癌春(がんばる)日記 by 花sakag

2008年と2011年の2回の大腸癌手術
   ・・・克服の先に広がる新たな春を生きがいに・・・

40年ぶりの串田孫一著「小さな愛の物語」

2013年10月09日 | 日常生活・つぶやき

 串田孫一は好きな作家の一人だ。中でも、山、自然、人生などをめぐる思索的で詩情溢れる随想が好きだ。今でも「山のパンセ」や「北海道の旅」などは良く読み返している。

 この串田孫一を知ったのは、20代の頃、たまたま買った「小さな愛の物語」(昭和42年発刊)という本だった。「ナルダ」という小さな女の子と孤独な青年「わたし」の心の交流と思索が中心の童話のようなお語。物語とも随筆ともエッセーともつかない内容だが、独特の美しい文章に惹かれた。

 当時の自分の愛書中の愛書だった。しかし、あちこちに貸している内にいつの間にかなくなってしまった。その後、絶版になって新たに手に入れることはできなかった。

 たまたま、先月、ネットで検索していたら、古本屋で1冊出品されていた。2000円の値がついていたが、また読んでみたくなって購入した。送られてきた本を見たら当時の定価は460円だった。すっかり忘れていたが、ケースに入った本だった。最近は、このようにケースに入っている本は辞典の類しか見ることがなくなった。

 改めて読み返してみた。20代の頃の自分に会ったような懐かしさはあるのだが、当時の甘美にも似た感動がよみがえらない。若いときの感受性と今とでは違うのだろうが、ちょっと残念。しかし、文章表現の美しさは、以前より強く感じられる。