2020年02月02日プレイリスト「スコット・ウォーカー特集 PART 2」
1. IN MY ROOM / THE WALKER BROTHERS '66
2. HOLD ON(LIVE) / THE WALKER BROTHERS "IN JAPAN" '68
3. MATHILDE / SCOTT WALKER "SCOTT" '67
4. JACKIE / SCOTT WALKER '67
5. JOANNA / SCOTT WALKER '68
6. IT'S RAINING TODAY / SCOTT WALKER "SCOTT 3" '69
7. JOE / SCOTT WALKER "'TIL THE BAND COMES IN" '70
8. THAT NIGHT / SCOTT WALKER "MOVIEGOER" '72
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■内容の一部を抜粋
・近況
達郎さんは明後日2月4日が誕生日で67歳になるそうだ。「なんか(笑)、どんどん(笑)、年を取っていくという感じでございますが。でも、まぁ、身体の調子は取り立ててどこも悪いところございませんですので、今年もはりきってまいりたいと思います」と達郎さん。
・スコット・ウォーカー特集 PART 2
先週に引き続いて「スコット・ウォーカー特集」 PART 2。今週はアイドル的な人気に疑問を持ちソロに転身する歴史。'60年代の終わりから'70年代にかけてのスコット・ウォーカーのソロ・ワークを中心に。
・IN MY ROOM
ザ・ウォーカー・ブラザーズは1965年にイギリスでブレイクして1967年までの2年半で絶頂期を迎える。ビートルズよりもファン・クラブの数が多くなったという大変な人気を博した。そんな中で発売された1966年のセカンド・アルバム『PORTRAIT』の1曲めに入ってるのが「IN MY ROOM」(邦題は「孤独の太陽」)。日本でシングル・カットされて日本で大ヒットした。もともとはスペインのシンガーでハイメ・モリーが1964年に出したものに、英語詞を付けて、アメリカの黒人シンガーのバーデル・スミスがシングル発売したものの後追い。ウォーカー・ブラザーズのものがいちばん有名。
スコット・ウォーカーはバリトン・ヴォイスの朗々とした歌い方だが、ルーツはロックンロールなので、それが'60年代にアピールした。もともとウォーカー・ブラザーズはジョン・ウォーカーとスコット・ウォーカーのふたりでデュオに近いかたちで展開していたが、それはライチャス・ブラザーズにひじょうに近いかたち。そういうところが現れるのはライヴだがライヴ・ソースはほとんど残っていない。1966年頃になるとスコット・ウォーカーはアイドル活動に嫌気が差してきて、いろいろとおかしな行動が多くなって、仲違いがはじまる。一度解散するが日本公演の契約だけが残っていたので、1968年にそのために暫定的に再結成して日本公演を武道館で行った。ビートルズに続いて武道館公演を果たした外タレになるそうだ。このときの模様が『IN JAPAN』というタイトルで、日本だけで発売された。長いことCDにはなってなかったが2007年にマスター・テープからリマスタリングされて、当時発売されたアナログ盤に入ってない曲も含めて、大阪フェスティバルホールのライヴが出た。完全版ではないが、これを聴くとウォーカー・ブラザーズのライヴの様子が少しわかってくる。ヒット曲の他にやってるのは、例えばスコット・ウォーカーの趣味で、ジャック・ブレルとかあるけれど、中心はR&B。
・HOLD ON(LIVE)
『IN JAPAN』からサム&デイヴのカヴァーで「HOLD ON」。オープニングの1曲め。1968年1月4日のフェスティバルホール公演。
ウォーカー・ブラザーズは1967年に解散。スコット・ウォーカーはソロになる。もともとL.A.時代からヨーロッパの文学や映画に耽溺していたが、とりわけフランスのシンガー・ソングライターのジャック・ブレルにハマっていたというインタビューが残っている。その中でL.A.時代に付き合っていたドイツ人の女の子(プレーボーイ・クラブでバニー・ガールをしていた)がフランスの音楽が好きで、スコット・ウォーカーにジャック・ブレルを教えた。あるときストーンズのプロデューサー、アンドリュー・オールドハムと話してたら、ジャック・ブレルの話題になり、アンドリューがどうにかしようとしていた、ジャック・ブレルが英語に翻訳した、ジャック・ブレル自身のデモ・テープを持っていたので、スコット・ウォーカーがジャック・ブレルのレコーディングをはじめることになったと語っている。ロックンロールとティン・パン・アレイ・ミュージックとビート・ジェネレーション、ヨーロッパのヌーヴェルバーグが渾然一体となって、スコット・ウォーカーのこの先の音楽がはじまる。
・MATHILDE
1967年のスコット・ウォーカーのファースト・ソロ・アルバム『SCOTT』の1曲めに入ってるのがジャック・ブレルの「MATHILDE」。アメリカの作曲家コンビのドグ・ポーマスとモート・シューマンのモート・シューマンが訳詞している。
このファースト・アルバム『SCOTT』からウォーカー・ブラザーズとは全く違う活動がはじまる。カヴァーからオリジナルに向かっていくことになるが、その当時のスコット・ウォーカーの人気は絶大でアルバム『SCOTT』は全英3位。セカンド・アルバム『SCOTT 2』は全英NO.1になる。サード・アルバム『SCOTT 3』は全英7位。ロックンロールのベーシックがあるので、それ以前のミドル・オブ・ザ・ロードのシンガーとは違うテイストがあった。
・JACKIE
セカンド・アルバム『SCOTT 2』に入ってた「JACKIE」もジャック・ブレルの曲で、1967年全英22位。過激な内容だったのでBBCでは放送禁止になったが、それにも関わらずチャートインして、アルバムは全英NO.1になった。
・JOANNA
この時代のスコット・ウォーカーはウォーカー・ブラザーズの余勢をかって絶頂期の人気だったためBBCでテレビ・ショーを持つ。このころはスターが必ずテレビ・ショーを持っていた。日本で有名なのはアンディー・ウイリアムス・ショーとかトム・ジョーンズ・ショーなど。その頃からそうしたものに対する抵抗がスコット・ウォーカーの中に出てきた。アメリカン・スタンダードとジャック・ブレルが相容れぬことからそれは当然のことだった。それでもレコード会社はヒット曲が欲しくて1968年にトニー・ハッチとジャッキー・トレントの作品「JOANNA」を取り上げ全米7位になった。この曲は昔のスコット・ウォーカーのイメージで、ソロ・アルバムの志向とはだんだん乖離していくことになる。ただ後にスコット・ウォーカーはインタビューで「JOANNA」の歌詞のかなりの部分を書いたと発言している。スコット・ウォーカーの中に作詞作曲したい部分と、レコード会社やマネージメントに従わざるを得ない部分があった。
・山下達郎 SPECIAL ACOUSTIC LIVE 2020
「今年はみなさまご承知のようにホール・ツアーはお休みしますけれども、体調管理のために月にいっぺんスペシャル・アコースティック・ライヴというですね、いわゆる三人ライヴでございます。おなじみでございますが。難波弘之さんと伊藤広規さんと私の三人で三人ライヴをやります」と達郎さん。
まずは今月の末、2月29日(土)と3月1日(日)に高円寺 LIVE MUSIC JIROKICHIからスタート。今から45年前にシュガー・ベイブの時代にお世話になったJIROKICHI。まだ同じ場所で現存している。ライヴ・チケットの受付開始日が決定した。2月16日(日)の午後3時から18日(火)の午後11時59分まで。2月29日(土)、3月1日(日)、どちらも午後7時開演。今回だけチケットはお一人様一公演一席種一枚までの申し込み。申し込み方法など詳しくは山下達郎オフィシャル・サイトにて。
https://www.tatsuro.co.jp/live/
・IT'S RAINING TODAY
ソロ・アルバムを出していく中でだんだん自分の作詞作曲のパートが多くなっていく。1969年の3枚目のアルバム『SCOTT 3』の頃から明確にポップ・シンガーとしての立場が嫌だと言ってマネージャーと揉めはじめる。それでマネージメントが離れていくことによってプロモーションが弱くなり売上が減っていく。それが'90年代になるとそうした反逆の姿勢で生まれた作品がカルトな評価を受けていくことになる。『SCOTT 3』は全13曲中ジャック・ブレルが3曲で残りの10曲はスコット・ウォーカーの作詞作曲。『SCOTT 3』の1曲め「IT'S RAINING TODAY」。
ソロ・アルバム4枚め『SCOTT 4』はついにアルバムがチャート・インしなかった。その次のテレビー・ショーをアルバム化した『SINGS SONGS FROM HIS TV SERIES』については全く語らない。その次に出た『TIL THE BAND COMES IN』はオリジナル・ソングがアルバムのA面で、B面はポピュラー・ミュージックのカヴァー・ヴァージョン。
・JOE
1970年の『TIL THE BAND COMES IN』から自作の「JOE」。
・THAT NIGHT
1972年のアルバム『MOVIEGOER』は映画音楽の作品。スコット・ウォーカーは消し去りたいアルバムだと語っているので未だにCD化されていない。この中から達郎さんの好きな「THAT NIGHT」。この曲はアメリカ映画『THE FOX』(邦題は『女狐』)のテーマ・ソング。
その後のアルバム『ANY DAY NOW』(1973年)、『STRETCH』(1973年)、『WE HAD IT ALL』(1974年)についてスコット・ウォーカーは自分でロスト・イヤーズと呼んでる。その後は活動停止して隠遁してしまう。
■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
2020年02月09日は、「スコット・ウォーカー特集 PART 3」
http://www.tatsuro.co.jp