しようとするところに問題がある。
公平と言いながら不公平になりかねない。個人的には、マラソンの様な競技こそアメリカのように一発勝負で、まったく同じ外的条件でもって1位から3位までの選手を選ぶことが最も公平なセレクションになると思うのだが。そこに内的=個人的要因が偶然重なった--故障だったり体調不良だったり身内の不幸だったりということだ--としてもそれもう、選手も陸連も不運とあきらめるしかないだろう。C'est la vie.
■男子代表の行方を考えてみる
かようにレースの外的要因を比較するのは難しいので、選考対象の4レースのレベルを云々するのは基本的にはおかしい。唯一、出場するためにセレクションがあった世界選手権だけは別格と考えるのは当然ではないか。
他の3レースは出場選手のレベルがどうだとか、気象条件がどうだとかは極端に言えば無視して、「フィニッシュタイム」ではなく、順位やタイム差を重視すべきだと考える。
もうひとつ。今回はとくに複数の選考レースに出場している選手が多い。その場合、悪い結果よりもよい結果を重視すべきだと考える。過去の例を見ても、たとえば瀬古や谷口のような選手でも、オリンピックではうまくいかなかった。つまり失敗レースは、「ままある」。だからコンスタントに10位前後の選手(コンスタントに3位以内なら別だ)よりは一発すごい成績を出した選手を重視すべきではないか。(入賞だってもちろん立派穴成績だけど)日本のマラソンはすでに入賞など期待されていない。
最後までトップ集団にいて、最後まで粘って優勝争いに絡むような選手。その可能性が少しでもある選手が代表に選ばれるべきだからだ。
◆藤原新
この前提でレース結果を見ると、まず優勝した日本人は一人もいないという冷徹な事実を認めないわけにはいかない。
2位に入ったのは東京の藤原新だけ。トップのキビエゴまで11秒。もちろん日本人1位。日本人2位の前田とは1分の差がある。きわめて好条件のなかでの7分台がそれほどいいタイムだとは思わないし、先頭集団につかずに挽回するレースメイクでは、男子の場合メダルの可能性はない。
それでも、今回の選考対象者のなかでは文句なしに選ばれて当然といわねばならない。オリンピックに賞金やBMWはぶら下がってないが比べようもない名誉に目がくらんでゴールを駆け抜けることを期待したい。
◆山本亮
2人目に誰を選ぶか。もうずいぶん難しい。日本人1位で全体の3位以内に入ったのは福岡の川内だけ。びわ湖の山本は4位。世界選手権の堀端は7位だ。川内とトップとの差は2分21秒。優勝タイムは2時間7分36秒。一方、山本はトップまで1分40秒。こちらは優勝タイムが2時間7分4秒。3位と4位の差は大きいと思うけれど、山本は3位までわずか7秒まで迫った。
早々に先頭から遅れ、寒さで失速した選手を拾ってゆくというレースメイクにあまり魅力を感じないが、事実関係を公平に整理するなら、山本も選ばない理由を見つけにくい。「オリンピックと念じていた」というインタビューの応えにはちょっと驚いた。ノーマークの彼が日本人トップになるとは思っていなかったはずなのに、彼だけは自分を信じて走り続けた。その強い思いに期待したい。
◆堀端宏行
そして難題の3人目。今回のレースがあまりにもろかった印象だが、世界選手権日本人トップで7位入賞は重いと思う。ダントツ1位キルイの2時間7分38秒まで4分12秒だが2位キプルトまでなら1分46秒、3位リレサまで1分20秒。だいぶ遠い。しかしながら、堀端の上6人は全員アフリカの選手だ。ケニア4人、エチオピア、モロッコが1人ずつ。つまりアフリカ人以外では1位だ。その意味では10位の中本だって立派な成績だと思う(上にはイタリア人とウガンダのキプロティッチ。この人は東京でゴール前藤原に抜かれて3位だった)
びわ湖では雨と寒さでけいれんを起こし(給水は後半取れるシーンでも取らなかったのはなぜなんだろう?)急失速したが、後半まで日本人でただ一人トップ集団にいた勇気と高い意識は相当評価されていい。なんてったって日本人では彼一人だったのだから。
失敗の原因が明らかで、かつ実力No.1はおそらく誰もが認めるところ。ロンドンの気象条件がまずまず普通で、給水についての反省を生かせば上位入賞が可能な唯一の日本人ランナーだと思う。
その走りにはいつも感動させられる--タイムや順位に関係なく--川内に、ぜひ出てもらいたかった。その川内自身も「自分より堀端」と語っている。川内も東京での失敗の原因が明確(序盤の連続給水失敗)なので、選考レースでの日本人1位は軽んじられ過ぎだと思うが、3人を選ぶのに選考レースが4つあること自体おかしいので、堀端との比較で切符を譲らざるを得ない。
出たいのはヤマヤマだけれど、残念ながら「出てません」いや、「出れません」。
びわ湖毎日マラソンの参加資格は2時間30分。もちろん陸連登録して公式レースを走り認定を受けた記録でなければならない。ハードルが高い。果てしなく。東京スカイツリー並みといっていい。
それはともかく、今回の結果は選考委員からすれば、予想もしない悩ましい結果だったにちがいない。今週末の名古屋ウィメンズマラソンでもって男女ともに選考レースが終わり、12日にも代表が発表になる。女子も名古屋の結果次第では混沌を極める可能性がある。
なぜこういうことになるかといえば、マラソンほど内的・外的要因に結果が影響されやすい競技はないということだ。内的要因については個々人の問題なので、人生同様やむをえないが、競技時間が長いゆえに外的要因--すなわち天候・気候・コースレイアウトなどだ--を総合的に「公平に」判断するなど実際には不可能で、にもかかわらず4レースの結果を並べて判断しようとするところに問題がある。
公平と言いながら不公平になりかねない。個人的には、マラソンの様な競技こそアメリカのように一発勝負で、まったく同じ外的条件でもって1位から3位までの選手を選ぶことが最も公平なセレクションになると思うのだが。そこに内的=個人的要因が偶然重なった--故障だったり体調不良だったり身内の不幸だったりということだ--としてもそれもう、選手も陸連も不運とあきらめるしかないだろう。C'est la vie.
■男子代表の行方を考えてみる
かようにレースの外的要因を比較するのは難しいので、選考対象の4レースのレベルを云々するのは基本的にはおかしい。唯一、出場するためにセレクションがあった世界選手権だけは別格と考えるのは当然ではないか。
他の3レースは出場選手のレベルがどうだとか、気象条件がどうだとかは極端に言えば無視して、「フィニッシュタイム」ではなく、順位やタイム差を重視すべきだと考える。
もうひとつ。今回はとくに複数の選考レースに出場している選手が多い。その場合、悪い結果よりもよい結果を重視すべきだと考える。過去の例を見ても、たとえば瀬古や谷口のような選手でも、オリンピックではうまくいかなかった。つまり失敗レースは、「ままある」。だからコンスタントに10位前後の選手(コンスタントに3位以内なら別だ)よりは一発すごい成績を出した選手を重視すべきではないか。(入賞だってもちろん立派穴成績だけど)日本のマラソンはすでに入賞など期待されていない。
最後までトップ集団にいて、最後まで粘って優勝争いに絡むような選手。その可能性が少しでもある選手が代表に選ばれるべきだからだ。
◆藤原新
この前提でレース結果を見ると、まず優勝した日本人は一人もいないという冷徹な事実を認めないわけにはいかない。
2位に入ったのは東京の藤原新だけ。トップのキビエゴまで11秒。もちろん日本人1位。日本人2位の前田とは1分の差がある。きわめて好条件のなかでの7分台がそれほどいいタイムだとは思わないし、先頭集団につかずに挽回するレースメイクでは、男子の場合メダルの可能性はない。
それでも、今回の選考対象者のなかでは文句なしに選ばれて当然といわねばならない。オリンピックに賞金やBMWはぶら下がってないが比べようもない名誉に目がくらんでゴールを駆け抜けることを期待したい。
◆山本亮
2人目に誰を選ぶか。もうずいぶん難しい。日本人1位で全体の3位以内に入ったのは福岡の川内だけ。びわ湖の山本は4位。世界選手権の堀端は7位だ。川内とトップとの差は2分21秒。優勝タイムは2時間7分36秒。一方、山本はトップまで1分40秒。こちらは優勝タイムが2時間7分4秒。3位と4位の差は大きいと思うけれど、山本は3位までわずか7秒まで迫った。
早々に先頭から遅れ、寒さで失速した選手を拾ってゆくというレースメイクにあまり魅力を感じないが、事実関係を公平に整理するなら、山本も選ばない理由を見つけにくい。「オリンピックと念じていた」というインタビューの応えにはちょっと驚いた。ノーマークの彼が日本人トップになるとは思っていなかったはずなのに、彼だけは自分を信じて走り続けた。その強い思いに期待したい。
◆堀端宏行
そして難題の3人目。今回のレースがあまりにもろかった印象だが、世界選手権日本人トップで7位入賞は重いと思う。ダントツ1位キルイの2時間7分38秒まで4分12秒だが2位キプルトまでなら1分46秒、3位リレサまで1分20秒。だいぶ遠い。しかしながら、堀端の上6人は全員アフリカの選手だ。ケニア4人、エチオピア、モロッコが1人ずつ。つまりアフリカ人以外では1位だ。その意味では10位の中本だって立派な成績だと思う(上にはイタリア人とウガンダのキプロティッチ。この人は東京でゴール前藤原に抜かれて3位だった)
びわ湖では雨と寒さでけいれんを起こし(給水は後半取れるシーンでも取らなかったのはなぜなんだろう?)急失速したが、後半まで日本人でただ一人トップ集団にいた勇気と高い意識は相当評価されていい。なんてったって日本人では彼一人だったのだから。
失敗の原因が明らかで、かつ実力No.1はおそらく誰もが認めるところ。ロンドンの気象条件がまずまず普通で、給水についての反省を生かせば上位入賞が可能な唯一の日本人ランナーだと思う。
その走りにはいつも感動させられる--タイムや順位に関係なく--川内に、ぜひ出てもらいたかった。その川内自身も「自分より堀端」と語っている。川内も東京での失敗の原因が明確(序盤の連続給水失敗)なので、選考レースでの日本人1位は軽んじられ過ぎだと思うが、3人を選ぶのに選考レースが4つあること自体おかしいので、堀端との比較で切符を譲らざるを得ない。