教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

社会システム理論を少しカジって

2005年06月07日 17時13分00秒 | Weblog
 さきほど特研終わりました!

 今日の発表の内容は、大日本教育会・帝国教育会を分析する視点を、社会システム理論を参考にして考えてみよう、という内容でした。両会を社会システムとして分析したいのではなくて、社会システムとして捉えた場合何がわかっていないことか、ということを明らかにしたかったのです。つまり、両会の分析視点を明らかにすることが目的でした。
 今回は、社会集団理論から社会システム理論に移行して、その理論を整理し、社会システムの特性とは何か、分析視点はどこにあるのか、ということをまず解説しました。次に、私が従来研究してきた内容を勘案しながら、大日本教育会・帝国教育会を社会システムとして仮説的にモデル化してみました。では、なぜ両会を社会システムとして捉えるのか。これは、社会システムは他のシステムや環境との関係で成り立っているので、社会システムとして分析することは必然的に両会の社会的機能を分析することと同義になります。両会の社会的機能の分析は、両会の社会的(歴史的)意義を考える重要なてがかりになるので、今回やってみたのです。おまえの研究には理論がない、意義がわからない、と言われ続けてきたことに対する一つの答えのつもりです。
 このように両会を捉え直してみると、わかっていないことは多いなと実感しています。両会と小学校との関係だとか、両会の内部構造のうちの、研究調査機関と運営機関・会員との関係など、先行研究では不明確な部分があります。あるかどうかすら、今後実証していかなくてはならないことです。わからないことがわかった、今回の発表でした。両会の分析視点、つまり何に注目して何を明らかにするか、ということを明らかにするという、目的は果たせたと思います。
 特研では、「社会システム」という概念に対して、相当に強い誤解がありました。私も勉強するまではそうだったのですが、方法概念としての「社会システム」と、いわゆる「近代社会システム」とか「日本社会システム」とは別のものだということが、なかなかわかってもらえませんでした。社会システムというのは諸要素間の関係のまとまりを分析するための方法的概念であって、近代社会システムというのは社会システムという概念を以て捉えることができる現実の実態です(伝わるかな…?)。最後にはわかってもらえたのですが、かなり説明に手間取りました。

 まあ、ともかく、今回社会システム理論を使ったのは、分析視点を開発することにあっただけで、今後両会を社会システム理論に当てはめていく作業をするわけではありません。社会システム理論を勉強したのはあくまで通り道であって、最終的な目的は別のところにあります。
 私が両会を研究しているのは、戦前日本における教育研究の歴史を明らかにするためにやっているのですから。次やるのは、もっと教育学的(?)な理論構築でなくてはなりまへん。さて、次だ次。
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3 コメント

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さて (休呆)
2005-06-07 18:12:06
 教育史研究に社会システム論がどれだけ意味のあることかはわかりませんがお手並み拝見ですかね。期待してますよ。
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ひとこと (wozaibeijing)
2005-06-07 19:14:39
 パーソンズとかルーマンとかそういった人が構築したシステム理論は、後続の多くの人が使用するだけに権威あるものなのであろう。でも、「社会」をみる際にこうした理論に依拠しなければその「社会」の成り立ちや変化、あるいは発展、あるいは衰退を見たり、さらには特質を抽出できないものなのであろうか。

 大日本教育会・帝国教育会を通して見られる教育研究の歴史を、可能な限り事実に即して白石風に料理し、その結果を白石風オムライスとか白石風カレーライスとかに命名し、同業の方に賞味してもらい続けるほうが実りあると思うなあ。そうしたら「うまい」とか「まずい」とか言ってくれる人が現れるし(現に言ってもらっているみたいだし)、それを受けながらまた白石風なものを頑固に構築し続けたらいいと思うけど。その構築されたものが「白石の理論」となって認可されると同属の研究室の者として自慢できるなあ。なんちゃって

 とにもかくにも白石君の勉強意欲というか研究意欲には触発されること大で

 話し突然変わって、一昨日の晩、「辛」というカップラーメンを食べたと言ったが、このおかげで昨日はたいへんでした
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コメントありがとうございます (白石)
2005-06-07 20:34:42
 休呆さん、wozaibeijingさん、こころあたたまるコメント、ありがとうございました。元気出ます!

 社会システム理論は参考にしただけで、この理論に則ってやっていくつもりはないので。この理論は、考える道具ですよ。分析視点の枠を広げるという意図で、意識的に勉強してみたわけです。

 私のやること・やりたいことは、あくまで歴史の実証に基づいた、教育学研究の一側面としての日本教育史研究です。今までずっと自己流でやってきて、ここのところ壁にぶち当たっていました。研究の意義を見いだすことって何じゃろう、理論って何じゃろうと、考えた結果、研究に関係ある興味ある理論にとりあえず触れてみた、と。

 ともかく、この理論に囚われてしまうのか、逆に自由に扱うことができるようになるのか。その答えは、今後の私次第といったところでしょうね。

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