さて大寒が過ぎ本格的な寒さが日本全国を覆っています
いつも鍼灸治療において、臨床をやっていると、患者さんの現在の症状や状態など病態把握が的確にでき、治療とカチッと絡み合った時、即効的に症状が改善したり、短期で健常な状態に戻ることはあります。
しかし、その逆もあります。
初診の問診から身体所見や現代医学的、東洋医学的検査法を行い「このような状態だから、こうしていこう」との病態把握から、患者さんへの説明を行い治療を行ったにも関わらず、うまく症状が改善しなかったり、経過が良くなかったりすることも多々あります。
そのような時は、どこに効果が出ない原因があるのか、もう少しこの方針で治療を継続すれば効果が出てくるのかなどを考察し、常に修正していくことが必要です。
そんな状況の連続が臨床なのかもしれません。
それが学びなのかもしれません。
私たちの仕事、鍼灸師というものは、とくに患者さまのカラダに直接触れ、そして、比較的長い時間患者さんのそばに寄り添える職業です。
ですから、患者さんの多彩な訴えに対応して、期待にこたえていくため、そこにには広く豊富な現代医学的、東洋医学的知識やその他、多くの要素が知識として必要となり、また、患者さんの訴えや人生を受け止め、包み込むような温かい人間性、人間力が必要となるのだと思います。
そして、大前提には症状を改善させ、治癒に導く確かな技術というものも必須です。
だから、知らないことが多いことを自覚し、常に知識を吸収し、自己の技術を練磨し、研ぎ澄ませていくことが必要です。
と、ここで、患者の心、術者の心の観点から、このことにについて考えていきたいと思います。
和田裕美さんの著書 『たくさん失敗をして気づいた 幸福のヒント36』(PHP文庫)という本を読んでいて、「そ~だよね~」と感じて、私たちの仕事に置き換えて考えてみた・・・というのが今回、ブログの神様が降臨してきたきっかけでした。
内容としましては、
和田さんが24歳の時に、英会話スクールの営業担当になりました。なかなか結果を出せずにいて、この仕事を辞めようとも考えていたある日、入会を希望する女性の担当になりました。
その女性は、入会はしたいが入会金や仕事のことについて不安があるようで、和田さんもその女性の不安に感情移入してしまったような形の会話が多くなり、結局、その方は入会されませんでした。
と、ある日、英会話サロンで、その方を見かけます。
会社の違う営業部の方で、成績優秀な方の話で入会することになったということでした。
そして、その優秀な営業の方と今回の件について話をすることになりまた・・・という流れで、本の中から、和田さんと優秀な営業の方の会話を抜粋します。
( 和=和田さん 優秀な営業マン=営 )
和「質問させてくださいませんか?」
営「あ、はい、どうぞ」
和「あの、どうやって・・・どうして? 〇〇さんはお金も払えそうにないと言ったし、時間もなくて難しいって悩んでいたんです、それなのに・・・スタートする勇気を持てたのですか?」
営「たぶん、〇〇さんと会ったとき、和田さんの心が後ろを向いていたんじゃないかと思うのです」
和「へっ、うしろ?」
営「うん、後ろというのは言い過ぎかもしれません。ただ、目の前の人が不安になったとき一緒に不安になってしまうのは、自分の軸足がぶれているからです。本気で動いたら相手の不安は解消されるはずなんです、というか相手の不安を取り除いてあげるべきだと思うのです。〇〇さんは前から英会話をやりたかったんです。けれど誰だって何かをスタートさせるときは不安です。 失敗しないかな? ちゃんと続くかな?って。 僕も経験があるのですが、自分自身がちょっと後ろ向きのときって、相手のその不安に自分も共鳴しちゃって、その不安を大きくしちゃうんです。
和「・・・。そうかもしれません。私自身が迷っていました。実は結果が出なくて焦っていたし、落ち込んでいたし、何よりもやめたいなって思っていたんです」
営「そうですか」
和「はい、そ、そんな気持ちで人に会ってしまって、未来の見えてない私が誰かの背中を押して未来をワクワクと感じてもらうことができないのは、当たり前ですよね」
営「・・・そういうときってありますよ。今回は、和田さんの不安な気持ちが彼女の中にある不安と共鳴しちゃったんです」
わたしは、おずおずと聞いてみました。
和「あの、〇〇さんに・・・何と言ったのですか?」
営「僕が〇〇さんに言ったのは、”未来は誰にも見えません。確実なのは、怖いと思った人には恐怖の未来がやってきて、逆に、なんとかなるだろうって明るく捉える人にはワクワクの未来が来るんです”、みたいな簡単なことです。それは僕がいつでも自分に言い聞かせていることです」
( 抜粋終了 )
治療院へ来院する患者さんは様々な方がおいでになります。
急性の痛みの症状、慢性疼痛、慢性症状、原因不明の症状、難病、それぞれの悩みを抱えて治療院の扉を叩かれます。
そして、患者さんの状態を聴くために問診はじめ多くの情報を収集するわけですが、特に慢性症状を持つ患者さんほど「心」に負の感情を抱いている方が多いのは、治療院に限らず医療機関であれば当然のところだと思います。
その負の感情とは、不安であり、怒りであり、恐怖であり、憂いであり、閉塞感であり、不満であり、苦しみであり、悲しみであり、いきつく所は絶望なのかもしれません。
症状と感情が入り混じったところで、現在の患者さんの「病気」が成立しているので、非常に症状改善や治癒の道に困難を要する場合も多いのです。
そのような時に、迷路のトンネルに入り込んで彷徨っている患者さんに、出口までの地図(病態把握と治療方針)を差し出し、僅かでも出口という希望を示していくこと、暗闇の中に幽かではあるけれど、光という希望や歓びを見い出してあげることが私たちの仕事なのだと思います。
そして、逆境にある患者さんの人生に寄り添い、出口という希望の光に一緒に伴走する(確かな治療技術)ことで、患者さんの人生をより豊かに、快適にしてあげることこそ、私たちの仕事の本分なのだと感じます。
光を得た患者さん、出口に到達した患者さんには、負の感情はなくなり、安心、笑顔、リラックス、感謝、満足、優越感、楽しみ、嬉しさ積極的な感情が放出され、そして到達した場所は幸福で溢れているのだと思います。
苦しんでいる患者さんの心をそこに導いていくには何が必要か・・・
それが豊富な知識であり、確かな治せる技術であり、寛容で、包容力があり、向上心のある人間性の探求にあるのだと思います。
治療院での臨床の場は、権藤、権藤、雨、権藤ではありませんが(ちょっと古すぎ~、プロ野球に興味ないとわからないし~)、反省、反省、気付き、反省の繰り返しで、患者さんから学び、修正し、常により良いものを提供していかなくてはいけません。
患者さんの笑顔と幸せのため、やはり努力を惜しんではいけないし、信念を持って手探りでもいいから進み続ける姿勢が、心が大切なのだと感じます。
日々、展開される治療院の現場の中で、当たり前のことなのですが、本を読んで何か新鮮にプチ感動し、再認識させていただきましたので書かせていただきました。
当たり前・・・ということで
COWCOW「あたりまえ体操#1」
最後までお読みいただき、ありがとうございます