白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

安曇野

2020年05月21日 20時28分49秒 | 日記
安曇野の春。
同じ信州でも、できることならここに移住したいとさえ思う。
残雪の後立山連峰と田園風景はこの上なく美しく、吹き渡る風は爽やかだ。
山の名前など知らない人でも、あれは何の山なのだろうとしばし見とれてしまう。
もちろん僕は何度も登っている馴染み深い山々だ。見ていて飽きることはない。その時々の山の思い出がほろ苦い、あるいは甘美な思い出とともに蘇る。
爺ヶ岳、鹿島槍、五竜、唐松、白馬三山、これらの山は自宅からも見えるけれど、こんなにも大きくは見えない。迫力が違う。
安曇野はもうすぐ田植えだ。
僕らの棚田は長野市中条にあるが、今年は新型コロナの影響で、共同作業は中止と田んぼの会の会長から連絡が入った。23日に家族で田植えをするという。会長は今年で八十七歳になる。過疎で隣近所がほとんどいなくなった中で、夫婦で山の中に住んでいる。こんなところに一軒家に登場しそうだが、残念ながら近所に空家が3軒くらいある。幸い町場に住む娘さんや、いい若者になった孫が手伝ってくれる。孫は後は任せろと頼もしいことを言ってくれると会長はホッとした様子。先祖伝来の土地、ましてや苦労して切り開いた棚田を荒廃地になどとてもできないのだろう。何とか稲刈りはみんなでできるようにと思っているという。会員のほとんどは遠方なので簡単には来れない。田植えが終わりしばらく経ったころに簡単な手土産など持って訪ねてみよう。何しろ山の中なので、人恋しくて話したくて堪らないという人なのだ。

この山は鹿島槍。
この山の山頂で、一晩中月を眺めて過ごしたことがある。

この山は餓鬼岳。
ここは一昨年に登った。
人にほとんど会わない静かな山で、北アルプスの葉簿中央にあるとは信じ難いくらいだった。山小屋も近代風のホテル然としたものとは対照的な、古き良き時代の雰囲気をたっぷり持った山小屋だった。ゆとりがあれば一週間ほど泊まってみたい。もちろん懐の話だ。

安曇野を訪れるもう一つの理由はわさび漬けの買い出しだ。
わさび漬けの店は何軒もあるが、お気に入りの店が三軒ある。店によって、味にかなりの違いがある。使う酒粕によるのだと思う。甘過ぎず、もったりしていなくて、キレが良い、爽やかな辛味がスッと鼻に抜ける、そんなわさび漬けがいい。

安曇野という名前が何とも言えず好きだ。僕の住むこの地は高井野と古くは言った。勝てない。字面がいい。音がいい。安曇野と口に出して言うだけで、写真のような情景が浮かんでくる。
移住したい。叶うことなら移住したい。小さなそばの店を週三日位営み、自家焙煎のコーヒーも飲めて、おやきもある。そんなことを夢見る。
一方で夢だからこそ美しいということも分かっている。十分すぎるほどに。
事程左様に安曇野は僕の心をつかんで離さない。