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手紙は憶えている

2017年06月08日 | 映画

クリストファー・プラマー主演のサスペンス映画。70年前に家族を殺された90歳の認知症のおじいちゃんが、ナチスを殺すために復讐の旅に出ます。

手紙は憶えている(Remember)

ニューヨークの介護施設に住むゼブ(クリストファー・プラマー)は90歳。認知症が進み、妻が亡くなったこともすぐに忘れてしまうほどです。同じ施設に住むマックスとは、ともにアウシュビッツの生存者で、どちらもナチスに家族を殺されるという悲劇を経験していました。

2人は、家族を殺した収容所の看守が”ルディ・コランダー”と名を変えて、北米に住んでいることを突き止めます。ただし同名の人物が4人いることから、ひとりずつ訪ねてその人かどうか確かめなければなりません。それで体の不自由なマックスに代わって、ゼブが復讐の旅に出ることになったのです。

認知症ですぐに忘れてしまうゼブのために、すべてを書き記した手紙を用意したマックス。ゼブはその手紙をたよりに、施設を抜け出して容疑者探しの旅に出ますが...。

DVDで鑑賞。ホロコーストを題材にした作品はシリアスなものが多いですが、本作は不幸な歴史を背景にしながらも、謎解きのおもしろさと、高齢者ゆえのハプニング、ドラマの深さもにじみ出ていて、すごくおもしろかった! 名優たちの演技と巧みなストーリー展開に引き込まれ、最後は心地よくだまされました。

手紙に書かれている計画通りに、ニューヨークから出発し、オハイオ、カナダ、アイダホ、ネヴァダと、長距離列車やバスを乗り継いで旅を続けるゼブ。認知症なのにこんな旅ができるのか?というのはさておき、訪問する先々でドラマがあり、ロードムービーとしても楽しめました。

飛行機を使わないのは、IDを見せることで家族に居場所が知れて、連れ戻されるのを避けるためなのでしょうね。それでも90歳という年齢が幸いして、カナダに入国する時にはパスポートの期限が切れていても大目に見てもらえたり、銃を持っていても咎められなかったりして、危なっかしくも旅が無事に続けられます。

そして本作、音楽に重要なメッセージが込められていてハッとしました。ゼブはピアノの名手であり(プラマーが実際に演奏しています)、旅先で2回ピアノを弾く場面があります。1回はユダヤ系の作曲家メンデルスゾーンのピアノ協奏曲。そしてもう1回はナチスによって重用されたワーグナーの”トリスタンとイゾルデ”。

はたしてゼブは積年の復讐を果たすことができるのか。是非見て確かめてみてください。

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