2月25日(土)に開催された(社)石川県針灸師会の新年学術講習会に参加しました。
(社)石川県針灸師会 新年学術講習会
日 時 : 平成24年2月25日(土) 午後4時30分~6時
会 場 : 加賀市文化会館 203会議室
演 題 : 『維持透析患者の鍼灸治療』
講 師 : 小俣 浩 先生 埼玉医科大学 東洋医学センター
鍼灸治療というと、腰痛や膝痛など痛みだけではなく様々な疾患に幅広く適応されます。生活習慣病あるいは入院患者の生活の質(QOL)の改善にも効果的であり、生活の質が改善できれば、体を動かすことができ、食欲が出て、排便もスムーズになり、生活習慣病や慢性疾患に立ち向かい、改善、克服する体つくりにもなるということです。
腎臓は、体重の0.3%に過ぎない小さな存在ですが、血液の流れる量は、毎分800~1200ミリリットルです。ご存じのごとく、尿を生成したり、それを排出したりする働きがあるのですが、その他にも多くの働きがあります。その大きな一つが内分泌と代謝作用です。
ビタミンDを活性化させてカルシウムの調整に働き、エリスロポエチンというホルモンを出して、貧血にならないように赤血球の調整に関ります。また、レニンという物質を生成して血圧の調整に関ります。尿を生成・排出するわけですから水分を調整し、血圧を調整することは理解できますよね。
冒頭は、腎臓についての簡単な解剖、生理学的なお話でした。
ここからはメモしてあること(勉強したこと)を箇条書きで書いていきたいと思います。
☞2005年末現在、透析患者は約25万人で国民の514人に1人が透析を受けている。
☞全身性エリテマトーデス(SLE)など自己免疫疾患では、腎疾患との併発が多い。
☞内臓は、自律神経二重支配(交感・副交感神経)であるが、腎臓は交感神経のみの支配である。交感神経が緊張するか、弛緩するかである。
☞以前は慢性糸球体腎炎からの透析患者が多かったが、1998年を境に糖尿病性腎症からの透析患者が圧倒的に多くなってきた。
☞埼玉医科大学東洋医学センターには、顔面神経麻痺や動眼神経麻痺の患者が多く来院し、その中で糖尿病が基礎疾患にある患者がある。糖尿病が基礎疾患にあると、治癒あるいは症状軽減まで時間がかかる。
☞「維持透析患者の補完・代替医療研究会」(世話人代表:埼玉医科大学腎臓内科 鈴木洋通 教授)という組織があり、医師をはじめ多くの医療従事者が参加している。その会で小俣先生が鍼灸治療の講演会を行ったところ、皆、興味深く聴講されて、特に直接患者と向き合う看護師の皆さまが熱心に質問してきたとのことであった。透析スタッフは鍼灸治療に非常に興味を持っている。
☞腎臓病の治療は、減塩・低タンパク・低カロリーの食事療法が主となる。腎臓病に効果的な薬物は現在なく、薬物治療の中心は血圧治療である。
☞日本の腎臓病、透析患者では、諸外国に比べて貧血(ヘマトクリット、ヘモグロビン値低下)が多い。これがあると日常生活動作が悪化しやすい。
☞透析患者では手根管症候群の合併や皮膚症状が多い。
☞皮膚症状は”乾燥、かゆみ”である。かゆみに関しては分かってないことが多いが、アトピー性皮膚炎が末梢で感じる「かゆみ」であるのに対して、透析患者のかゆみは中枢で感じる「かゆみ」であり、脳内のオピオイドが関連していると考えられている。
☞透析方法は、従来の血液透析(HD)、腹膜透析(CAPD)がある。今後、在宅医療の普及とともに、在宅血液透析(HDD)が増加してくると予想される。
☞腎疾患に関する日本、外国の文献を調べると…
☞NCCAМ(アメリカ国立補完代替医療センター)のGabriela.Eの論文では、「鍼と腎疾患」と題して、腎疝痛の鍼、高血圧の鍼、尿毒症掻痒症の鍼治療、末期腎疾患患者の睡眠の質・生活の質の改善における経穴圧刺激の役割、経穴圧刺激は腎炎症性疾患を防げるか、などについて解説し、鍼治療の可能性を示唆している。
☞埼玉医科大学 東洋医学センターの研究では、透析患者の痛み、コリ、シビレ、だるさについて一定の効果がみられた。
☞埼玉医科大学では、内臓体性反射などの関連痛(かゆみ)などの症状を診つつ、脊髄分節として、筋への運動神経支配分布であるミオトーム(筋枝)、皮膚への感覚神経支配分布であるデルマトーム(皮枝)など、また東洋医学的な経絡なども考えて治療穴を選穴してる…この辺りはしっかりメモしていなかったので少し違っているかもしれません。 大切なとこですが
☞腎臓疾患の治療穴において、東洋医学的には腎経、膀胱経の経穴が多い。またデルマトーム、ミオトームでいくと、第10~11胸椎、あるいは、第1腰椎の分節の経穴を刺激することで、腎臓へ刺激の情報が伝わると考えているということだった。
☞埼玉医科大学でに研究によると、透析患者の血液生化学的検査値を鍼治療で劇的に向上させることは難しいが、生活の質など身体的健康度を向上させることには効果があることがわかった。
☞また、腹膜透析の方が効果が出やすく、血液透析患者では難しいとのこと。
☞SF36など生活の質の指標を用いて鍼灸治療の効果をみたところ、統計的には有意な差は得られなかったが、少しずつではあるが改善傾向にあることが分かった。
☞治療経験のお話があり、1年以上透析を行っている患者がおり、鍼灸治療を1年ほど継続して行い、先ほどのSF36を用いてみたところ、全身症状が改善され、活力の点数が高くなり、睡眠力も向上した。ヘモグロビン濃度(HGB)や尿素窒素(BUN)が改善された。また、ある慢性腎障害の患者に腎経の築賓にやや強めの刺激を行ったところ、尿が出るようになった。患者の話では「あの尿が出るときの快感を久しぶりに味わえた」ということであった。
☞また、ある研究では、指圧を湧泉、足三里、三陰交に1カ月行っても特に効果がみられなかったが、1年継続すると、だるさが改善された。また、湧泉、神門に同じく指圧を行ったところ、1カ月では変化がなかったが、1年で睡眠の質が良好となった。
☞腎兪という経穴は、腎臓の血行動態に何らかの影響を与えていると思われる。
☞体内オピオイド(麻薬類縁物質)には、作用する受容体の違いにより、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンがある。最近の研究では、エンドルフィンは「痛み」に対して抑制的に、「かゆみ」に対して促進的に働くことがわかってきた。ダイノルフィンは「痛み」「かゆみ」ともに抑制的に働くことも分かってきた。鍼治療の効果として、「痛み」「かゆみ」にも効果的があるということは…
☞鍼刺激には、血管拡張トレーニング作用があると考えている。
☞最後に、線維筋痛症について説明があり、こちらの治療にも力を入れているとのこと。
この後、質問は、時間の関係上とることができいとのこと。小俣先生は、翌日、日本東洋医学会の仕事があるということで、新年会の席に少しお邪魔して帰られるとのことでした。
質問はその席で…ということでした。
小俣先生とは全日本鍼灸学会ではよくお目にかかったのですが、直接、私的にお話したのは初めてでした。その話は、また「石川県針灸師会 新年会」のブログで。
長くなりました~、ごめんなざ~い
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