田家秀樹著「みんなCM音楽を歌っていた 大森昭男ともうひとつのJ-POP」を読了。
音楽制作プロダクション「ON・アソシエイツ」を主宰するCM音楽プロデューサー大森昭男を軸にして、J-POPの歴史を顧みるドキュメント。大森昭男が制作したCM音楽の代表作は、'70年代後半の資生堂のCM作品で、例えば矢沢永吉の「時間よ止まれ」、宇崎竜童の「サクセス、サクセス」、堀内孝雄の「君の瞳は10000ボルト」、南こうせつの「夢一夜」など。'80年代は糸井重里、川崎徹などと組み西武百貨店のCMを生み出してきた。ソングライター・コンビ「糸井重里 / 矢野顕子」は彼がいなければ誕生してなかったといえるだろう。そうそう「ほぼ日」に特設サイトがあります。
個人的になじみ深いところでは大滝詠一の「サイダー'73」に代表されるCMソング、阿久悠作詞、大滝詠一作曲の小林旭「熱き心」、シュガーベイブ時代の山下達郎の「不二家ハートチョコレート」に代表される一連のCMソング、佐野元春のウォークマンのテーマ「ワンダーランド」。
大滝詠一と大森昭男の対談も収録されていて、そこではナイアガラ・レーベル誕生秘話や資生堂の呪い(苦笑)、山下達郎との出会いや、「熱き心」のレコーディングの様子などが語られている。
大森昭男は現在もCM音楽を制作しているが、この時代、CMもその音楽も様変わりしているのだと気づかされる。CM曲で気軽に口づさめる曲ってあまりない。それは僕自身の年齢のせいなのかもしれない。この「みんなCM音楽を歌っていた」を読んでわかったのは、僕が聴いてきた音楽が現代では時代遅れのものとなり、現役で活動を続けているアーティストも、もはや音楽シーンの第一線にはいないのだということだ。本の帯には「あの頃。」と大きく書いてあるが、そう、時代はゆっくりと過ぎて、そして変わったのだ。