嬉(うれ)しさは ワンちゃんお前 猫かいな 足元じゃれて すぐもぐるとき
「アトムさん、
コタツの上に乗ってしてもらってええよ」とばあちゃんは言います。
隣の台所から、
部屋のワンちゃんに「こっちに来い、こっちに来いや」と、蒸かしたサツマイモを差し出し叫びます。
雪の中を駆けつけ、照明器具の取替えです。
一人暮らしのばあちゃんちには、
娘さんから預かった、部屋飼いの小さなワンちゃんが居ます。
『こんにちわ~』と玄関を開けると同時に、
茶の間のほうから「パタパタ、パタ~」と、可愛い小さなワンちゃんが走ってきます。
「ワンワン、キャンキャン」と、うるさく吠える犬もいます。
気が狂ったように、走り回る犬もいます。
ばあちゃんちの犬は、
「フン」とも「スン」とも吠えるのでもなく、ただ真っ直ぐにパタパタと走るのです。
「アトムさん、雪の中すみませんな~あ。
これこれ、そっちに行ったらあかんあかん」と、犬を追いかけながら挨拶です。
ワンちゃんを台所の方に閉じ込めようと、
好物のサツマイモで誘います。
賢いのか、アホなのか、
シッポを振り振り、敷居から先へは行きません。
仕方がないから、
コタツに足を掛けて、照明器具の取替え作業をしてと言いますね。
ばあちゃん、
それからも「こっちに来い、こっちに来いや」と言い続けます。
そのうち、ばあちゃんなんかを無視してワンちゃんは、
コタツから降りて作業する私の足元に、体を摺り寄せじゃれますね。
『なんだお前は犬と違うんか、猫かいな』と思わず叫びます。
『それじゃあ、今日の内訳です。取り付け代はまけときますね』と、
コタツの上で伝票を書きます。
コタツの中に入れた足の隙間をゴソゴソします。
小さな可愛いワンちゃんは、今度はコタツの中へ入ります。
雪の中を走り回るどころか、
この犬は、コタツにもぐって遊びます。
娘さんから、勤めの間は保育園のように預かってるワンちゃんは、ほとんど猫です。
雪国の一人暮らしのばあちゃんちのワンちゃんは、ほとんど猫です可笑しいですね。