日々描いたマンガやスケッチ、似顔絵などを貯めていく貯金箱のようなブログ。
スケッチ貯金箱
うたのイラスト(リンゴの唄)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/62/9d591fb4f490e7b05c1170817010713b.jpg)
この曲については以前書いたことがあるが、今ページとして残っていないので、もう一度書こうと思う。
1945年の作品(発売は翌年)ということだから、私のような歳の者でもリアルタイムでは知らない。「大戦直後に、日本国民に明るい希望を与えた曲」というストーリーで語られてきたわけだけれども、1949年の「青い山脈」と比べると、底抜けに明るい、という感じがしない。かすかに悲しみのようなものを感じさせるところがある。
そう思っていたところへ、先日亡くなられた橋本治さんの書いた文章を読んで納得がいったのである。
冒頭の有名なフレーズで、赤いリンゴに唇をよせながら「黙って見ている」青い空、という描写がある。なぜ青空を黙って見ているのだろう? 希望に満ち溢れているのなら、笑って(あるいは微笑んで)見ているのが普通ではないか。ここで考えなくてはいけないのは、この曲が作られたのは終戦直後、まだ戦の傷が癒えない時だった、ということである。
昨日まで続いていた戦争。そこで亡くなった近しい人たち、失ってしまった物、希望。そして戦争は終わった。しかしまだ心の傷は生々しく残っている。そんな時に、飢えた腹をかかえた人が、リンゴをかじる前にふと青空を見る。そして失ったものがいかに大きかったか、という感情に改めて襲われる。そんな人は、ただ黙って空を見つめるしかないのである。
新しい時代が来た。前を向いて歩かなければならない。でもまだ、希望に燃えるという段階ではない。むりやりにでも明るく、心のうちでは泣きながらも前を向いて歩くしかないのである。4年後の作品「青い山脈」との違いはそこにあるのだろう。
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女性像(古代女性像 2019・5.・10)
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