昨今は、新型コロナウイルス感染症の話題ばかりです
第92回センバツ高校野球大会は戦後初の中止を余儀なくされました。この感染症拡大の状況では致し方ない判断であろうとは思います。
しかし、秋の地方大会、地区大会を勝ち上がり、選抜された選手たちの気持ちを思うと、何とも言えない気持ちです。
この選抜大会しか甲子園に出場する機会のない選手達もいるでしょう。様々な高校スポーツには全国大会出場という目標があり、それぞれの聖地があります。野球を愛し高校野球に情熱を傾けている高校生にとっては、甲子園は特別な聖地です夢にみる聖地です出場すると夢が広がる聖地です
小さい頃から、あの場所を夢見て汗と涙を流し、技術を磨き、体力をつけます
甲子園大会の運営や日程の問題や課題、困難があるでしょうが、高野連や主催者側の大人は、このまま終わらせるのではなく、子どもたちが「ご対応ありがとうございます」と大きな声でお礼が言える、そんな寛大で、感動する対応をお願いしたいと私は思っています。
さて、本題に移ります。
2018年(平成30年)、平成最後の夏の甲子園となったこの大会は、大阪桐蔭高校(大阪)が優勝で幕を閉じました。準優勝は、旋風を巻き起こした金足農業(秋田)でした。
この年、前回もトレーナー活動記で書かせていただいたように、8月5日の開会式直後の第1試合となったので、地元の金沢市を8月4日の午後、車で出発しました。夕方に大阪の星稜高校野球部宿舎のホテルに到着し、その日の夕方から数名、身体サポートをさせていただきました。
ホテルは1室をトレーナー室として割り当てられ、二人一度に施術を行います。
施術終了後は、ここが自分の寝室にもなるんです
また施術終了後は、施術やポイントをチェックするようにしています。
また、試合の日と練習の日は、当たり前かもしれませんが、予定が全く違います。
私の第100回大会トレーナー活動 全日程
8月4日 夕方 大阪の星稜高校野球部宿舎 到着(午前中は治療院で施術)。
到着後、準備をして選手ケア。
8月5日 1回戦 藤蔭高校(大分)
8月6日まで 選手ケア
8月7日 午前中に選手ケア。夜、金沢へ帰省。
8月8日 金沢の治療院で一日施術。
8月9日 早朝、金沢を出発し午前中に宿舎到着。夕方より活動開始。
~選手サポート~
8月12日 2回戦 済美高校(愛媛)残念
8月13日 午前に大阪出発。午後から治療院で施術開始。
練習の日は、練習時間の前後で余裕のある時に選手の施術を行います。練習後は必ずバッテリーから順に施術を行っていきます。
練習日は、起床 練習前の処置 練習 昼食 必要な場合は練習 選手施術 夕食・ミーティング 選手施術 施術メモ書き・就寝、大凡このような流れでしょうか。
試合の場合は、 起床 練習可能なら軽く練習 試合の2時間前に甲子園入り 選手は球場内でインタビューや練習・私は球場外で試合を待つ(席をとる) 試合 選手とともにバスで宿舎へ帰る 食事 選手施術 夕食・ミーティング 施術メモ書き・就寝、と細かくは少しずつ予定は変わりますが、このような流れになります。
さて本大会はまず、暑い夏でした。気温の上昇具合が半端ないほどでした。星稜も1回戦で投手の奥川君の足の痙攣がありました。その他の他校の試合でも多くの選手が足を痙攣し処置するシーンが多く映像に映しだされました。
大会前からの大きな目的の一つは、下肢の疲労をきっちり取り除き、動きやすい身体となるように施術を行うことでした。水分摂取や熱中症対策に関しては、基本的なことをそれなりに話してはいましたが、選手たちも分かっているだろうと思いやかましくは確認することはありませんでした。
そんな油断が、2回戦でのトレーナーとしては屈辱的な惨劇となりました。
投手の奥川君が足の痙攣のため5回で降板・・・血の気が引きました。
8回裏、あの大逆転を許した回に登板していた竹谷君も足が痙攣していた・・・落ち込みました。
ショートの内山君も1年生で頑張っていましたが最終打席ライト前ヒットを打って痙攣・・・んん~。
後で聞くと、内野手でも熱中症気味だった選手がいたとか・・・悔し過ぎて言葉が出ない
認識が甘かったとしか言いようがありません。ここ最近の夏の暑さ状況を考えれば、体調管理としては水分摂取や睡眠、体重減少、宿舎生活の空調や衣服、食事内容など、気をつけておかなければならに対策がたくさんありました。
後日、金沢へ帰り、あまりにも悔しくて痙攣のメカニズムから熱中症、食事など多く勉強させていただきました。また機会があれば、こちらもアップしていきたいと思います。
このトレーナーや選手の体調管理という点でも常に向上心を持って勉強しなければいけない。そして現場での経験を反省とし、同じ失敗を繰り返さないことが重要。しかし、あまりに負け方が劇的過ぎて、自分自身のトレーナーとしての未熟さに3倍増くらいの衝撃を受けた 私にとっては、そんな第100回大会でした。
悪いことばかりではなく、帯同して選手の活躍に貢献できると本当に嬉しいものです。
1回戦 4番の南保君はノーヒット。その時は調子が悪いのかなと思っていましたが、身体の動きは悪くありませんでした。話を聞くとスイングの時に「痛み」があり、しっかりバットが振れていませんでした。
1回戦の勝利の後は、次の試合まで1週間ありましたので、それまで痛みの原因箇所を治しフルスイングできる施術に取り組みました。施術は微弱電流と鍼(ハリ)を利用しました。結果は試合2日前にはフルスイングしても痛みがなくなり、練習に集中することができました。
結果は先制タイムリーも含め7打数4安打で、試合で負けはしましたが、高校野球史に残る試合に大きく貢献できたことは間違いありません。
痛みを我慢して、その苦痛に打ち勝って成績や勝利を掴む。その精神は大事なことであり、最終的な勝負の分かれ目は精神力であると私は理解しています。しかし、痛みを我慢して度が過ぎたり、限界を超えていると、その場は凌げても障害が次段階に進み、治療のため長期の休養を余儀なくされる場合もあります。また、輝きある未来の活躍に陰りが出てくる場合もあります。
そのような状況に陥らないために、私たちトレーナーや医師はじめ医療従事者がいるのです。痛みは身体からのサインです。そして我慢してプレーしても本人のパフォーマンスは本来のものが発揮されません。
甲子園期間中は、試合出場ができないような大きなケガこそありませんでしたが、パフォーマンスを下げる身体状況、心の状況というのは存在します。その状況を選手のベスト、ベターな状態に近づけてあげるのが帯同トレーナーの役割です。
施術風景を少し。こんな感じで施術を行っています。
トレーナーは、ドーピングの知識も持っていなければなりません。今はいろんな情報が行き交い、高校生でも両親や指導者、知り合いから、あれがいい、これがいいとサプリメントや漢方薬を持たされます。高校野球はそれほどドーピングは関係ありませんが、スポーツ現場では気を配る必要がある点ではあります。
私は薬やサプリメントに関しては基本渡しません。もし渡すとしても上記等考慮することと、指導者に確認をとってからとなります。
三枚目の写真は、見えにくいかもしれませんが頭に鍼を打っている写真です。鍼灸師の資格を持っているトレーナーの場合は、幅広い対応もできます。たとえば、寝つきが悪いなど睡眠の質を改善させたり、冷えや食べ合わせなどで起こる一時的な腹痛などにも対応できます。心の安定などにも鍼で対応する場合もあります。
トレーナー室は高校野球やプロ野球、スポーツ番組をテレビで流しながら、リラックスできる雰囲気を作って施術を行うようにしています。ホテルの生活は快適なことは快適ですが、やはり自宅とは違いますし、気遣う点が多くあります。その点、滞在が長くなればなるほど選手に知らずのうちにストレスが生じてくるのです。そして、あの大観衆の甲子園で試合をするわけですから、普段の地方大会や地区大会と心身への負担は格段に違うのですね
あと、星稜高校野球部(石川県代表校)の宿舎であるホテルのいい所は大浴場があるということです。部屋のユニットバスでは汗や土は流すことは出来ますが、ゆったりと疲労をとることはできません。その点は有難いなといつも感じております。
そして、選手の状態を把握するためには練習で動きをみることは必須だと思います。練習で調子を聞きながら、時々、相談を受けながら現場でケアの計画を立てていきます。甲子園での練習時間は短いですが、その分、効率よく、目的をしっかり持って臨んでいます。ですから選手の身体や心の動きを見ながら、「あそこを、こう施術したらいいな」「ここは状態を聞きながらやっていこう」と思考できるわけです。
そんな練習についての記事は、パート2で書きたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます
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