18・19日は久しぶりに鳥取市にいました。鳥取県史編さん事業のためです。3月になっても一向に時間がないのですが、今回は無理やり時間をこじ開けての訪鳥です。最初は単純に県立公文書館所蔵の資料を見に行ったのですが、編さん室職員さんのご配慮により鳥取西高等学校にも史料調査に行けました。現在、県史編さん事業では資料編の編さんに取り組んでいますが、これで中等教育の史料についても充実できそうです。
鳥取西高等学校は、旧県立第一中学校と旧県立高等女学校とが合併してできた高校です。他県の場合、一中と県立高女とは別々に高校になり、それぞれ男女共学にしていくことが多かったと認識していますが、鳥取の場合はそうでなかったようです。なお、戦後の高校設立の際に、旧県立鳥取商業学校も合併しています(こちらはすぐに分離独立しますが)。
鳥取西高は現在校舎改修・新築工事中で、所蔵史料は同窓会館に山積みされています。学校史料は合併・廃校・改修時によく散逸します。鳥取県でもすでに散逸状態になってしまった学校がかなりあります。鳥西では関係者の努力でかなりの史料が残っていますが、今後も維持できるよう応援していきたいです。ちなみに、『鳥取西高百年史』には資料編がつけられており、かなり充実した史料復刻がされています。
現在の鳥取西高には、残念ながら一次資料はそれほど多くないのですが、一中と高女のさまざまな史料が残されています。ただし、前身の旧尚徳館(藩校)資料は散逸してしまっています。また、鳥西は家政科附属として久松(きゅうしょう)幼稚園をも合併していました。久松幼稚園は明治39年創立の伝統ある幼稚園でしたが、園舎を久松保育園に移管して2003年に廃園されています。史料はどこにいったかわからなかったのですが、少し鳥西に所蔵されていることを確認しました。県内の幼稚園史料はほとんど残っていないので、これはうれしい発見でした。
ちなみに、鳥取県立公文書館には、平成10(1998)~12(2000)年の間に県内小学校所蔵資料調査が行われた際に大量に撮影された複製資料が残っています(鳥取県初等教育資料)。次々に学校が統廃合されて資料散逸が進んでいる県内の状況を考えると、この複写資料は非常に貴重です。私もここに残っている資料の現物を確認しにいったことがありますが、そこの資料はすでに散逸していました…。県史編さんではこの資料をしっかり使い、その貴重さを少しでもアピールして、これ以上の史料散逸を防止することに貢献できたらいいなと思っています。
史料を復刻したら用済みだということで現物史料を廃棄する学校もあると聞きますが、とんでもないことです。また、永久保存の学校沿革史があるからという 理由で、史料を廃棄してしまう学校もあるようです。これもとんでもないこと。史料は失われたら二度と作ることはできません。復刻は史料を利用しやすくしますが、現物あってこそはじめて最大の価値を持ちます。また、学校は、地域や関係者のさまざまな思いや支えによって設立・運営されてきたものです。学校史料は、それらの思いや支えを確かめる手立てです。学校史料の散逸は、それらの思いや支えを学校が忘却・無視・軽視してしまった結果とも言えます。戦後、学校の存在意義が問われ始めて長い時間が経ち、いまだに問われ続けています。このような状況を生じさせたのは、意識的・無意識的いずれにしても、史料を散逸させて自校の存在根拠を見失ってしまった学校が増えたことも、ひとつの原因なのではないでしょうか。鳥取県だけの話ではありません。全国で学校史料の散逸が危ぶまれる現在、各自治体・教育委員会・学校関係者の見識と姿勢が問われています。
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