ジュゼッペ・トルナトーレ監督が贈る、ジェレミー・アイアンズ&オルガ・キュリレンコ主演のラブストーリーです。
ある天文学者の恋文(La Corrispondenza / Correspondence)
天文学者のエド(ジェレミー・アイアンズ)は妻子ある身ですが、教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)と深く愛し合っていました。ある日、エイミーはエドが病気で亡くなったことを知り、悲しみに暮れますが、それからもエドから手紙やメールが次々と届きます...。
DVDで鑑賞。どうして亡くなった後も、エドから手紙が届くのか? そのカラクリはわりと早い段階で明らかになるので、ネタバレありで書かせていただきますね。
エドは弁護士を通じて、エイミーにしかるべきタイミングで手紙やメール、花束などが贈られるよう、生前に手配していたのです。彼はその準備のために、亡くなる前の3ヵ月を費やしていました。
そういえば「her 世界でひとつの彼女」の主人公が、亡くなった人に代わって遺族に手紙を書く、という仕事をしていたことを思い出します。これから先、いや今の時代でも、AIを使って愛する人のためにメッセージを送り続けるというビジネスが出てくるかもしれませんね。
それをうれしいと感じるか、かえって悲しみが増すか、あるいは重荷に思うかは、受け取る人の性格や、愛情の深さにもよるかもしれませんが、私は正直、エドが自分の死後も、若い恋人を束縛しているように感じて、最初はあまり共感できなかったのです。
でも彼は、自分の身勝手な思いだけで、こんなことをしているわけではない、ということが徐々にわかってきます。エイミーが長年抱えている個人的な問題を、陰から支えて解決しようと奮闘し、「手紙を受け取りたくなくなったら、いつでも止めることができるよ」とエイミーに判断をゆだねてもいるのです。
エドにとっては、エイミーが徐々にエドとの別れを受け入れられるように取り計らい、これからの人生のために背中を押してあげたい、という愛情からくる行動だったのでしょう。それでも私はその準備のための3ヵ月を、エイミーとすごす最後の時間に充てた方がよかったのではないかな...と思いました。
ナルシシスティックな男のロマンといえなくもないけれど、それでも許せてしまうのは、主演の2人の魅力であり、北イタリアの湖の孤島というロケーションの魅力であり、そして星の生命に託した2人のロマンティックな会話によるところが大きいかもしれません。
おもしろかったのは、エイミーが体を張ったスタントのアルバイトをしていること。実はこれにはワケがあると後でわかりますが...。かつてボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコが、あえて三枚目に演じるアクションが、ストーリーにユーモアを添えていました。