ナタリー・ポートマンがジョン・F・ケネディ大統領夫人ジャクリーン・ケネディを演じ、大統領暗殺から国葬が執り行われるまでの4日間にフォーカスしたドラマ。「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督がプロデューサーとして参加しています。
1963年11月22日、テキサス州ダラスでのパレード中、ジョン・F・ケネディ大統領が何者かに狙撃され、妻ジャッキーことジャクリーン(ナタリー・ポートマン)の目の前で暗殺されます。しかし悲しみに暮れる間もなく、彼女には国葬の準備、新大統領への引継ぎ、ホワイトハウスからの退去、とやるべき仕事が山積みでした。
既に過去の人として夫が葬り去られようとしていることに怒りを覚えたジャッキーは、世界が注目する中、全ての人の記憶に永遠に刻まれるべく葬儀を執り行うことが自らの使命だと確信し、全精力を傾けます。
ジャッキーは、私にとってはアイコンともいうべき憧れの存在で、美しき悲劇のヒロインとしてインプットされていたので、本作を楽しみにしていました。映画は苦悩に満ちたジャッキーがひたすら話し続ける場面が多く、正直言って忍耐を要する作品ではありましたが、彼女の知られざる一面に触れることができ、見てよかったと思いました。
在任期間わずか2年にして、今も歴代大統領の人気投票では上位に名前が挙がってくるケネディ大統領。そして知的で上品で美しく、圧倒的なファッションセンスと波乱の人生で女性たちを虜にしてきたジャッキー。でもそれらはすべて、彼女の野心とプロデュースの賜物だったのかもしれません。
私たちは彼女の術中にただはまっただけではないのか? これまでのジャクリーン像を大きくくつがえすような内容で、「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマン&ダーレン・アロノフスキーのタッグならではの、ある意味ホラーともいうべき恐ろしい?作品でした。(ほめています)
かつてバージニアに住んでいた頃、ケネディ夫妻が埋葬されているアーリントン墓地を何度か訪れたことがあります。お墓には大統領が埋葬されて以来、今もなお「永遠の炎」が燃え続けていることにわずかな違和感を感じたのですが、本作を見て、ジャッキーはこのお墓を誰もが訪れる特別な場所にしたかったのだと納得しました。
エネルギーがもったいないなどと平凡な私は思ってしまいますが、ケネディ夫妻の墓は今やワシントンD.C.周辺を代表する観光地のひとつとなっていて、墓地自体は入場無料ですが、その経済効果たるやおそらく莫大なものになっていると思います。
映画では、ホワイトハウスを彼女好みの上質で気品あふれるインテリアに改修し、1年間の予算を1ヵ月で使い切ってしまったというエピソードがありましたが、彼女が自ら案内役を務めて「The Tour of the White House」というテレビ番組を全国放映し、費用以上の効果をもたらしたといわれています。
ところで、ジャッキーのホワイトハウスツアーの映像を探していたら、ナタリー演じるジャッキーと比較しているおもしろい映像を見つけました。話し方から歩き方、まゆや口の動かし方までそっくりで、ナタリーがジャッキーを演じるためにいかに研究したかがよくわかります。
Jackie (2016) Compared with Jackie Kennedy Whitehouse tour (1962)
ジャッキーに対するイメージは本作でいくぶん違ったものになりましたが、ジャッキーもナタリーもどちらも魅力的であることには変わりがありません。