山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

国家の品格

2006-04-22 10:02:45 | 書籍
今朝のテレビ番組で藤原正彦著『国家の品格』が紹介されていた。リリ-ス5ヶ月でなんと180万部のペストセラ-だという。私も1ヶ月ほど前に読んだ。
ある講演記録を元に執筆されたもので、堅いタイトルとは裏腹に、とてもやさしい文体で、しかもユ-モアあふれる表現でとても読みやすい。共感する点も多く是非皆さんにもお勧めしたい一冊である。

著者からのメッセ-ジのいくつかを揚げてみよう。
先ず、真の国際人を育てるには英語より国語をしっかり学ぶこと。
市場原理主義、つまり究極の実力主義社会はケダモモの社会になりはてる。
子供の躾けに論理は不要。悪いことは悪い、問答無用で押しつけよ。
廃れた武士道精神をもう一度取り戻せ。

日本人には特有の情緒や形がある。
例えば、『もののあわれ』
例えば、『惻隠の情』
例えば、『卑怯を憎む心』

日本は、金銭至上主義の野卑な国々とは一線を画し、国家の品格をひたすら守り、孤高を保つべきである。日本人一人ひとりが美しい情緒と形を身につけ、品格ある国家を保つことは、日本人として生まれた真の意味であり、人類への責務である。
この世界を本格的に救えるのは、武士道精神に裏付けられた日本人しかいないと締めくくる。

確かに今、日本人に武士道精神が失われつつある。
ご老人などの弱者に手をさしのべる人が少なくなった。ふるさとを懐かしみ、親を敬う心、家族の絆が薄れつつある。万引きすることを卑怯と思わなくなった。
子供の躾けさえ放棄してしまった感がある。

会津藩校『日新館』に什の掟(じゅうのおきて)がある。
一つ、年長者の言うことに背いてはなりませぬ。
二つ、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ。
三つ、嘘をいうことはなりませぬ。
四つ、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。
五つ、弱いものいじめをしてはなりませぬ。
六つ、戸外で物をたべてはなりませぬ。
ならぬものはならぬものです。

正月の長編時代劇『白虎隊』の中で、日新館の先生であった森繁久弥がさん言った教えである。

私と妻は、子供のしつけのことでしばしば対立したものである。
会津生まれの妻は、日新館の教えどおりに子供を躾けた。ならぬものはならぬもの、問答無用の躾け方であった。これに対して私は、ロボットを育てているのではない、理由をきちんと伝えて躾けなければ意味がないという立場をとった。

妻は頑として譲らず、『問答無用』の躾を貫いた。この本を読んで私の認識が誤りであったことを痛感した。会津武士の武士道精神は、妻のDNAの中にしっかり受け継がれているのかも知れない。
コメント
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