山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

やまめウォッチング

2006-10-27 23:36:21 | フライフィッシング
今日は午前中、相模湖のお客様を訪問し、そのあとヤマメの自主放流グル-プの一人と会う約束をしていた。今年の発眼卵放流の打ち合わせと探釣が目的である。

このトンネルの向うに、会いたい人と会いたい娘が待っていてくれる。



トンネルを抜けると、まるで時間が止まってしまったように佇む小さな集落がある。



最初に迎えてくれるのは炭焼き小屋。まだ現役のおじいちゃんが趣味のように炭を焼き、何ヶ月かおきに炭焼き窯の煙が立ちのぼる。



炭焼き小屋を過ぎて林道を下ってゆくと小さな集落が出現する。この集落は、私の生まれた集落の隣の隣に位置するたった15軒の集落で、斜面にへばりつくように肩を寄せ合って暮らしている。会いたかったKさんは道ばたの畑に佇んでいた。



車を降りてKさんに挨拶するとびっくりしたような顔をした。当然である。
午後1時半の約束なのに、仕事が早く終わって11時半に到着してしまったからだ。『昼飯は食ってかぁ?』『いや、まだ』『ほんじゃあ蕎麦食うかよぉ?新蕎麦打ってやるべえ。30分もありゃあ打てるからその辺ぶらぶらしてろや』
そう言って小走りに蕎麦打ちに帰って行った。



道ばたに車を止めて集落を散策することにした。



ここは、入道丸への登山口。去年のことである。ここで山歩きの荷造りをしていて一人の登山者に出会った。そのひとは横浜の住人で神奈川県と東京、山梨、静岡の県境を一年がかりで歩いていると言う。ホントに多種多様な趣味があるものだと感心したものである。



30分後、Kさんのお宅に戻って新蕎麦で打ったきのこ蕎麦をたらふくごちそうになった。野菜のおひたしもお新香も旨かった。やはり田舎の味が一番である。
食べながら先々週の探釣結果をKさんに報告した。大きく育ったヤマメの話にKさんは顔をほころばせて喜んでくれた。



昼食後はいよいよ探釣である。私のふる里の沢で2番目に大きい沢である。
ヤマメの数と成長具合が楽しみである。ここから入溪しよう。



入溪して釣り支度をしようとしたがその必要はなかった。
ゆるやかな流れの中で8寸ほどのヤマメが悠然とペアリングしている。上へ下へと泳ぎながらパ-トナ-を探しているヤマメも目に付く。どのヤマメも私たちの気配を感じているだろうに、意に介さないように悠然としている。遡行しながら15組ほどのペアリングを確認できた。嬉しくてKさんと手を握り合い、顔をくしゃくしゃにしながら、大口を開けて声を立てずに笑い合った。幸福感と満足感、早く他のメンバ-にも知らせてあげたい。



最上流部の源流帯も覗いてみたが、まだこの場所にはペアリングの数が少ない。あと2週間ほどすれば中流部のヤマメたちもここに集まるだろう。



源流部のここまで来ると水深は15センチ程である。ヤマメたちはここで産卵し、使命を全うしてここで息絶える。孵化した稚魚はここで冬を越して下流に下る。
地元の人たちの地道な努力によって、一度は絶えてしまった生命の営みがまた繰り返されるようになった。素晴らしいことである。この穏やかな流れと生命の営みが悠久の世に続きますようにと願ってやまない。



先々週の探釣結果と今日のペアリングを見て大満足の一日であった。心ない釣り人に荒らされなければ、今年を最後に来年の放流は必要ない状態になった。
仕事の都合で私は放流に立ち会えないが、鉄砲が解禁されたらまたこの地を訪れて鹿刺しとキジ鍋を囲んで酒を酌み交わそう。そう約束して帰路についた。



たった数時間、田舎の穏やかな風に吹かれ、飾らない人たちと接するだけで、なぜこんなにも癒されるのだろうか?


コメント (6)
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