セレンディピティ ダイアリー

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ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男

2018年05月11日 | 映画

ゲイリー・オールドマンがウィンストン・チャーチルを演じる歴史ドラマ。チャーチルの首相就任からダンケルク撤退、徹底抗戦宣言までの27日間を描きます。「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライトが監督を務めています。

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 (Darkest Hour)

第2次世界大戦初期の1940年5月10日。ドイツへの宥和政策をとったチェンバレン首相が辞任し、後任にチャーチルが選出されます。そんな中、フランス北部のダンケルクの海岸で連合軍がナチスドイツに追い込まれ、チャーチルは民間船を派遣して30万人の兵士を救います。

ナチスドイツによるイギリス本土上陸が目前に迫る中、チャーチルはヒトラーとの和平交渉に臨むか、徹底抗戦するか、究極の決断を下します...。

昨年はクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」そして小品ですが「人生はシネマティック!」(Their Finest)も公開され、ダンケルク・イヤーでした。本作はその仕上げというべき作品で、ダンケルクの海岸で連合軍の兵士たちが窮地に追い込まれている間、イギリス議会ではどんなことが起こっていたのか?という政治ドラマが中心となっています。

「ダンケルク」の名もなき兵士たちのことを思いながら、チャーチルの一挙一動を見守りました。さらに本作では「英国王のスピーチ」のジョージ6世も登場し、リンクする内容となっています。一連の作品を思い浮かべながら、チャーチルの決断は今なおイギリス人たちの誇りを支える重要な歴史イベントだったんだなーと実感しました。

当時のナチスドイツはあまりにも強大で、戦うことは大きなリスクがありました。それでもチャーチルが徹底抗戦を決断したのは、ファシストには屈しないという揺るぎない信念があったから。それは今となっては正しい判断だったのだとわかりますが、当時は相当に勇気のいる決断だったはずです。

周りの政治家たちや、国王からも、変人だ、怖い人だと言われていたチャーチルですが、心の中では体が引き裂かれるような葛藤と戦っていた。そしてそれを知るのは、身近にいた妻と、秘書だけだった、というストーリーになっています。そんなチャーチルの生身の人間としての姿を、ゲイリー・オールドマンは重厚な演技で魅せていました。

チャーチルが地下鉄に乗って市井の人たちの声に耳を傾ける場面では、そんなに少ないサンプリング数で決めてしまっていいの?と思いましたが^^ おそらくチャーチルの心はそれ以前にもう決まっていたのでしょう。ある意味、他の政治家たちを納得させるために、国民の声を味方につけたのかもしれません。

そして本作を見て知ったのは、チャーチルが国民に語る”ことば”を大切にした政治家だったということ。本作は、チャーチルの首相就任演説にはじまり、徹底抗戦への決意表明でしめくくっています。チャーチル自身が自問し、最終的にすべてを背負う覚悟を決めて発したことばだから、それは重く強く心に響きました。

もちろん戦争は精神論だけで勝つことはできませんが、政治家のことばの軽さが気になる昨今だから、チャーチルがもつことばの力に圧倒されました。

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BROOKLYN RIBBON FRIES

2018年05月08日 | グルメ

駒沢公園の近くにあるハンバーガー屋さん、BROOKLYN RIBBON FRIES (ブルックリンリボンフライ)でお昼をいただきました。あ、ハンバーガー屋さんというのは適当ではないかもしれません。というのもこちらのお店では、フライドポテトが堂々主役だからです。

オリジナルのリボン状フライドポテトと手作りジンジャーエールにあわせて、ハンバーガーやサラダ、ベーグルサンドウィッチなどがいただけます。飲みものはジンジャーエールのほか、ソーダやコーヒーなど、夜はビールやカクテルもいただけるようです。

ハンバーガーにリボンフライ、サラダ、飲みものがつくセットをいただきました。

左はお店のオリジナルのジンジャーエール。熊本産の生姜と数種のスパイスで作ったシロップを高炭酸ソーダで割ったもので、ぴりりとしびれる大人のお味。私は、右のジンジャーティをいただきました。こちらもジンジャーシロップを使っているもののほどよくマイルドで飲みやすかったです。手前は新鮮野菜のシンプルなサラダ。

ダブルバーガーとリボンフライ。

私はオリジナルバーガーのセットをいただきました。ハンバーガーのパティはお肉のうま味がぎゅっと味わえるシンプルな味つけ。これだけでもおいしかったですが、私はケチャップとマスタードもつけていただきました。

そして専用カッターで螺旋状にカットされたリボンフライは、ひらひらとどこまでもつながっていておもしろい。シンプルな塩味がポテトのおいしさを引き立てます。揚げたてでジューシーでした。

お店のサインがかわいかったのでパチリ。アイアンとダークウッドの家具、アメリカンヴィンテージを適度に取り入れたインテリアはブルックリン風? 店内では野菜も販売していましたが、それもまたインテリアの一部のようでした。

***

すぐ隣りに、すてきなパン屋さんがあったのでのぞいてみました。griotte(グリオット)というお店です。

ハード系のパンがどれもおいしそうで、思わず買って帰りました。ペストリーやサンドウィッチなどもあり、地下がイートインスペースとなっているようです。

店名のgriotte(仏)は、英語ではmorello cherryといってどうやらサワーチェリーの一種らしい。酸味が強いのでそのまま食べるのではなく、ジャムやお菓子に使うようです。

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トレイン・ミッション

2018年05月07日 | 映画

リーアム・ニーソン主演の走行中の電車を舞台にしたクライムサスペンス。リーアムとは4度目のタッグとなるジャウム・コレット=セラが監督を務め、ヴェラ・ファーミガが共演しています。

トレイン・ミッション (The Commuter)

ニューヨーク。元警察官で、今は保険のセールスマンをしているマイケル(リーアム・ニーソン)は突然解雇を言い渡されます。失意の中で、いつもの通勤電車に乗って帰る途中、見知らぬ女性(ヴェラ・ファーミガ)からある申し出を持ちかけられます。

それは電車が終点に着くまでに社内に乗っているある人物を探し出して欲しいというもの。報酬は10万ドル。会社をクビになってうっかり着手金を手にしてしまい、家族も人質に取られたマイケルは、彼女の申し出を受けざるを得なくなり...。

軽いタッチのアクション映画で、似たような作品はこれまでにもたくさんあったとは思いますが、久しぶりにリーアム・ニーソンの「困っているお父さん、でも最後はやっぱりかっこいいお父さん」が見れてよかったです。

原題のコミューターは、メトロエリアと郊外を結ぶ通勤電車のことで、本作は「ガール・オン・ザ・トレイン」と同じ、メトロノース鉄道のハドソンラインが舞台となっています。ハドソン川沿いを走る眺めのよい路線なので、映画向き、サスペンス向きなのかもしれませんね。

マイケルが働く保険会社のあるマンハッタンのグランドセントラル駅から終点のコールドスプリング駅までは約1時間半。その間にターゲットを探さなければなりません。毎日の通勤で顔見知りも多い中、何人か見慣れない顔が乗っています。駅に着くたび、乗客は少しずつ減っていき、マイケルはあせります。

はたしてターゲットは誰なのか? なぜ彼、あるいは彼女は追われているのか...。

最初はひょっとして車掌さんがターゲットかも?なんて思いながら見ていました。ニューヨークのコミューター、いまだに車掌さんがいて、ひとりひとり切符を拝見...とやっているのがのどかです。犯人はAさんかBさんのどちらかだとにらんでいましたが、より意外性のあるBさんでした。^^

車内で何人か犠牲者が出ますが、いったい誰が殺したのか?協力者がいたということ?などちょっと腑に落ちないところもありましたが、タイムリミットのあるどきどき感を楽しみました。

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皇居東御苑と、清澄庭園

2018年05月05日 | おでかけ

先月、日本で40年観光ガイドをしているアメリカ人の方に、都内を案内していただく機会がありました。アメリカの大学で日本の歴史を学んでいらして、私より詳しいほど。日本橋や丸の内など、ふだんはあまり歴史を意識して歩いていないので、江戸時代の町の様子を思い浮かべながらの楽しい散策となりました。

前夜からの激しい雨風が、家を出る頃にはぴたりと止み、曇り空ながら雨上がりの新緑がみずみずしく美しかったです。メトロと徒歩で移動して、日本橋、丸の内、皇居、神楽坂、両国、清澄白河と訪れました。

丸の内から和田倉門へ。銀杏並木の新芽が初々しい。今は緑がもっと濃くなっているでしょうね。

和田倉噴水公園。夏は特に気持ちのよい場所です。この後、大手門から皇居東御苑に入りました。入口で簡単な荷物検査を受け、入場タグを受け取ります。ここは江戸城の本丸・二の丸・三の丸の跡ですが、今は広大な公園となっていて、春の桜、秋の紅葉、雑木林と四季折々の花々が楽しめます。ちょうどつつじが見頃でしたが、この日は石垣が気になりました。

これは同心番所付近の石垣。大きさも形も素材も違う石が隙間なくきっちりと積まれ、パッチワークみたい。

汐見坂付近の石垣。丸みを帯びた石が一見無造作に積まれていますが、セメントも使っていないのに、崩れずきちんと残っているのがすごい。いつもは散策を兼ねて通り抜けるだけのことが多い東御苑ですが、歴史的見どころも多いです。

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最後に、清澄白河駅から清澄庭園を訪れました。

もとは江戸の豪商、紀伊国屋文左衛門の屋敷跡と伝えられますが、明治11(1878)年に岩崎弥太郎が買い取り、社員の慰安と賓客の接待のために造園しました。もとは倍の広さでしたが、岩崎氏が関東大震災後に東側半分を東京市に寄贈。市は清澄庭園として整備しました。西側半分は、今は公園となっています。

庭園の中心を成す”大泉水”。3つの中島を配した広い池です。回遊式林泉庭園となっていて、池に沿ってぐるりと歩いて回りながら、それぞれの角度から変化に富んだ風景を楽しめます。都会の庭園ゆえにマンションが見えるのはご愛敬ですが、スカイツリーが借景となっているのがおもしろい。

池に突き出るようにして建てられた数寄屋造りの”涼亭”。趣がありますね。

中の島にかかる橋も味わいがありました。岩崎弥太郎氏は石が好きで全国の産地から集めたそうで、園内にはめずらしい石がいろいろあり、石を生かした風景も見応えありました。池の端に石を点々と配し、歩いて渡れるようになっているのもおもしろい趣向です。

清澄白河は以前は静かな場所でしたが、ブルーボトルコーヒーができてからお店が増えて少しずつ活気が出てきているようです。庭園のあとは、古い民家を改造したクラフトビールのお店で乾杯し、小さな旅を締めくくりました。

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ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

2018年05月03日 | 映画

スピルバーグ監督、メリル・ストリープ&トム・ハンクス主演。ベトナム戦争を分析・記録したアメリカ国防総省の最高機密文書、通称ペンタゴン・ペーパーズの存在を告発したワシントン・ポストのジャーナリストたちの奮闘を描いた、実話に基づくドラマです。

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 (The Post)

ベトナム戦争が長期化していた1971年、戦況を分析・記録した国防省の最高機密文書がある調査官によって持ち出され、ニューヨークタイムズがスクープ。大統領4代の長きにわたって事実が隠蔽され、結果として戦争の泥沼化を招いたことが明らかになります。時のニクソン大統領はこれが機密漏洩に当たるとし、記事の差し止めを要求します。

これを受けてワシントンポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)も文書を入手し、記事を書き上げますが、告発すればニューヨークタイムズと同じく処分を受けると危惧されます。亡き夫に代わり社主に就任していたキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、会社の経営と報道の自由をかけて厳しい決断を迫られますが...。

アメリカに住んで驚いたことのひとつが、(USA Today以外)新聞に全国紙がないということ。しかもローカル紙は地域ごとにかなり細分化されているのです。とはいえワシントン・ポストは、アメリカの首都に本社を置く世界有力紙のひとつだったので、1971年当時、”ファミリービジネスのローカルペーパー”であったという事実に驚きました。

グラハムにとってポストは父が興し、夫が継いだ会社であり、自分の代でつぶすわけにはいかなかった。家族ぐるみでつきあってきたホワイトハウスやペンタゴンの有力者たちに反旗を翻さなければ、会社は安穏と生き残れるでしょう。しかし彼女は、ブラッドリーたちの情熱に突き動かされ、報道機関の使命を果たすという決断を下すのです。

本作は、報道の自由、ジャーナリズムの使命をテーマにした作品ですが、最初はお飾りの社主だったグラハムが真のトップへと成長し、ワシントンポストが一流紙の仲間入りを果たしたサクセスストーリーでもあります。この後ポストは1972年にウォーターゲート事件をスクープし、グラハムは2001年までポストの発行人・社長・会長を務めることとなります。

スピルバーグ監督の作品らしく、心に残る場面がたくさんありましたが、やはり一番ぐっときたのは、最後に最高裁判所の判決が出て、電話を受けた女性記者の口から判決文が読み上げられたところです。「報道機関は国民に仕えるものであって、政権や政治家に仕えるものではない...」

また、ブラッドリーたちが書き上げた記事が活字で組まれ、グラハムのゴーサインで一斉に輪転機が動き始めるシーンは、ぞくぞくするようなカタルシスを感じました。止むにやまれぬ思いから命がけで文書をリークした国防総省の分析官の意志を受け、告発に踏み切った新聞各社のジャーナリズム魂に胸が熱くなりました。

本作は、スピルバーグ監督がトランプ政権によるメディアへの圧力に危機感を覚えて作った作品ということですが、フェミニズムの要素もあり、昨年からの#MeToo運動に通じるものも感じました。そしてそれは対岸の火事ではなく、まさに今の日本が抱えている問題でもありますね。

映画のラストは、ウォーターゲートビルに何者か侵入する場面で終わり、「大統領の陰謀」へとつながるように作られていたのも心憎かったです。トム・ハンクス演じるベン・ブラッドリーは「大統領の陰謀」にも登場し、ジェイソン・ロバーズが演じています。ブラッドリーは机に足を乗せるクセがあったようですね。^^

ペンタゴン・ペーパーズ The Post 2017

大統領の陰謀 All the President's Men 1976

こちらはキャサリン・グラハムとベン・ブラッドリー本人

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