今日のご紹介は秦楽寺です。パチパチ!
秦楽寺(真言律宗 奈良県磯城郡田原本町秦庄)
じんらくじ、と読みます。律宗らしい、無駄を省いた伽藍と境内です。ここは、お大師さまの出家宣言書である『三教指帰』(さんごうしいき)が執筆されたという伝説のある寺です。
『三教指帰』は元のタイトルを『聾瞽指帰』(ろうこしいき)と言って、大師直筆のものが高野山金剛峯寺に現存します(もちろん国宝)。
この書は、日本最古の戯曲であり、日本最古の思想比較書とも言われています。
都の大学をドロップアウトした24歳の空海青年は、主人公の言葉を借りて「(父ちゃん、母ちゃん、ごめん!)エリート役人になって故郷の期待に応えるのは小さな親孝行だ。それより、僧侶になってすべての人々を救うことこそが大きな親孝行であるのだ!」と高らかに宣言します。
境内の阿字池。夜更けまで執筆に明け暮れた際に、境内の阿字池でやかましく鳴くカエルたちを青年大師が叱ったところ、以来、カエルが鳴かなくなったとの逸話が伝わっています。
確かにカエルは見当たりませんでした。しかしその分、やたらと蚊が多く、拝観料は取られなかったのですが、血はだいぶ取られました、、、、
なお、およそ人気は無く、地元タクシー運転手2人とも初めて名前を聞いたとのことでした(^^;)
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大師の両親への気持ちはここらですね。このような状況で両親の期待に背いて大学を中退するのは本当に断腸の思いだったことでしょう↓
「わたくしはまことに不肖の身でありますが、それでも禽獣とは違います。我が身の不孝の一念が離れずに、はらわたの爛れ裂ける思いをしています。
両親はわたくしを大切にねんごろに養育してくださいました。その苦労は山よりも高く、その恩の深さは海にも勝りましょう。どうして忘れることがありましょうか。恩に報いようにも極まりがなく、恩を返そうにも際限がありません。孝を尽くせなかった悲しみを詠んだ昔の歌を歌っては、愁い恥じているのです。孝を尽くす動物と言われる烏を見ては終日に身を焦がし、正月に魚を捕って祖先を祭ると言われる川獺を思っては夜通し肝が爛れる思いです。年老いた両親はもう先が長くないのに、頑ななわたくしが養育していただいた恩に報いる前に、冥府に旅立ってしまうのではないかと、常に嘆いております。月日は矢の如くに父母の寿命に迫り、家産は薄く屋根や柱も傾いています。二人の兄は幼くして立て続けに死んでしまい、父母も親族もみな涙が止まりません。わたくしは己の愚鈍さに憤りの思いを起こしては月日をしのぎ、悲しみの痛みに捕らえられて毎日を送っているのです。ああ、悲しいことです。仕官しようと望んでも叶えられず、退いて黙しようと思っても養わなければならない親が待っているのです。進退窮まって、狼狽するばかりの身の上です」(『三教指帰』より)