ゲイリー・オールドマンがウィンストン・チャーチルを演じる歴史ドラマ。チャーチルの首相就任からダンケルク撤退、徹底抗戦宣言までの27日間を描きます。「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライトが監督を務めています。
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 (Darkest Hour)
第2次世界大戦初期の1940年5月10日。ドイツへの宥和政策をとったチェンバレン首相が辞任し、後任にチャーチルが選出されます。そんな中、フランス北部のダンケルクの海岸で連合軍がナチスドイツに追い込まれ、チャーチルは民間船を派遣して30万人の兵士を救います。
ナチスドイツによるイギリス本土上陸が目前に迫る中、チャーチルはヒトラーとの和平交渉に臨むか、徹底抗戦するか、究極の決断を下します...。
昨年はクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」そして小品ですが「人生はシネマティック!」(Their Finest)も公開され、ダンケルク・イヤーでした。本作はその仕上げというべき作品で、ダンケルクの海岸で連合軍の兵士たちが窮地に追い込まれている間、イギリス議会ではどんなことが起こっていたのか?という政治ドラマが中心となっています。
「ダンケルク」の名もなき兵士たちのことを思いながら、チャーチルの一挙一動を見守りました。さらに本作では「英国王のスピーチ」のジョージ6世も登場し、リンクする内容となっています。一連の作品を思い浮かべながら、チャーチルの決断は今なおイギリス人たちの誇りを支える重要な歴史イベントだったんだなーと実感しました。
当時のナチスドイツはあまりにも強大で、戦うことは大きなリスクがありました。それでもチャーチルが徹底抗戦を決断したのは、ファシストには屈しないという揺るぎない信念があったから。それは今となっては正しい判断だったのだとわかりますが、当時は相当に勇気のいる決断だったはずです。
周りの政治家たちや、国王からも、変人だ、怖い人だと言われていたチャーチルですが、心の中では体が引き裂かれるような葛藤と戦っていた。そしてそれを知るのは、身近にいた妻と、秘書だけだった、というストーリーになっています。そんなチャーチルの生身の人間としての姿を、ゲイリー・オールドマンは重厚な演技で魅せていました。
チャーチルが地下鉄に乗って市井の人たちの声に耳を傾ける場面では、そんなに少ないサンプリング数で決めてしまっていいの?と思いましたが^^ おそらくチャーチルの心はそれ以前にもう決まっていたのでしょう。ある意味、他の政治家たちを納得させるために、国民の声を味方につけたのかもしれません。
そして本作を見て知ったのは、チャーチルが国民に語る”ことば”を大切にした政治家だったということ。本作は、チャーチルの首相就任演説にはじまり、徹底抗戦への決意表明でしめくくっています。チャーチル自身が自問し、最終的にすべてを背負う覚悟を決めて発したことばだから、それは重く強く心に響きました。
もちろん戦争は精神論だけで勝つことはできませんが、政治家のことばの軽さが気になる昨今だから、チャーチルがもつことばの力に圧倒されました。