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TPP:政府、文書に本音 11月表明「米が最も評価」

2011-10-31 16:54:10 | 政府
TPP:政府、文書に本音 11月表明「米が最も評価」


http://mainichi.jp/select/biz/news/20111028k0000m020158000c.html



 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加問題で、交渉に参加した場合のメリットなどを分析した内部文書を政府が作成していたことが、27日分かった。文書は参加表明の時期について、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)が「米国が最も評価するタイミング」と指摘。「TPPに参加表明するからこそ(現在進めている)EU(欧州連合)や中韓との交渉が動く」として、参加表明が他の2国間のEPA(経済連携協定)交渉にも好影響を与えるとの考えを示した。


 野田佳彦首相はAPEC前の交渉参加表明を目指しているが、与野党には慎重論もある。交渉参加のメリットと参加しなかった場合のデメリットを分析し、参加の必要性を説明するための資料となるとみられる。

 
 文書は「APECで交渉参加を表明すべき理由」として、12年の米大統領選を挙げた。「米国はAPECで相当の成果を演出したいと考えている」と指摘。日本が交渉参加を表明すれば「米国は『日本の参加でTPPが本格的なFTA(自由貿易協定)となる』と表明可能」になり、大統領の成果になると分析した。


 参加表明を決断できない場合、他のEPAやFTA交渉への悪影響に言及。交渉が始まっているEUについて「足元を見られて注文ばかりつけられる」と予想。中韓とのFTAも「中国に高いレベルの自由化を要求できなくなり、交渉入りできなくなる可能性が強い。中韓FTAだけ前に進み日本が取り残される」としている。



 選挙への影響を懸念する党内意見については、衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙がないことに触れ「交渉に参加しても劇的な影響は発生しない」とした。



 文書は慎重派との「落としどころ」にも言及。実際の交渉参加は最短で12年3月以降と見込み「3月までにしっかり議論し『参加すべきでない』との結論に至れば、参加を取り消せばよい」と指摘。取り消す場合は「党側が提言し、政府は『重く受け止める』とすべきだ」と提案した。「日本が直面しているのは、参加を途中で取り消す『自らの判断』が批判を受けることではなく、方針を示せないという『自ら判断を下さないこと』に対する批判だ」と指摘した。





   ◇政府のTPPに関する内部文書(要旨)


 ▽11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉参加表明すべき理由


・米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる


・交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される


・11月までに交渉参加を表明できなければ、交渉参加に関心なしとみなされ、重要情報の入手が困難になる


・韓国が近々TPP交渉に参加する可能性。先に交渉メンバーとなった韓国は日本の参加を認めない可能性すらある



 ▽11月に交渉参加を決断できない場合


・マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる


・政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる


・EU(欧州連合)から足元を見られ、注文ばかり付けられる。中国にも高いレベルの自由化を要求できず、中韓FTA(自由貿易協定)だけ進む可能性もある




 ▽選挙との関係


・衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる




 ▽落としどころ


・実際の交渉参加は12年3月以降。「交渉参加すべきでない」との結論に至れば、参加を取り消せば良い。(取り消しは民主)党が提言し、政府は「重く受け止める」とすべきだ


・参加表明の際には「TPP交渉の最大の受益者は農業」としっかり言うべきだ。交渉参加は農業強化策に政府が明確にコミットすることの表明。予算も付けていくことになる



毎日新聞 2011年10月28日 2時31分(最終更新 10月28日 11時50分)












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野田氏は大平政治の何に学ぶか

2011-10-31 09:55:41 | 正論より
10月31日付      産経新聞【正論】より



野田氏は大平政治の何に学ぶか     高崎経済大学教授・八木秀次氏


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111031/plc11103102510000-n1.htm



 野田佳彦首相が「大平政治」を理想としていることが注目されている(10月24日付朝日新聞)。確かに首相は「Voice」10月号掲載の「わが政治哲学」で、「いまあらためて学ぶべきは、大平正芳さんの政治のあり方ではないか-私は最近、とみにそう思うようになった」と述べている。





 ≪先人の手法の核心を理解せず≫


 朝日新聞の記事は、大平首相が民間人のブレーンを使いこなしたのに野田首相にはブレーンが不在で、官僚の「傀儡(かいらい)政権」になると懸念しているが、それとは別の意味で、私は首相は大平政治の核心を理解していないと言わなければならない。

 大平首相は昭和53年12月に就任し、翌年3月から5月までに、民間人や官僚による9つの研究会を組織した。それぞれの議長の選任は佐藤誠三郎、公文俊平、香山健一の三氏を中心に進められたが、大平首相は研究会のメンバーの条件として、在野の碩学(せきがく)を集めることと、30歳代から40歳代の21世紀にかけて第一線で活躍できる人々を選ぶことを指示したという(福永文夫著『大平正芳』)。メンバーには、当時のサンケイ新聞の「正論」欄の執筆陣や、後に同欄の執筆陣に加わる人の名前が多く見られる。

 私がここで注目したいのは、9つの研究会の1つ「家庭基盤充実研究」グループである。経済学者の伊藤善市・東京女子大学教授を議長とするこの研究会は1年間の議論を経て、大平首相が亡くなる直前の昭和55年5月末、報告書『家庭基盤の充実』を提出した。報告書は香山氏と志水速雄氏が書き、メンバーには小堀桂一郎氏や佐藤欣子氏らの名前が見える。





 ≪日本型福祉社会目指した構想≫


 内容は、昭和54年8月に自民党研究叢書(そうしょ)の一冊として発行された『日本型福祉社会』を踏襲し、両者を統合して簡単に言えば、(1)国や地方自治体が国民の福祉を全部みるのは無理であり、国民の健全な勤労意欲も失わせる(2)まずは、国民一人ひとりの自助努力が必要で、その上で家庭・地域・企業・同業者団体が国民の福祉を担い、国は最後のセーフティーネットとなるべきだ(3)そして、家庭が福祉を担う存在として国はその基盤を充実させる政策を採るべきで、その意味で英国型でも北欧型でもない「日本型」の福祉社会を目指す-というものだった。

 「家庭基盤の充実」構想はその後の内閣によって、配偶者控除の拡充や配偶者特別控除の導入・拡充、同居中の老父母の特別扶養控除の導入、専業主婦の第3号被保険者制度の導入などの形で実現し、家庭を子供や高齢者の福祉を担う存在として財政的に支援してきた。


 現在、厚生労働省が老齢年金の給付年齢を満68歳へ引き上げると提案したことが、物議を醸している。また、現在の給付額で老後の生活は大丈夫なのか、将来、年金は給付されなくなるのでないかとの懸念も強まっている。実際、単身や老夫婦だけの世帯であれば、現在の、またこれから減るであろう給付額では生活は困窮する。このまま少子高齢化が進めば、年金財政の破綻も必至である。生活保護費の急増も財政を逼迫(ひっぱく)させている。

 大平政権が予測し回避しようとしていたのは、まさにそういう事態だった。しかし、例えば老父母が子供と同居すれば、現在の年金給付額でも困窮することはない。家庭による福祉を国が税制でも支援し、国民を導こうではないか。大平政権や後続の政権が打ち出した政策はそういうことだった。





 ≪「家庭基盤の充実」に逆行≫


 が、今、野田政権は正反対の政策を採ろうとしている。小宮山洋子厚生労働相は、家庭基盤を充実するのではなく、専業主婦を目の敵にしている。幼稚園を潰して、「こども園」にし、育児の主体を家庭から社会に転換させようとしている。


 しかし、家庭基盤の充実と逆方向に進む政策は、民主党政権に始まったことではない。橋本龍太郎政権は男女共同参画政策に傾倒して逆方向に進み、小泉純一郎政権も「構造改革」の名の下に家庭基盤の充実政策を否定的に扱った。そして、民主党政権は『男女共同参画第三次基本計画』で税や社会保障について、「世帯単位から個人単位へ」の制度・慣行の見直しを明言した。が、これは大平政権が懸念した国家破綻への確実な道なのだ。

 今年8月に亡くなった安宅川芳之・日本福祉大学教授は、近居の親子を一単位の家族と見なして税制上の優遇措置をとることや、所得税の課税対象を所得稼働者個人単位から家族単位に転換させるなどの「家族の絆」を強める具体策を提唱している(『家族と福祉の社会経済学』)。このまま税や社会保障を「世帯単位から個人単位へ」転換させ、家庭を媒介とせずに国家が直接個人の福祉をみることが今日の財政状況で果たして可能か。野田首相が「いまあらためて学ぶべき」は、そのような意味での「大平正芳さんの政治のあり方」でなくてはならない。(やぎ ひでつぐ)














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