京都・奈良旅行記をようやく仕上げたので、今度は大型連休のことをぼちぼちと...。連休中は近くでのんびりとすごしていました。まずは、東京都美術館で開催中の「クリムト展 ウィーンと日本1900」を見に行きました。
今年は没後100年のクリムト・イヤーで、現在、クリムトとウィーン世紀末美術を題材にした展覧会が、国立新美術館と目黒区美術館でも開催されています。本展は、日本初公開を含むクリムトの絵画25点以上が展示され、過去最大規模の展覧会です。耽美で官能的なクリムトの世界を堪能しました。
ポスターのビジュアルは、クリムトの代表作で旧約聖書に題材を求めた「ユディト I」(1901)の一部です。実物の作品は、将軍の首を抱えたユディトの裸の半身が、恍惚の表情とともに描かれています。クリムト自身がデザインした黄金の額に縁どられ、神々しいほどの輝きを放っていました。
ヘレーネ・クリムトの肖像 1898
クリムトが金箔を使う前の初期の作品から。描かれているのはクリムトの弟の娘ヘレーネで、6歳の時の肖像画です。あどけない横顔には少女の神秘性も感じられ、心に残った作品です。「レオン」のマチルダを思い出しました。
女友だち I(姉妹たち) 1907
日本美術からも影響を受けたクリムト。極端に細長い絵は掛け軸を模しているのでしょうか。二人の女性は美人画のようで、下の方には平面的な市松模様も見えます。
赤子(ゆりかご) 1917
日本の着物を感じさせる色とりどりの布地の重なりの上に、赤ちゃんの顔がのぞいています。
ベートーヴェン・フリーズ(原寸大複製) 1984(オリジナルは1901-02)
クリムトら前衛的な芸術家たちは、保守的な芸術家組合に対抗して、”ウィーン分離派” を結成しました。本展では、クリムトがウィーン分離派展に出品した、3面からなる壁画「ベートーヴェン・フリーズ」の実物大の複製を見ることができました。
テーマはベートーヴェンの交響曲第9番。上は最後を締めくくる1面で「歓喜の歌」を表現しています。
アッター湖畔のカンマ―白 III 1909/10
オーストリアの避暑地にあるアッター湖の風景です。点描で描かれた緑と建物、湖は、夏のきらきらとした光をとらえていて、まるで印象派絵画のよう。はかなくも美しいです。
オイゲニア・プリマフェージの肖像 1913/14
パトロンだった銀行家の妻を描いた肖像画。華やかな色使いに豊かさが感じられ、魅力的な作品です。右上には鳳凰が描かれていて、東洋の影響が見られます。
女の三世代 1905
ローマ国立近代美術館所蔵で、日本初公開となる作品。”生命の円環” をテーマに、人間の一生の幼年期、青年期、老年期の三段階を寓意的に表しているそうです。私は、ナオミ・ワッツの「愛する人」(Mother and Child)を思い出しました。
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最後に下世話な話を少々。クリムトは生涯結婚していませんが、愛人が14人?もいて、子どももたくさんいたそうです。一番驚いたのは作曲家マーラーの妻も(マーラーとの結婚前に)クリムトの恋人だったことがあるとか。でもそうした奔放な恋愛の数々が、作品を生み出すエネルギーとなっていたのでしょうね。
そしてクリムトの芸術家としての出発点は、弟らとともに工芸学校で学んだ彫金でした。本展では、クリムト兄弟による初期の頃の彫金作品も見ることができました。のちに油彩画の中に金箔を取り入れたのも、クリムトにとっては自然な芸術表現だったのでしょうね。