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時の面影 / マエストロ:その音楽と愛と

2024年01月07日 | 映画

Netflixオリジナル。キャリー・マリガン主演の2作品です。


時の面影 (The Dig) 2021

キャリー・マリガン、レイフ・ファインズ主演。どちらも大好きな俳優さんであり、Netflexの予告映像に傑作の予感がして楽しみにしていました。考古学の話なので、レイフ・ファインズがインディアナ・ジョーンズばりの活躍を見せるのかと思いきや

実話をもとにした、堅実な作りの作品でした。一瞬、雇い主であるエディス (キャリー) と、発掘家バジル (ファインズ) のロマンスを期待した自分が恥ずかしくなる、大人の良識を備えた佳作でもありました。

リリー・ジェームズ演じる研究者の、ひそかなロマンスもありますが、これは映画用のフィクションかもしれません。当時の女性の立場と地位がさりげなく描かれていて、映画の中のスパイスとなっていました。

時は第2次世界大戦直前のイギリス・サフォーク州。未亡人エディスは、所有する広大な敷地サットン・フーにある墳丘墓を発掘するため、経験豊富な発掘家バジルを雇います。ロンドンの考古学者たちは、学位のないバジルを疎み、彼をこの発掘調査から外そうとしますが

バジルは予想されていたよりはるかに古い時代の遺跡であることを推定し、それを発見するのです。エディスはバジルの偉業を称えますが、長らく彼の名が世に知られることはなく、最近になってようやく彼の業績が認められた、ということです。

経験と努力に裏打ちされた豊富な知識がありながら、それをひけらかすことなく黙々と任務に徹するバジル。そのバジルに発掘家としての実力を認め、全幅の信頼を寄せるエディス。立場を超えた2人の、家族も交えての温かい交流が心に残りました。


マエストロ:その音楽と愛と (Maestro) 2023

音楽を題材にした作品が好きなので、楽しみにしていた作品です。監督・脚本・製作・主演は「アリー」(A Star Is Born) のブラッドリー・クーパー。製作には、スコセッシとスピルバーグも名を連ねています。

本作は20世紀を代表する作曲家で指揮者であるレナード・バーンスタインの半生を、妻で女優のフェリシアとの夫婦愛を軸に据えて描いた伝記ドラマです。作曲家としてのバーンスタインといえば、まず「ウエストサイド物語」が頭に浮かびますが

私の中ではどちらかというと指揮者としての活躍が記憶に残っています。(時々同じユダヤ系のバレンボイムとごっちゃになりますが) とはいえ、彼のプライベートな面についてはほとんど知らなかったので、本作のエピソードはどれも興味深かったです。

冒頭からブラッドリーの、バーンスタインに似せた老けメイクの完成度に圧倒されましたが (メイク担当はオスカー常連のカズ・ヒロさん)、その他にも会話や美術、映像など、細部にわたってブラッドリーの美意識と作り込みのすごさがびしびし感じられ

これは本気でオスカーを狙いに来ているな、というのが少々鼻についてしまったのですが^^; それを抜きにしても、すごい作品を見たという満足感がありました。華やかなクラシック音楽の世界、バーンスタイン夫妻のゴージャスな生活も見応えがあって楽しかった。

音楽のシーンでは、壮麗なカテドラルで演奏されるマーラーの2番、タングルウッドで若手を指導している場面が心に残りました。タングルウッドはボストン交響楽団が毎年夏に演奏する野外ホールで、私もかつて毎年訪れるのを楽しみにしていました。

ブラッドリーの演技もすごかったですが、妻フェリシアを演じるキャリー・マリガンもとてもよかったです。「17歳の肖像」(An Education) の頃から愛らしくて大好きな女優さんでしたが、今回は役柄そのものの、大女優の貫禄に圧倒されました。

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