銭湯の散歩道

神奈川、東京を中心とした銭湯めぐりについて、あれこれ書いていきます。

異常なアクセス増加のなぞについて

2021-01-28 06:54:00 | 銭湯考





1/22の夕方頃、何気なくアクセスを確認してみたところ、日頃は一桁から数十アクセスで推移しているグラフが、突出して数百に跳ね上がっていました。


以前も似たような状況があったので、またしてもgooブログのバグかな?と思い、それでも念のため翌日のアクセスを確認したのですが、


25位?

今までだと伸びても500位がせいぜいだったので、異例の上位ランクインです。


特に伸びていたのが


羽衣湯でした。


出典:東京銭湯ホームページ引用


羽衣湯のアクセスが多いのは、実はずっと前からで、ただこの銭湯は特殊な事情を抱えたところなのです。
自分のブログでアクセスが多い銭湯だと、その銭湯の名前をGoogleで検索すれば、多くがトップページあたりに自分のブログを見つけることができるのですが、ただ羽衣湯だけはいくら検索しても一向に出てきませんでした。
記事をアップしない日は、ほぼ上位に羽衣湯があったにも関わらずです。
どんな検索をすれば自分のブログが出てくるのかサジェスト(関連キーワード)で調べてみたところ、「羽衣湯 危険」が出てきました。


ここの羽衣湯は、同性愛者の溜まり場として有名で、そのあたりに関して率直にそのまま書いたのですが、それが危険という言葉と紐付けされた理由だったのかもしれません。


そして、1/22にアクセスが急増した理由なのですが、同性愛者同士で性行為に及んでいたことが発覚し、書類送検されたというニュースが報道されました。どうやらそれが原因だったようです。


ニュースの影響は、3日ほど続きました



TBSのニュースによると、羽衣湯の店主は4~5年で40件ほど警察に通報しているということで、年間にすると約10件ほど。
発覚しなかったことを含めれば、相当数に及んでいたのかもしれません。
30代の男性同士が露天風呂で淫らな行為をしていたそうですが、浴室には入浴客が15人ほどがいたということなので、ちょっと凄い話です。


ここは同性愛者同士のローカルルールも存在するらしく、ロッカーの鍵を足につけていたら相手を求めてるメッセージということなっていて、日頃から足につける習慣がある自分からしたら、そんなの初めから教えてくれよ!と思ったのですが、それを知ったのはずいぶん後で、入浴中にもしかして誘惑してるのかも?と思うようなジェスチャーを示されたこともありました。
同性愛者自体を非難したり差別するつもりは毛頭ないのですが、自分はいわゆる異性愛者(恋愛対象は女性)なので、正直戸惑いがありました。


羽衣湯は実際に足を運ぶと分かるのですが、玄関では性行為(いわゆるハッテン行為)に対する厳しい警告文が示されている一方で、中に入ると同性愛者に対する差別に断固反対すると同性愛者擁護の立場を鮮明にしています。
なので、そうした同性愛者を支援する銭湯を失望させた2人に関しては、真摯に反省してもらいたいなと思います。


たしかに高ぶる感情を抑えられなかったことに関しては同情の気持ちもあります。誰しも状況によっては抑えられなくなることはあり得るので(女性の揺れる胸につい目がいっちゃうとか)、自分もまったく偉そうなことは言えないのですが、ほかの同性愛者に対する偏見を助長することにもなりかねない今回の行為は、単に銭湯に迷惑を掛けただけでなく、ほかの同性愛者にも迷惑を掛けた行為と言わざるを得ません。
人が人である限り、人を求めるのは健全な感情だと思います。相手を求めること自体は非難されるべきことではありません。
是非とも適切な場所で出会いを見つけてほしいですね。

2020年の銭湯巡りを総括

2020-12-29 06:15:00 | 銭湯考

この一年も多くの方にブログを読んでいただいて感謝申し上げます。
今回は一年の総括として2020年に巡った銭湯を振り返り、記憶に残った銭湯を改めて紹介したいと思います。


巡った銭湯は、ザッとイベントも含めると11月10日時点で、82店。
すべての店名を書くと大変なので書きませんが、個人的には意外と多く巡ったなと思います。
今年は初めて大阪や熱海の銭湯へ行ったり、コロナ渦ということでいつもと違った街の風景を写真に収めるなど、色々と印象深い年となりました。


アクセス数は、52週×平均週アクセス6000で計算すると、およそ一年全体は30万前後。

▲色々波がありますが、だいたいこんな感じです


トータルでは、11/10時点で、70万アクセスです。ほかの方のブログと比べると微々たる数字かもしれませんが、個人的には大変栄誉ある数字です。
これも日頃見ていただいている方や、コメントを寄せていただいてる方、魅力ある銭湯を日々経営されている方々のおかげだと思っています。


地元の横浜をすべて巡った年は、ランキング形式で総括したのですが、今回もそうした形で2020年を紹介したいと思います。
あくまでも一個人の感想に過ぎないので、軽く流して読んでいただければ幸いです。


5位

大黒湯(東京・北千住)
〒120-0033 東京都足立区千住寿町32-6



威風堂々たる建物に圧倒されるのが北千住にある大黒湯です。
威厳ある外見とは異なり、中は家庭的な雰囲気。肩肘張らず気軽に入ることができます。設備も決して古くなく、レトロ好きでなくても十分楽しめる銭湯です。

4位
黄金湯(東京・錦糸町)
〒130-0012墨田区太平4−14−6



ややもすると保守的な銭湯業界の中で新風を吹き込んだのが、秋にリニューアルオープンした黄金湯。
従来にないコンクリート打ちっ放しの外観に受付がバーのカウンターだったりと、既成の枠組みに収まらない斬新で異彩を放つ空間でした。
設備や装飾も申し分なく、新たな可能性を示した銭湯です。

3位
クアパレス(千葉・習志野)
〒274-0077 千葉県船橋市薬円台4-20-9


誰もが初めて見たときは度肝を抜かされるのが、千葉の習志野にあるクアパレス。これを抜きに日本の銭湯を語れないほど突き抜けた銭湯です。
贅を尽くした建物に豪華絢爛な装飾品の数々。趣味の極地を行く、ある意味で狂気の世界です。
もちろん銭湯としての設備も妥協せず、このような銭湯があることは奇跡のように思えました。
とにかく圧巻の銭湯です。

2位
タイムリゾート町屋(東京・町屋)
〒116-0001荒川区町屋4−4−1


出典:東京銭湯ホームページ引用

今年の銭湯巡りをしてきた中で、一番活気があったのが、このタイムリゾート町屋でした。
店主と客の垣根はほとんどなく、下町の魅力が存分に発揮された銭湯です。建物は正直古びた印象は否めないのですが、開店当時はすごく斬新なところだったんだろうなと思われます。
とにかく、お客さんが元気!
自分が訪れたときはコロナの影響で入店拒否をされる可能性もあったのですが、奇跡的なタイミングで運良く入れたこともあり、印象に残った銭湯でした。

1位
金森湯(東京・町田)
〒194-0012町田市金森3−22−21

出典:東京銭湯ホームページ引用

そして個人的に栄えある一位は、なんといってもこちら。金森湯。
建物自体は小さくて決して見栄えするところではないのですが、店主の人柄、磨かれたカランや湯船。そしてなんといってもアットホームな雰囲気。
何一つとってもすばらしく、心に深く刻まれた銭湯でした。
居心地よい空間は、単に設備が豪華でデザイン性に優れているだけでなく、その人間性が放つ魅力ではないかと改めて再確認する銭湯でした。




このようにランキングにしてみましたが、ほかにもすばらしい銭湯が沢山ありました。以下では、特に個性を放った銭湯をまとめてみました。



ノスタルジック過ぎる銭湯

とにかく古すぎるだろとツッコミたくなるのが、
帝国湯(東京・三ノ輪)
〒116-0014荒川区東日暮里3−22−3


出典:東京銭湯ホームページ引用


出典:東京銭湯ホームページ引用

こちらの設備は、昭和初期をそのまま継続して使っていると思われる銭湯で、もはや生きた博物館です。
お湯があまりに熱すぎるので逃げるように出たのですが、もう少しマイルドなら長く堪能したい銭湯でした。


営業時間が短すぎる銭湯
一日の営業時間が実質40分という驚愕の短さなのが、
草津湯(東京・小菅)
〒124-0001 東京都葛飾区小菅1丁目17−3




出典:東京銭湯ホームページ引用

地域の高齢者が遠い銭湯に行くには大変だからということで、1時間を限定に開いているところです。
あくまでも地元の人向けの銭湯なので、外部からお邪魔する際は早くあがる心がけがほしいところです。


接客が神対応過ぎる銭湯
接客が素晴らし過ぎて感銘を受けたのが、
桜湯(横浜・吉野町)
〒232-0033横浜市南区中村町4-287-4


出典:神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合引用ホームページ引用


出典:神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合引用ホームページ引用


設備自体はそんなに特徴はないなのですが、受付に立たれた女性店主の対応はまさに神対対応。
今まで巡ってきた中で屈指の素晴らしい受付でした。


見晴らしが良すぎる銭湯

眺望がもっとも最高だったのが
準天然光明石温泉(人工)天空の湯(東京・浜松町)
〒105-0022 東京都港区海岸1丁目11−2


出典:アジュール竹芝ホームページ引用


出典:アジュール竹芝ホームページ引用


ホテルの最上階近くにあって、東京タワーや東京湾、レインボーブリッジを一望することができます。
入浴料1000円とやや高めですが、それを払うだけの価値がある場所でした。



まとめ

今年全体を通してみると、新型コロナの影響で通常なら混雑しているところが閑散としていたり、また廃業も相次いだ年となりました。
老舗が次々と消えていくのは大変残念ではありますが、若い人を中心にリニューアル銭湯も多くみられ、変化の兆しを感じる年でもありました。


地域別でみると、個人的に評価を高くしたのが川崎で、東京や横浜と比べても遜色なく、むしろ全体でみた場合は川崎の方が優れているのではないかとさえ感じました。
メディアで登場することが少ない場所ですが、銭湯巡りの際には強くオススメしたい地域であります。


今後、コロナ渦の影響で場合によっては一時的中断もありえるかもしれませんが、少しずつでも新しい銭湯を紹介できたらと思います。
今後とも宜しくお願い致します。






変わりゆく渋谷と連続写真を撮る意味

2020-03-26 08:19:00 | 銭湯考

いつもブログを読んでいただいてありがとうございます!

今回は銭湯にちなんだ話。。。

ではなく、いつも東京の起点にしている渋谷の写真と、それにちなんで連続写真を撮る理由を書きたいと思います。


まずは、さいきん変化が著しい渋谷。
100年に一度の大改造と呼ばれる渋谷ですが、2020年を予定していたオリンピックに合わせて大工事を敢行しており、その変化はまさしく日進月歩。



新しくリニューアルした東急プラザの屋上から渋谷を俯瞰したいと思います。



▲東急プラザを渋谷駅の汚い窓から撮影


▲右の円形に見えるところが東急プラザの屋上になっています


▲左奥が渋谷駅。手前に案内板です


▲入り口。ここからエスカレーターであがり、右にあるエレベーターに乗ると屋上に行くことができます



▲屋上に到着


▲女性たちの黄色い声が響きます


▲目の前にみえるのが渋谷の新しいランドマーク「渋谷スクランブルスクエア」


▲下を覗くと、渋谷駅。先ほどの汚い窓の建物です


▲右を向けば恵比寿方面。目の前ののっぽビルがGoogle日本法人が入るビルです


▲再開発中の宮下公園。6月にミヤシタパークへと改名されます


▲原宿や新宿方面を眺めます


▲路線も絶賛工事中


▲光と影に分かれたスクランブル交差点



そのスクランブル交差点に降りてみましょう





▲左に見切れているのが渋谷スクランブルスクエア。真ん中が東急百貨店東横店(3月閉店)。右に東急プラザがみえます


▲相変わらず大混雑です


▲この奥にみえるのが青ガエル(東急5000系車両)と呼ばれる電車で、6月上旬には秋田県に移管される予定です


▲青ガエルの中に入ってみましょう


▲ここも、めちゃくちゃ混雑してます


▲脱出



▲そして渋谷といえば、ハチ公ですよね。青ガエルが秋田に譲渡されるのもハチ公との縁が理由だそうです



▲ラグビーワールドカップの時は桜のジャージを着せてもらってました


▲外国人にも人気のHachi


▲ハチ公も将来的には移転することになってるそうです


▲朝は閑散としている渋谷駅前






▲この景色もしばらくすれば大きく変わるでしょう







そして渋谷の新名所となっているのが渋谷スクランブルスクエアです



▲渋谷駅からすぐそばです




▲ここは展望台のルーフトップもあるのですが、イベントスペースでも渋谷を一望することができます


▲最初のイベントは、半田也寸志さんの写真展『キリンのような街』でした


▲祭りの写真



ン?…祭りといえば…














ワッショイワッショイ


自分も撮ってました





▲足元に渋谷駅


そしてもう一つ、昔からの渋谷の顔といえば、こちら





▲ネオPARCO



▲いまやこんなのがあったり


▲こんなのがあったりしますが



▲ここも屋上にあがります。天の邪鬼の性格ゆえ、あえて正面から入らず、側面からのぼります


▲周回する階段を使ってのぼり








▲ドット絵を3D化したマリオが出迎えてくれます








▲のぼりきると




▲真ん中にみえるのが渋谷スクランブルスクエア。左にあるのが渋谷ヒカリエ




▲反対方向に歩くと




▲富士山をみることができました


さて、PARCOの階段を上がったときのような連続写真を撮ることについて話したいのですが…、


当ブログは銭湯の紹介を目的としたブログですが、そうしたブログの中で他のブログと異なるのは、駅から始まる連続写真ではないかと思うのです。
手間暇を考えたら、銭湯の建物からはじめたほうが楽だし合理的なのですが、あえてこだわる理由があります。

その一つが、銭湯巡りをはじめたときの違和感です。

巡っていくうちに建物の周辺や歩く道によって、その銭湯にたどり着いたときの印象が大きく異なってることに気がつきました。

建物だけを切り抜いた写真を撮っても、本来の姿を紹介してないのではないか?と感じるようになったのです。
銭湯は単独で存在してるのではなく、街とともに生きる存在です。やはり街と銭湯は一緒に語るべきだと思うのです。


もう一つ、連続写真にこだわる理由は、その街の記録をとどめたいと思うからです。街もまた生き物と同じで、変わり続けています。
その瞬間を残すことは後で振り返ったときに、街の足跡を知ることにつながるのではないかと思うのです。



たとえば渋谷スクランブルスクエア



いまはこんな感じですが…





ちょっと前はこんな姿でした
















このような変化は、二度と見られません


最後に、連続性のこだわり。
その存在を知るということは、連続性で捉えることだと思うのです。


わかりやすい例として紹介したいのが、1977年に発表された「Powers of Ten」という映画です。
この映画は、10の冪乗(べきじょう=power)により拡大ー宇宙から縮小ークォークまでの世界を巡る解像度の冒険です。




10分ほどの短編映画ですので、是非見てみてください


この映画が教えてくれるのは、私たちはミクロとマクロの狭間に生きているということです。

幼い子どもは、「なぜ?」を繰り返し尋ねますが、理解とは連続性の認識で成り立っていることを本能的に知ってるからではないかと思うのです。

時間、空間、サイズ…。
この世界あらゆる連続性を知ることが、世界を理解するための基本であると考えます。


最後に渋谷スクランブルスクエアのサイズを拡大していくと…







女の子の笑顔にたどり着くことができました。


居心地よい空間とは? サードプレイスの観点でみる銭湯の再生

2020-02-13 08:18:00 | 銭湯考

時代はさかのぼること1989年。
アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグは上梓した『The Great Good Place』の中で“サードプレイス”という概念を提唱しました。


サードプレイスとは?
その名の通り、自宅、職場(あるいは学校)とは異なる第三の場所を意味します。
生活の基盤である家族や仕事仲間とは異なるコミュニティーの場と言い換えていいかもしれせん。


たとえばカフェ、クラブ、公園などが例として紹介されますが、ほかにも床屋や美容室、ファミレス、居酒屋、ネットカフェなどもそれに該当するのではないかと思います。
特に日本では、昔から銭湯がその役割を担ってきました。


一方で、従来の銭湯とは違った形として進化しているのがスーパー銭湯です。
スーパー銭湯は特に滞在時間を長く過ごせるように設計されていて、家族が丸1日でも過ごせるようになっています。
この形態はあきらかに日常で使われる銭湯とは異なる進化です。


とくに家庭をもつ女性をターゲットにした点が特徴で、子供の遊び場やみんなで寝ころべる休憩所、食事処などがあります。
遊んで休憩してご飯食べてお風呂に入って、帰ったら寝るだけ。
家庭の煩雑な仕事から解放される仕組みが導入されています。


こうした女性やファミリー層を意識した取り組みは、かつての銭湯になかった視点ではないかと思います。


もう一つ、まったく異なる視点でコミュニティーの場を提供するのが、特定の人向けに作られた施設、「マギーズ東京」です。
これは岩波新書『〈いのち〉とがんー患者となって考えたこと』(坂井律子、岩波書店、2019年)で取り上げられた施設なのですが、自宅と病院しか居場所がなかったガン患者にもう一つの居場所を提供するという点で従来になかったサードプレイスではないかと思います。


マギーズ東京は、ガン患者やその家族の相談に乗る場所として作られた施設ですが、なぜマギーズと名乗るのかというと、イギリス人のマギー・K・ジェンクスさんという女性がガンになった際に病院ですら患者たちの居場所がないことを痛感し、それに特化した施設を自ら作ったからでした。
そうした考えと行動に共鳴した各国の人たちがマギーズハウスを作り、日本でもまたマギーズ東京が生まれたのです。


豊洲にあるマギーズ東京を訪れ、そのホスピタリズムを賞賛した坂井律子さんは、NHKで福祉や健康について番組作りをしていた方で、50代半ばのときに膵臓ガンが発覚します。
ガンが発覚した時から治療や食事に関してなど様々な面での経緯を詳細に語っているのですが、特に辛かったのが近づく死と向き合わなければならなかった不安だったようです。
どうやって多くの人はこの不安を乗り越えたのか相談したくても相談相手がいない。
そんなときに知ったのがマギーズ東京でした。訪れてみるとその居心地の良さに感銘を受けたと言います。
マギーズは、そのコンセプトと条件を明確にしていて、

・自然光が入って明るい
・安全な(中)庭がある
・空間はオープンである
・執務場からすべて見える
・オープンキッチンがある
・セラピー用の個室がある
・暖炉がある、水槽がある
・一人になれるトイレがある
・280㎡程度
・建築デザインは自由
※出典:マギーズ東京ホームページ引用

と箇条書きに記されています。
こうした項目は必ずしも目新しいものではなく、多くはガン患者を迎えるにあたって当然の部分もあると思うのですが、坂井さんはスタッフやセンター長の気遣いにとても感動しています。


マギーズ東京はボランティアスタッフで運営されていて、お菓子なども提供されるようですが、少なくとも豪華な食事やおもてなしが施されるわけではありません。
しかし、不安を抱えてる中で親身になって話を聞いてくれて、気遣ってくれる。
やはり、居心地のよい場所とは、迎え入れてくれる人の存在そのものではないかと思うのです。


人はなぜ家でも職場でもない第三の場所を求めるのか。
それは人が家庭や仕事場とは異なる解放された社会にも居場所を求める生き物だからです。


現在の銭湯にもまた、新しいサードプレイスとしての役割を担おうとする潮流が生まれています。
たとえば高円寺にある小杉湯は新しい場として「銭湯のあるくらし」「何者でもない自分」をコンセプトに「小杉湯となり」という施設を春に開業しますし、渋谷にある改良湯は、様々なイベントの場として銭湯を提供しています。
このような若手による新しい取り組みは、銭湯を再生するうえで大切な試みではないかと思うのです。
しばし斜陽産業として語られる銭湯業界ですが、こうした新しい挑戦は、銭湯を人々から改めて注目してもらうための重要な一歩になると信じています。


理想の温度を考える

2020-01-22 07:23:00 | 銭湯考

銭湯に限らず家(うち)風呂でもそうなのですが、みんなが理想とする温度は何度だろうと考えることがあります。
お風呂というのは基本的に多くの人と共有するものなので、そうした基準が明確な方が好ましいのではないかと思うからです。


しかし、現実にはみんながそれぞれ違った好みを持っており、その日の体調によって求める温度も違ったりします。
一つの結論として申し上げるのは困難ではないかというのが個人的な見解なのですが、それを承知の上であえて断言するならば42℃が一つの目安となるのではないかと思っています。


その理由としてあげられるのが人の体温です。
日本人の平均は36.8℃ぐらいらしいのですが、世界的に見ても、だいたいそれぐらいの温度です。
それでは、なぜ人の平熱は37℃に維持されるのかというと実はハッキリした理由は分からないのですが、体内の酵素を活性化させる上で37℃はもっとも好ましい温度だと言われています。


人に限らずですが、生命を維持するためには代謝し続けなければなりません。その代謝する際に使われる酵素は温度が高いほど活発に動いてくれます。
ただ、高ければ高いほどいいのかというとそうではなく、42℃を境に鈍化し始めます。
脳も42℃を越えるとダメージを受け始めるのでこれも好ましくありません。
体温は上昇する過程は好ましいのですが、一定の温度を越えるとむしろ害になります。


人がエネルギーを生み出す75%ほどが体温維持のために使われているので、それだけ体温を保持するというのは生きるためのウエイトを占めてることを意味しています。
そうした熱を自ら作り出すのではなく、体外から熱を取り込むことで代謝を活性化させリラックスする。
それが本能的にお風呂を欲する理由ではないかと思うのです。


お風呂の歴史は日本に限っていえば平安時代から始まり、蒸し風呂から湯船に浸かるものへと進化し、現在はサウナや岩盤浴といった多様な形式が生まれましたが、何百年を振り返っても、その体を温めるという本質に変わりはありません。
やはり体を温めることがあらゆる時代を通して人々に多幸感をもたらしてくれたようです。
また銭湯を通して清潔になり、社交場として人々と交流する。
今はサブカルチャーの取り込みが潮流として見られますが、そのような発展は今後もみられるのではないかと思います。


理想とする温度。すでに結論として出していますが、42℃は科学的な知見から考えても、経験的にもこれぐらいが苦なく入れる温度かなと思います。
ただ、やはりもっと高い温度を求める気持ちも当然あります。
人間というのは限界以上を求める生き物で、もっと刺激がほしいと感じると、さらなる高みを目指します。
自分の限界は45℃なのですが、玄人の域に達すると47、8℃でも気持ちよさそうな表情で入ってる人もいます。
いつか自分もその領域に達することができたならと思いつつ、ぬる湯に浸かる日々を過ごしています。