POLAのギャラリーを訪れた後、銀座メゾンエルメス フォーラム で開催中の「ベゾアール(結石) シャルロット・デュマ展」(Bezoar by Charlotte Dumas) を見に行きました。
Yorishiro 依代 2020
シャルロット・デュマは、アムステルダムを拠点にするアーティスト。現代社会における動物と人の関係性をテーマにした写真や映像作品を、20年にわたって発表してきました。
2014年からは、北海道、長野、与那国島などを巡り、日本の在来馬の撮影を続けているそうです。本展では、デュマの3つの映像作品を中心に、馬に関連する史料や写真、オブジェなどが展示されていました。
パリの馬具工房からはじまったという、エルメスならではの企画展です。
エレベーターで8階ギャラリーに上ると、黄金の馬がお出迎え。デュマが、パリのエミール・エルメス・コレクションを初めて訪れた時、たちまち心奪われたオブジェだそうです。東洋の仏教寺院のために作られた?という馬は、ずんぐりとしていかにも働き者といった風情です。
壁伝いに、馬にまつわる写真や道具が展示されていました。
右は、かつて日本で馬に履かせていたという馬沓(うまぐつ)。今は蹄鉄に変わってしまいましたが、新潟県で作り方を知っているという職人さんが見つかったそうです。藁沓はすぐにダメになるので、旅の際には履き潰した沓の数で、およその道のりを知ることができたそうです。
左は、かつて使われていたという馬のお腹に巻く帯。保護と装飾を兼ねたものでしたが、現代では廃れてしまいました。デュマは、沖縄在住のテキスタイルデザイナー、キッタ・ユウコさんとともに現代的な帯を考案し、映像作品に登場させました。
映像は、デュマが与那国島で撮影した「潮」という作品。沖縄生まれの少女”ゆず”と、与那国島で生きる馬たちの物語です。セリフはほとんどありませんが、人間の原点の生活がここにある、という思いを抱きました。
上でたなびいているのは、前述のキッタ・ユウコさんが琉球藍で染めたという36枚のテキスタイルです。沖縄の青い海を思わせる琉球藍。室内のわずかな空気の流れに揺れ動き、寄せては返す波のようでした。
今回は、9階にも展示がありました。手前にあるのは馬の頭蓋骨。向こうに見えるのは、本展のタイトルにもなっている結石(ベゾアール)です。結石は動物の胃の中に形成される凝固物。草といっしょに飲み込まれた小石にカルシウムが付着してできるそうです。
特に水分が不足すると石は巨大化し、死に至ることもあるようです。馬の体内でこんなにすべすべで美しい丸い石ができるというのはなんとも神秘的ですが、かつて世界各地でお守りや雨乞いに使われたというのも納得です。
9階から見る8階の展示室。