渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催している「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」(~6月25日まで)を見に行きました。
足跡 1950年頃
1月にBunkamuraに「マリメッコ展」を見に行った時に、上のポスターにひと目惚れし、楽しみにしていた写真展です。本展は、ニューヨークで活躍した伝説の写真家ソール・ライターの日本初となる回顧展。写真、絵画、資料など、200点以上が展示されています。
映画「Beyond the Fringe」のキャスト(ダドリー・ムーア、ピーター・クック、アラン・ベネット、ジョナサン・ミラー)とモデル「Esquire」 1962年頃
1923年、ピッツバーグでユダヤ教の聖職者の息子として生まれたソール・ライターは、神学生として学ぶも、画家を志してニューヨークに移住。その後、写真と出会い、1950年代に Harper's BAZAAR、ELLE、VOGUEなどのファッション誌で、カメラマンとして活躍しました。
床屋 1956年
しかし徐々に仕事が減少し、1981年にスタジオを閉鎖。表舞台から姿を消します。その後しばらく忘れられた存在でしたが、2006年、ドイツのシュタイデル社から写真集「Early Colors」を発表。その後、展覧会、作品集、ドキュメンタリー映画も作られ、再び脚光を浴びるようになりました。
雪 1960年
ファッション・カメラマン時代のモードな写真は、50年代のエレガントなファッションに身を包んだモデルがニューヨークの街角に佇み、洗練された美しさにうっとりしました。ケイト・ブランシェット主演の「キャロル」の映像も、ソール・ライターの作品にインスパイアされたと知り、納得しました。
郵便配達 1952年
1990年代に入って発表された作品は、ライターが50年代に撮影したものです。当時、カラー写真の現像は難しく、お金もかかったため、ライターは撮影した写真をフィルムのまま、現像せずに残していたのです。数十年の時を越えて、それらの写真が現像され、初めて披露された時は、まさに”歴史的瞬間”だったそうです。
ライターの作品は、アンバランスな独特の構図、ガラスに反射した像、雨に滲んだガラスの向こうの風景など、日常のひとコマをそのまま切り取った情景が実に魅力的。ポスターの写真は、ひと目見て、広重の浮世絵を思い出しましたが、ナビ派からも影響を受け「ニューヨークのナビ派」とよばれているそうです。
【参考記事】オルセーのナビ派展 @三菱一号館美術館 (2017-03-10)
自宅のあるイーストヴィレッジ周辺で、名もなき街角や市民の日常を、独自の視点で捉えたライターの作品。ニューヨークの街の息遣い、詩情と物語が感じられて、私はとても気に入りました。傘が好きなライター、雨や雪の情景が印象的でした。