@「身分と女心」登場する五人の市井の女、その時代のそれぞれの生き様が鮮明に描写される。特に元花魁で小物店を営む「お玉」の自分の「分」を弁えた恋心は、最後の言葉「これで帳尻があった」と世間への風当たりを消し、漸く素直な女心で逢えると旅にでる。「日陰な女」という出生と身分において江戸の世間体「分」は「流れには逆らえない時代」、現代は、「様々な出会い」を如何に捉え引き寄せるかは自分次第、「チャンスの出逢い」は突然やってくる。 それには日頃から「構え」姿勢が大切なのだ。 話は変わるが日本は世界に比べ「ジェンダー・ギャップ (男女差)」が極端に多い事だ。153カ国中121位 https://www.joicfp.or.jp/jpn/2019/12/19/44893/ 女性の自由・平等度は日本にはまだ存在しない。
『玄冶店の女』宇江左真里
日本橋の玄冶店と呼ばれる路地で小間物屋を営むお玉は、元花魁。身請けされた旦那と縁が切れた矢先、芸妓屋の顔見知りの娘が通う手習い所の師範・青木陽蔵に出会う。その清廉な人柄に、お玉は強く惹かれるが、それは世間が許さぬ分を越えた恋だった…。運命に翻弄されながらも健気に生きる女たちの切なくて心温まる八つの物語。
- 江戸・市井(人が集まる場所・町)玄冶店界隈物(現在の人形町3丁目交差点)。登場人物は女性五人
- お玉:元花魁・小物問屋に藤次郎に身請けされ「糸よし」のお店の主となる 身請けされた元花魁が身分が違いたとえ何があっても武士の妻にはなれないと思い詰める
- おまさ:お玉の家で女中・離婚され離れ離れになっていた息子と再会
- お喜代:芸者・三味線の師匠 後妻となり商売を嫁いで行くことになる
- 小梅:芸者家の跡取り娘、8歳、お玉を「小母ちゃん」と呼び、お玉の青木への思いを動かせる
- お花:隠居の妾であり、役者の間夫に貢ぐが、最後は間夫と喧嘩で心中する
- お玉は青木を諦める「日陰の女」心に「人には分というものがあるのさ。私はその分を守っただけさ」
- 恋心を持った青木が労咳(肺結核)である事を知ると心を断ち切り寂しく別れた青木が近くなった。
- 心がにつまらないお玉に対してお内儀は「後で悔やむより、エイっと踏み切った方がいいですよ」
- お玉の言葉「ここで小梅に会い、お喜代に会い、お花に会い、そして青木に会った。川の流れにできる渦のようにみんなと出会い、また流れの勢いで渦は解け、てんでんバラバラにどこかへ流される。これが人の世であり、誰もその流れには逆らえないのだ」
- 世間が許さない元武士に恋心を持ち、最後にお玉は「これで帳尻があったと思ってさ」と病を持った青木の伊勢・津まで旅に出ることを決意する。