中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

金銭欲

2010-02-13 09:49:05 | 身辺雑記
 古い卒業生のK君と昼食をとった後で話をしていると、在学中に彼が教わった教師の話になった。何人かの教師の授業中の想い出を懐かしそうに話していたが、ある1人の教師になると急に苦い顔をして、「彼は守銭奴ですよ」といささか過激なことを言った。ちょっとびっくりしたが、その教師の金銭に対する執着の強さには思い当たることがあったので、「どうしてそんなことが分かったんだ」と尋ねると、「生徒というのは分かるものなんですよ」と言った。

 その教師は私と同じ年に採用された。私達はまだ20代半ばだったが、彼は初めのうちから金銭に対する執着の強さを隠すこともなく、当時はまだ禁止はされていなかったが、学習塾の講師になって放課後にはしばしば塾に向かうようで、K君も授業が終わったらすぐにアルバイトに行って、クラブ活動の指導なんか眼中になかったと、忌々しそうに言った。そのような彼は同僚達からいささか冷たい目で見られていたようだったが意に介することはなかった。

 当時私たちの給料は今のように銀行振り込みではなく、給料日になると事務室に行き、給料袋を事務の人から受け取った。袋の表には事務員が手書きした明細が書かれていたが、中には別の袋をもらって実際よりも少ない額に書き直してもらい、奥さんに内緒で小遣いをせしめる常連もいたのがおかしかった。ある給料日に事務室に行くと何人か先に来ていたのでしばらく待っていたが、件の教師が私の前にいた。その彼が急に私の顔を見て周囲の人達に、「この男は怪しからんのですよ。私より年下のくせに私より給料が上なんです」と言った。私とは同い年だが誕生月は私より少し早く、それに私には 学歴加算があったから彼よりも1号俸上だったことは確かで、そのことについては前々から彼が私に含むところがあったのは感じていたが、まさか皆の前であからさまに言うとは思いも寄らなかったのでいささか驚いた。しかし周囲の人達は相手にしない様子で反応はなかった。その上彼は「だから給料が低い分を補うためにバイトしてるんです」としゃあしゃあと付け加えたので私は、「ちょうど足りない額だけバイトするのは難しいだろうね」と皮肉ったが、まったく蛙の面に水だった。

 教師も人間だから、いろいろな者がいるのは当然で、彼のように金銭欲が強いのがいても不思議ではない。だが聖職者ぶることはないが、それをあからさまに出すことについてはやはり節度とけじめが必要だ。彼にはそれが乏しかったから、事務室で品性を疑われるようなことを言ったのだろう。それだけならまだいいが、生徒達に金銭に執着の強い教師だと感じ取られるような言動があったとするならば、K君のような敏感な生徒から軽蔑されても仕方があるまいと思う。