久しぶりに本の感想です。
夫から「読む?」と渡された本です。彼は宮本輝さんがわりと好きみたいですが、私はこれまで何となくご縁がなくて、実は読むのは初めて。読んだことはないものの「青が散る」「ドナウの旅人」など、洒脱で都会的な文学というイメージがありました。
夫は宮本輝さんのことを、人の心の機微がわかる小説家だと言うので、楽しみに読みはじめました。が、最初はなかなか物語の世界に入っていけなくて...。
東京・板橋の商店街の中華そば屋のご主人が、妻を亡くして意気消沈し、店をたたんでぼうっとしていたところ、妻が本の間に、ある大学生からのはがきをはさんでいたのを見つけます。
妻はかつて、その大学生からはがきが届いた時「こんな人は知らない。何かの間違いだ」と返事を書き送ったのですが...
妻はなぜ、その間違えて届いたはがきを、大事に本の間にはさんで取っておいたのか。疑問に思ったご主人は、謎を解き明かす旅に出ます。
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最初は中華そばの作り方も、灯台めぐりの旅も、あまり興味がもてなくて、やや退屈に感じながら読んでいたのですが、最後の最後に妻が一生をかけて守り抜いた秘密が明らかになる場面で、がつんと衝撃を受けました。
ごく平凡な中華そば屋のおかみさん(もちろん家族にとってはかけがえのない存在ですが)が聖女のように思えてきました。この読後感にデジャヴを覚えて、なんだったっけ...と記憶を手繰り寄せれば
ジュディ・デンチの「あなたを抱きしめる日まで」だ!と思い出しました。ストーリーはまったく違うのですが、どちらの女性も、類まれな強さと気高さを持っていると思いました。宮本輝さんは、ひょっとしたらクリスチャンなのかな?と思いながら読みました。
それから退屈と書きましたが、途中で主人公の亡くなった幼馴染に隠し子がいることが発覚するあたりから、おもしろくなりました。その隠し子の青年がきっかけで、主人公がいろいろな新しいことにチャレンジするようになるのです。
宮本輝さんの他の小説も読んでみたくなりました。
ご主人様と読書の趣味が違うの、あるあるですねwww
でも読んでみると意外と面白かったり…
愛する妻の過去を巡る旅って、奥様に勧めるテーマがまた素敵じゃない?
私も読んでみたくなりました。
夫も私も決して多読ではないのですが、読んだ本は感想を共有したり、お互いに貸し借りしたりしています。
好きな本のタイプは必ずしも同じではないですが、自分からは手に取らない本を読むきっかけになりますね。
夫はこの本、私に貸しておいて、自分では結末をすっかり忘れていたのです。
え?そこが本書の一番大事なところではなかったの?
半ば呆れました。^^;