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子供のころ、旧大野町(現北斗市)で育ったが、周りはほとんどが水田農家だった。今と違って、すべて手作業だった当時の田植えは子供も重要な労働力だった。
この時期になると、学校も1週間~10日間ほどの田植え休みがあった。自分の家は農家ではなかったので、あちこちの友達の家の田植えを手伝ったものだ。
作業には必ず午後3時ごろに小昼(こびる)という休憩時間があった。そのときに、どこの家でも直径10cmほどもある5個セットの田植え餅(大福餅)が振る舞われたものである。1個食べたら腹一杯になり、残りは持ち帰ったが、子ども心にそれが一番の楽しみだった。5個のうち、どの家でも必ずよもぎ餅(草大福)が1個入っていた。
ふと思い出して、ネットで検索してみたら、北斗市本町の金丸菓子舗で、昔懐かしの田植え餅の草大福を季節限定で扱っているという。
子どもの頃は屋号の「カネスンさん」が通称で、店の前は毎日の通学路だった。朝のうちに電話を入れたら、予約が多いとのことで、その場で5個セット(950円)を注文し、車を走らせた。
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道路拡幅工事で、新しい店になっていたが、昔と同じ場所にあった。この付近の子どもの頃の店では唯一残っている店だ。
明治40年創業で道南で2番目に古い歴史を持つお菓子屋さんとのこと。ちなみに道南で1番古いお菓子屋さんは茂辺地にある一福さんで、こちらより2年古いらしい。
店に入ったら、5個セットの予約の包みがたくさん積まれていた。人気ですぐに売れ切れてしまうらしい。一気に7セットも買って行った客もいた。豆大福との「ミックス」もあるらしいが、すでに売れ切れていた。注文の少ないときは、どちらも1個200円でばら売りもしているらしい。。
購入後、60年ぶりに拝顔した10歳近く年上の女将さんに名前を名乗り、子どもの頃の話をしたら覚えてくれていた。しかも、子供のころ見ていた女将さんと同じ顔をしたお嬢さんが函館市内で自分と同職にあったこともあり、お嬢さんからも聞いていたらしく、新聞の連載記事を楽しみに読んでくださっていたという。
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子供のころから「うす皮」と呼んでいた、懐かしい経木(きょうぎ)に包まれていた。
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中から現れた5個の「草大福」(950円)・・・よもぎが手に入る5/10から2ヶ月間ほどの限定販売らしい。
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子供のころの田植え餅よりはひと回り小さい直径8cm。
女将さんも、「昔の田植え餅はもっと大きかったよね。これでもお客さんから大きいと言われるんですよ」とのこと。
帰宅後、早速、ひと口食べてみた。懐かしい歯ごたえとあっさり目の甘さ、さらには、繊維も残っている新鮮なよもぎの味が美味しい。
昔の田植え餅には、豆大福はなかったはずだが、今度ミックスで求めてみようと思う。
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帰りに撮った田植えがすでに終わっている田んぼ。これも懐かしい光景だ。