蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

教室を生きのびる政治学

2023年08月26日 | 本の感想

教室を生きのびる政治学(岡田憲治 晶文社)

学校をモデルにして意思決定や民主主義について解説した本。
政治の独特の性質は「選んで、決めて、受け入れさせる」ということだという。

学校の文化祭におけるクラスの催し事を決めるとき、大半の生徒はやる気も意見もないが、それでもホームルームで決められたことは「自分たちで決めたことだから、誰のせいにもできない」という意識を参加者に持たせる。これを「自己決定の主体としての当事者性」というそうだ。

民主政治とは「自分の生活に影響を与えるような決め事をさなれるときには、直接・関節にもの申す権利を持っている」ということで、だから当事者性を参加者が自覚できることが重要という。

民主主義≠多数決であり、民主主義とは「多くのメンバーの力やセンスを集めて、一人ではできないことを協力してやるための方法」である、という。そのため、失敗してやり直すことを前提にしている、と。

・・・みたいなことが本書の要旨かな、と思うのだが、議論が順序よく整頓されてない印象で、分かりづらかった。

福島第一原発の処理水放出を巡って、政府は、漁業者の理解なしに放出することはない、と約束していた。放出決定のタイミングで漁業団体の代表は放出への反対を前提に、「約束は破られてはいないが、果たされてもいない」と発言した。これで世間的には放出を容認した、と受け止められた(と思う)。

言葉としては実にわかりにくいが、こういうのが政治なのかな、と私は感じた。今からふりかえると、「反対があるうちは放出しない」ではなくて「理解なしに放出しない」と言ったのが、知恵(というか悪賢い?)だったのかな。

 


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