Aさんの日本画作品2点をご紹介いたします。
「朝霧」 日本画 P10
霧に包まれたまだ明けきらぬ深い森に佇む牡鹿。つぶらな瞳で
遠くを見つめ、何かの気配を感じ取っている光景は実に神秘的です。
森のすべてを覆いしっとりと潤しながら朝日を通す冷気のようすは
清らかで美しく、見るものの心にも爽やかな風が吹いてくるようです。
近づいてみました。
作品の要である青白く輝く霧の表現にはとても時間をかけました。
創意工夫の過程で胡粉の表現の奥深さに多くのことを学ばれました。
描いたり消したり洗ったりを繰り返して岩絵の具の粒子の大きさや
温度湿度の違いによる膠加減にも新たな気付きのあった力作です。
2点目です。
「あやめ」 日本画 F4
初夏に咲くあやめの少し珍しい白花です。その花姿は凛として涼やか。
周囲の豊かな環境を感じさせる背景は深みがあり花色が映えています。
今まで使うことが少なかった系統の緑色を組み合わせ、新たな世界を
創りだされました。穏やかであたたかみを感じる作品です。
近づいてみました。
盛り上がるほどに岩絵の具と胡粉が重ねられた花は月光のように
仄かな光を放ち、あやめの特徴である花弁の紋も細やかに表現
されています。軽やかに仕上げるために岩絵の具の粒子を選んで
重ね、洗う作業もしたことで透明感のある風雅な味わいとなりました。
作品毎に研究課題を設定されているAさん。次の作品も楽しみですね。
過去の作品はHP「上郷の森 日本画教室」内の“作品集”の中の
Aさんのページに制作順に掲載されています。ぜひこちらもご覧下さい。