Motoharu Radio Show #160

2013年09月04日 | Motoharu Radio Show

2013/09/03 OnAir - 1st. Week - ブルース・ロック特集~萩原健太氏を迎えて~ 第一回
John Mayall & The Bluesbreakers:All Your Love
The Paul Butterfield Blues Band:Born In Chicago
The Electric Flag:Killing Floor
Tedeschi Trucks Band:Part of Me
Fleetwood Mac:Shake Your Moneymaker
Jeff Beck & Rod Stewart:You Shook Me
Led Zeppelin:Since I've Been Loving You
The J. Geils Band:Cruisin' for a Love (Live)
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■内容の一部を抜粋
・ブルース・ロック特集~萩原健太氏を迎えて~ 第一回
音楽評論家の萩原健太さんを迎えてブルース・ロックを特集する。二週に渡っての特集で今夜はその第一回目。'60年代、'70年代のブルース・ロック特集。

ブルース・ロックという括りで年代を追って体系的に聴いてみたいと元春。
いろんなものが集約されてロックンロールという音楽ができたのに、そこから細分化がはじまり、'60年代に入ってひじょうに混乱した時代になってきたときに、もう一度ルーツを見直そうという動きがある中で生まれてきたのがブルース・ロックという捉え方でいいんじゃないかと健太さん。

・All Your Love
ジョン・メイオール & ブルース・ブレイカーズの1966年の「All Your Love」。ジョン・メイオール & ブルース・ブレイカーズはとても重要なバンドで、彼らのアルバム『John Mayall & The Blues Breakers with Eric Clapton』はクリーム結成以前のエリック・クラプトンのプレーが聴ける。もともとはオーティス・ラッシュが1958年にリリースした「All Your Love」はブルースの世界でマンボやルンバなどのアフロ・キューバン・ビートを取り上げるのが流行った時期にできた曲。それをジョン・メイオールやエリック・クラプトンのイギリス人が取り上げるとちょっと哀愁が加わってくる、と健太さん。サンタナの「Black Magic Woman」はサンタナのオリジナルではなくて、フリートウッドマックのピーター・グリーンが「All Your Love」にインスパイアされて作った曲だと元春。ボブ・ディランも近年、「All Your Love」に触発された曲をやってるので探してみていただきたいと健太さん。

・Born In Chicago
健太さんが選曲した'60年代の米国のブルース・ロックの中からポール・バターフィールド・ブルース・バンド。ポール・バターフィールドは白人だけれどシカゴの黒人コミュニティの中で暮らしていたということもあってイギリスとはまた違った現場感覚があると健太さん。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドはバンドに二人のギタリスト、エルビン・ビショップとマイケル・ブルームフィールドがいた。ニック・グレイブナイツというヴォーカリストが作った1965年の「Born In Chicago」はアメリカの最初のブルース・ロックの傑作。聴きどころはポール・バターフィールドのブルース・ハープだと元春。

・Killing Floor
健太さんが選曲した'60年代の米国のブルース・ロックの中からエレクトリック・フラッグ。マイケル・ブルームフィールドが作ったバンド。1968年の「Killing Floor」はハウリン・ウルフのカヴァー。1965年のジョンソン大統領の有名な公民権を巡る投票権法の演説が冒頭に入る。白人ならではの政治にコミットした内容の曲は都市部のリベラル層にアピールしていたのかと元春。黒人からも認められていたが、当時の社会状況の中でいろいろと考えながら聴かなきゃいけない音楽で、白人のリベラル層が理論武装しながらサポートしていたところはあったと健太さん。

・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月9月の「3PICKS!」はテデスキ・トラックス・バンド『Made Up Mind』、ブッカー・T・ジョーンズ『Sound The Alarm』、そしてヴァン・ダイク・パークス『Songs Cycled』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はテデスキ・トラックス・バンド『Made Up Mind』。

・テデスキ・トラックス・バンド
米国フロリダ州からのブルース・ロック・バンド。ギタリスト、デレク・トラックスと歌手のスーザン・テデスキの夫婦が中心となったバンド。結成は2010年で現在まで2枚のスタジオ盤を出している。2011年のバンドにとって最初のレコード『Revelator』が高く評価されてグラミー賞において最優秀ブルース・アルバム賞を獲得している。そのテデスキ・トラックス・バンドが新しいアルバム『Made Up Mind』を出した。レコーディングは自分たちの自宅に作ったスタジオで録音している。このアルバムについてデレク・トラックスはこんなふうに言っている。「この一年間、バンドと一緒にツアーに出ていた。バンド全員、お互いに理解しながら自由に演奏できるようになった。とても自然にレコーディングできた」。テデスキ・トラックス・バンドが新しいアルバム『Made Up Mind』の中から「Part of Me」。

デレク・トラックスはオールマン・ブラザーズ・バンドのオリジナル・メンバーのドラムのブッチ・トラックスの甥っ子。「こういう感覚を演奏するのは世襲制になってるのかな(笑)」と健太さん。マッコイ・タイナーとジャズの曲をやっていたりと新しい可能性を感じるそうだ。

・Shake Your Moneymaker
健太さんが選曲した'60年代のイギリスのブルース・ロックの中からフリートウッドマック。ピーター・グリーンがやっていたブルース・ロック時代のフリートウッドマックはアメリカのブルースへの憧れを前面に押し出していた。大瀧詠一さんがよく仰ってた差異。差なのか違う異なるものなのか、この違いがアメリカのブルース・ロックとイギリスのブルース・ロックにはあるような気がすると健太さん。差だったら追いかけていけばもしかしたら追い越せるかもしれないが、違うものとして認識してしまうと違うものとして別のブルースに仕立てるしかない。'60年代のイギリスのブルース・ロックには追いつけ追い越せという若い突進力があるような気がするそうだ。「Shake Your Moneymaker」はミシシッピー出身のエルモア・ジョーンズの曲。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドもカヴァーしていて、そのヴァージョンを聴いてドアーズが「Break On Through」を作ったりしたというとても重要な曲。フリートウッドマックは1968年にカヴァーしたが、このヴァージョンを聴いたダウンタウン・ブギウギ・バンドが「スモーキン・ブギ」を作った。

・You Shook Me
健太さんが選曲した'60年代のイギリスのブルース・ロックの中から第一期ジェフ・ベック・グループ。ヴォーカルはロッド・スチュワート、ベースはロン・ウッド、キーボードはニッキー・ホプキンス、ドラムはミック・ウォーラー、オルガンはジョン・ポール・ジョーンズ。曲は1968年の「You Shook Me」。マディー・ウォーターズのヴァージョンが有名。ジェフ・ベックはオリジナルに敬意を表しつつ換骨奪胎したギターを聴かせる。このあとエリック・クラプトンが抜けたヤードバーズにジェフ・ベックが参加。それからジミー・ペイジが入り、二人で一緒にいた時期があってジェフ・ベックが辞めたあと、そのバンドをベースにしてジミー・ペイジがレッド・ツェッペリンを作るという流れ。
ジェフ・ベックのギターはアバンギャルドだと元春。ただ壊すだけだったら誰でもできるんだけれども、それを続けるんだったら基礎的なスケッチ力とかが重要になると健太さん。

・Since I've Been Loving You
健太さんが選曲した'60年代のイギリスのブルース・ロックの中からレッド・ツェッペリン。当時の三大ギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジの中ではクラプトンが好きなのだという元春。聴いていて安心、気持ちいいっていうところ。健太さんはジェフ・ベックが当時好きだったとか。ジミー・ペイジはギターのソロでは少し落ちると言われるがリフ作りの上手さは絶妙。レッド・ツェッペリンのブルース・マナーの曲で最高峰と言われる「Since I've Been Loving You」。ある種、ブリティッシュ・ブルース・ロックの集大成みたいなところがツェッペリンにはある。ハード・ロックとしての魅力の頂点に輝いていた。1970年の「Since I've Been Loving You」は全体の構成とか歌詞がモビー・グレープの「Never」と類似しているという説が根強い。このあとツェッペリンはトラッド・フォークの要素を取り入れて独自のトラッド・エレクトリック・ブルースの世界を作り出してゆく。

ほかにはマウンテン、フリーというバンドがブルース・ロックとしては有名。1970年代になるとブルース・ロックも派生系が出てくるようになる。ハード・ロックが出来上がってゆく過程にブルース・ロックの在り方がこの時期に固まってきた感じがすると健太さん。フリートウッドマックはクラブでブルース・ロックを演奏するバンドだったが、ツェッペリンの頃は音がラウドになり、会場もスタジアムで行うようになってきた。「タイトなテンポだとスモール・プレイスでいいかもしれないけれど、すごく広いところだとレッド・ツェッペリンみたいな、雄大な向こうにホライズンが見えるような、ブルース・ロックのほうが... だからね、空間と演奏表現というのは密接に関係しているんじゃないかなと思うんですよね」と元春。

・Cruisin' for a Love (Live)
J. ガイルズ・バンドは1969年にアトランティックと契約するが、ウッドストックに出ないかという話があったという。「そんなでかいところで泥にまみれてやるのは嫌だ。俺たちはもっとコンパクトなハウスでブルースをやるんだ」とウッドストックの話を断ったとか。クラブギグの美学を貫こうとしていたところがある。1970年代の米国を代表するバンド。マジック・ディックのブルース・ハープと、J. ガイルズの朴訥としたブルース・ギターとピーター・ウルフの切迫したヴォーカルの骨っぽい演奏がよかったと健太さん。

・番組ウェブサイト
「番組ではウェブサイトを用意しています。是非ご覧になって曲のリクエスト、番組へのメッセージを送ってください。待ってます」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/

・次回放送
来週も音楽評論家の萩原健太さんを迎えてブルース・ロックを特集する。
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