蛙さんのブログに、見事な牡丹が咲いていました。
花王に相応しい立派な花。色も空気も香る。牡丹の花を贈られるなどは、めったにないことでしょうけれど、以前、一度だけそんな希有な体験をしたことがありました。
その花を飾った部屋は、まさに、花王の薫にみたされた、形容しがたい至福の空間となりました。その香りも含めての花の王を実感したのでした。
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趣は異なりますが、その木も忘れがたい。
『牡丹の木』(ぼたんのぼく)、 白秋の歌集にあり.
須賀川の牡丹の木のめでたきを爐にくべよちふ雪ふる夜半に
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青柳志解樹さんの『百花逍遙』によれば、
”牡丹の粗朶を焚いて暖をとってもらうのは、遠来の客への冬のもてなし”
であったという。
そういえば、子どもの頃、祖父の家の土間の壁にかけてあったあの包み。あれこそは「牡丹の木」であったと、謎が解けました。
長いことひとり暮らしをしていた祖父は、寒い冬の夜をだれと語り合おうと思ったのでしょうか。マイペースで、あまり人づき合いが上手とは言えなかった祖父の牡丹の木は、焚かれることもなく、長いことぶら下げられたままではなかったか。煤けた紙にくるまれていた牡丹の木を思い出します。