できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

いま、どこで、何をしているのでしょうか?

2011-06-10 20:17:11 | いま・むかし

今日はきわめて「雑感」めいたことを、最近決まった大阪府の君が代起立強制条例の問題に関連して、ほんの少しだけ書いておきます。

橋下府知事や大阪維新の会の動き、これに反対する弁護士会などの意見表明に加え、最近の最高裁判所小法廷の判決等々、一連のこの問題での動きがマスメディアで大きく取り上げられたことなどもあって、少なくともうちの大学にいる学生たちが、「国旗国歌(日の丸・君が代)」をめぐる諸問題に少しずつ関心を持ち始めました。また、企業や役所などに勤める人にとって、「職務命令」と「思想信条の自由」との関係はどうあるべきかなどについても、学生たちの関心は少しずつ高まってきたように思います。

私としてみれば、今こそ本格的な「憲法学習」や「人権学習」のチャンスではないか、と思っています。それこそ、学生たちのなかには、「なぜこのことが大きな問題として取り上げられるのか、よくわからない」とか、あるいは「日の丸や君が代に批判的な人がいることが信じられない」とか、そういうことを言う学生もいます。そんな学生たちを相手に、敗戦後日本社会における個人の思想信条の自由の問題と「日の丸・君が代」の問題や、日本国憲法における基本的人権、特に精神的自由権の保障をめぐる諸問題について、大学にいる私たちがどれだけのことを語ることができるのか。そこが今、問われているような気がしています。個人的には、今こそ「人権教育」に関心を寄せてきた研究者は、まずは目の前にいる学生たちを相手に、なにか、語れるところから自分の思いをこの問題について語るべきではないのか、とすら思っています。

と同時に、この問題について橋下府知事や大阪維新の会を支持する人々のなかには、これまでの「日の丸・君が代」をめぐる諸問題についての情報不足や、まとまった学習をする機会がなかったという人も多々いることかと思います。あるいは、「むずかしいこと考えるのはめんどうだから、こんな雰囲気だし、橋下知事や維新の会の言うとおりでいいんじゃない?」というような意見の持ち主もいるのではないか、とも思います。

今、私たち「「人権教育」や「子どもの人権」に関する諸課題にかかわってきた側には、まさに、こんな「むずかしいこと考えるのはめんどう」という層だとか、「まとまった学習をする機会がなかった」という層の人たちに対して、どれだけ情報発信ができるのか。どれだけ伝わるメッセージを持っているのか。そこが問われているようにも思います。結局、ここで何か、私たちなりにメッセージを発して、ひとりでもふたりでも共感や納得を得られるようにしなければ、状況はそう簡単に変わらないような気がするのです。

私がかかわっているある研究会のメーリングリストを見ていると、橋下府知事の発言などがかなり理屈としてはボロボロで、それでは通らないことは多くの人が気づくだろうから、放っておけばいいかのような、そんな考えを述べている人がいます。

しかし、私はそうは思いません。それこそ、かなり問題発言の多いの石原東京都知事でも、この間、何度も再選しているのはなぜか。そこを考えてほしいと、その人には言いたいです。やはり、問題発言の多い人であっても、その人を知事や議員になることを支持する層が、広くこの社会に存在しているから何度も再選するわけですよね。

さらに、今、この情勢下で沈黙を守っている大阪の「人権教育」や「子どもの人権」に関する研究者、実践者。あなたたちはいったい、いつになれば「これはおかしいのでは?」と言葉を発するのでしょうか・・・・? 私の目の前には、そういう人たちの姿があまり視野に入ってこないのですが、いま、どこで何をしているのでしょうか、みなさんは?

ひとまず、今日のところは、このあたりでとどめておきます。またこの問題については、いろんな文献などを読んだり、マスメディアでさまざまな動きをつかんだりしながら、情報発信をしていきたいと思います。

最後に、最近、大学院の講義で紹介した本のなかから、次の文章を紹介しておきます。

民主主義とは、つくられた「多数の意見」に盲目的に従うことではなく、国民ひとりひとりに自立した主体としての重い責任を課すものである。国民ひとりひとりが不断の学習と探求の主体であって、はじめて、国民主権の実質的担い手たりうる。(堀尾輝久・兼子仁『教育と人権』岩波書店、1977年)

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