朝のうちにすませておきたい用事があり、運河沿いの遊歩道を通って船堀まで行く。
運河は、中川と旧江戸川を結ぶ水路のこと。江戸時代に、行徳の塩を江戸に運ぶために掘られた、新川と呼ぶ川である。
ちょうど満潮で、河口の方から潮が押し寄せている。水面にポツポツと見えるのはボラの稚魚だそうだ。ちいさな群れがところどころで水面を切る。
スポットスポットを占める釣り人の姿。女性の方も二人ほど見えた。
「おじさんが釣っているのは、何?」
「ハゼだよ」
カジカに似た黒茶っぽい小さな魚がカンの底にいる。これぞ江戸前のハゼ?
帰りは、反対側の遊歩道を通る。つい先日、歩いた時に目星をつけておいたある草を撮ろうと思っていた。が、イヤに道がきれいに刈り込まれているのが気になる。果たしてあるだろうか。
お目当ての草はあった。肌色の小さな莢のような種をしゃらしゃらと鳴らして。
こんな都会の片隅に取り残されたように、丈高く花を咲かせている。
タケ二グサ。ここにあるのがふしぎなくらいだ。
まだ、海鳥たちもお出ましではない。どよーんと半分眠ったように運河は淀み、ボラの稚魚だけが目覚めている・・・