銭湯の散歩道

神奈川、東京を中心とした銭湯めぐりについて、あれこれ書いていきます。

金森湯

2017-03-29 12:36:35 | 銭湯
JR成瀬駅から歩くこと20分ちょっと。幹線道路から離れた住宅街の真ん中に、金森湯がある。近づくと煙突がみえてくる。入り口部分では、さっそく下足箱のところで男女に分かれている。引き戸を開けて中に入ると、女性の番頭さんが座っていた。年配ながら身だしなみはしっかりしており、声に品がある。品があるというか高貴な感じだ。地元客から慕われているらしく、さかんに話しかけられていた。
客同士の会話も弾んでおり、ずいぶんと賑やかだ。典型的な下町の銭湯である。
脱衣場は、照明が明るく活気ある雰囲気とマッチしてる。ただ物が少し散乱しており、雑然とした印象。体重計は今でもよく使えるなと思うほどかなり古く、なぜか身長測定器まである。
浴室も昔ながらの銭湯という感じで、サイズが小さい。種類もジェットバスやバイブラなどがあるが、だいたいそれぐらいだ。天井の高さも二階建てぐらいだろうか。それとよく分からないのだが、浴槽の縁の部分に無数の小さなアヒルのフィギュアが置いてある。ビニール製の押すとキュッキュと鳴るタイプのやつだ。小さな子どもを喜ばすためかもしれない。このへんはすごく家庭的な雰囲気である。
カランには備え付けのシャンプーが置いてある。なかなかこういう古い銭湯で備え付けは珍しい。お湯の温度は温度計が40度とあったが、肌感覚としてはそれより高いはずと思う。端っこにある小さな浴槽は、久しぶりにガツンとくる熱さだったので、たぶん45度ぐらいだろう。そっちのほうは温度計がついていなかった。
カランの場所取りは、ほかの銭湯と同じくあったが、こういう客同士が和気あいあいとした銭湯だと不思議と腹が立たない。

【評価チェック箇所】
・値段 460円
・アクセス(道程) 駅からけっこう遠い
・周辺の店 幹線道路にでれば色々ある
・休憩所 脱衣場と兼用。賑やか
・混雑ぶり 少し混んでる程度
・清潔さ 雑然としてるが、それほど汚れてる感じはしない
・接客 品のある対応
・客層 ほとんど地元客だろうが、意外と若い人もいる
・脱衣所 昔ながらという感じ
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 普通
・温度 熱め
・高低差 なし
・眺望 たくさんアヒルがいる
・食事 なし

大蔵湯

2017-03-29 07:39:59 | 銭湯
町田の隣駅であるJR古淵駅から歩くこと20分。住宅地の中に大蔵湯がある。外観こそ煙突もそびえ立つ昭和の銭湯なのだが、店内は木を基調とした最新の施設。カウンターでお金を支払って脱衣場に入ると、なんと足下は畳。濃厚な畳の匂いが漂ってくる。しかし畳だと濡れても大丈夫なんだろうか? そう思って調べたら、なんと浴室にも使える畳があることを知って驚く。この脱衣場の畳もその類なのかもしれない。ロッカーは大きく作られており、スペースもそこそこある。
そしてなんといってもここの売りは、檜の浴槽だ。銭湯で檜はなんとも贅沢であり、滅多におめにかかれない。その浴槽なのだが、完全な檜作りはメインとなる軟水のお湯で、その隣に作られた小さなふたつの浴槽は、一つが水風呂、それと温度が43~44度の比較的熱いお湯(どうせなら46度ぐらいにしてほしかった)。この小さなふたつの浴槽は、縁部分だけが檜で、あとはタイルで作られている。
カランは湯船を取り囲むようにL字で、メインのお湯の温度は42度。やはりリニューアルした銭湯は、基本42度ぐらいである。
シャワーはどこのメーカーか分からなかったが、すごく使い勝手がよかった。固定されたタイプで可動部分は狭いのだが、勢いがあって体も十分流せる。南青山清水湯のシャワーはドイツ製とホームページで胸を張っているが、こちらのほうがはるかに使いやすい。
それと入浴客が心配することではないが、檜の耐久性はどうなのだろうかと思った。
この大蔵湯は昨年12月にリニューアルオープンしたばかりなのだが、すでに檜で作られた湯出口の蓋がはがれている。片側が反ってしまったためと思われる。
それと檜と聞くと格別な印象をもつが、実際に入浴してみると、それほど感動するほどでもなかった。率直に、こういう湯船もいいなという程度である。それよりも脱衣場の畳のほうが気に入ってしまった。畳はどこよりも足の感触がよく、ほかの店舗も採用してほしいと思った。

【評価チェック箇所】
・値段 460円
・アクセス(道程) ちょっと遠い
・周辺の店 コンビニがある程度
・休憩所 綺麗でゆったりできる
・混雑ぶり 少し混んでる程度
・清潔さ 綺麗
・接客 この手の銭湯にしては珍しく若い女性だったが、対応はよかった
・客層 中年、年配者が多い
・脱衣所 畳の感触が素晴らしい
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 素晴らしい
・温度 ちょうどよい
・高低差 なし
・眺望 小さなタイルで作られた雲海から望む富士山の壁画が壮観!
・食事 なし

千代の湯(目黒・学芸大学)

2017-03-26 17:13:13 | 銭湯
東急東横線学芸大学から歩いて5分ほどのところに、千代の湯がある。最近リニューアルした建物なのだろうか、きわめて綺麗な銭湯である。入り口は旅館のような風情があり、建物の中も明確なコンセプトのもとに作られている。また一つひとつのアイテムに強いこだわりを感じさせる。
券売機でチケットを買って受付の人に渡すと、脱衣場もまた素晴らしい。最近リニューアルした銭湯(モダン銭湯と呼ぶべきなのか)は、こだわりとその清潔さがとにかく徹底している。
訪れたのは18時頃だったが、予想に反してそれほど混雑はしていなかった。学芸大学駅近くということで、若い人がとても多い。
中に入ると、左手側にカランがあり、右手側に浴槽が並ぶ。その手前側が炭酸泉で、その奥に水風呂、軟水風呂、ジェットバスとあるが、ジェットバスは弱中強と用意されている。このあたりはほかの銭湯と共通しているが、炭酸泉はタイル張りの外壁で天井まで取り囲まれており、薄暗い。小さな洞窟のような雰囲気だ。中はそれほど広くなくて、せいぜい4人ぐらいが限界だろう。ただこの窮屈さもこの雰囲気によって苦にならない。天井を仰ぎ見ると、水面の揺れが投影されており、幻想的ですらある。
お湯の温度は、炭酸泉の入り口に36~40度と明記。実質38度あたりだろう。炭酸泉に最初入ったときは暗がりで全然泡がついてないと思ったのだが、目が慣れてくると濃度の高い炭酸泉であることが分かる。
ほかの湯船の温度は、43度ぐらいとちょっと熱めだ。このあたりは、伝統的な銭湯であることを踏襲しようとした姿勢が感じられる。体重計も昔ながらのはかりタイプ。おそらくアンティークとしての意味合いもあって用いているのだろう。ただ、このタイプは精度が高くないので、やっぱり実用性を重視したら今のデジタル体重計にしてほしいと思う。
それと面白いと思ったのは、サウナはないのに水風呂がある。これはどうしてだろうか? 個人的にはサウナの是非はともかく、本当に昔ながらの銭湯スタイルを踏襲しようとするなら、サウナは邪道と思う。というのも、本来なら銭湯とは湯船オンリーだからだ。
最近は、スーパー銭湯を筆頭にサウナの常設はほぼ当たり前になっているが、一般的な銭湯となるとどうしても広さが限られる。その中でサウナを作って水風呂を作るとなると、必然的に浴槽の広さや種類が圧迫される。
銭湯は、あくまでも浴槽がメインで、サウナはオプション的な存在である。そのサウナに圧迫されるぐらいなら、サウナをなくして浴槽を充実させてほしいと思う。
それと、銭湯のサウナはスーパー銭湯のような温度を逃がさない緩衝スペースを作る余裕がないので、客の出入りが激しいとどうしても温度が下がってしまう。やはり、サウナは狭い銭湯だと不向きと感じる。
その点で千代の湯がサウナを作らなかったのは潔いと感じた(どういった経緯で作らなかったのは知る由もないが)。
あと残念だったのは、若い入浴客の大きな話し声。自分がいたときは室内にずっと響いていた。若さゆえなのだろうが、落ち着いて湯船につかろうと思うと、ここはちょっと適してないかもしれない。

【評価チェック箇所】
・値段 460円
・アクセス(道程)けっこう近い
・周辺の店 お洒落なお店がたくさんある
・休憩所 それなりのスペースが確保されている
・混雑ぶり ほどほど
・清潔さ すごく綺麗
・接客 受付は若い女性と珍しい。アルバイト的な感じはしなかった
・客層 比較的若者が多い
・脱衣所 凝った作りで綺麗
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 普通
・温度 やや高め
・高低差 なし
・眺望 壁画が素晴らしい
・食事 なし

日吉湯

2017-03-25 19:22:53 | 銭湯
横浜市営地下鉄グリーンライン日吉本町駅から5分ほど歩いた住宅街のところに日吉湯がある。ビル丸ごと銭湯で、一階が駐車場とコインランドリー、二階が受付と休憩所、浴室だ。
二階にあがる階段には、ところ狭しとポスターが貼ってあり、この時点でなにやら嫌な予感がしたのだが、見事的中する。下足箱がすごく汚く、手入れが行き届いていない。具体的には、汚れた靴下や靴が下足箱の上に放置されており、床もかなり古びた感じ。銭湯で汚いのは、商売上致命的だと思うのだが…。
入り口にある休憩所は家庭的な作りで、まるで人のうちにやってきたような印象がある。洋間と和室があるのだが、和室は完全に自宅そのもの。入浴客の母親と子どもがその和室でまったりしてたが、他人の家を覗いているような感覚だった。
脱衣場は下足箱と同じく今まで経験した中では最高の汚さ。それと目立つところに監視カメラが設置されており、ドキッとした(やましいことはしてないけど気分は良くない)。ただ、カメラの部分がおもいっきり埃をかぶっていたので、実際に機能してるのかどうかは定かでないが。
浴室は、男湯だと左側がカランで、右側が天然のラジウム温泉、そのとなりがメインとなる普通の浴槽。少し広いが、取り立てて広いというわけでもない。奥側にジャクジーの座湯とボディジェット、電気湯、それとウォーキングジェット。このウォーキングジェットはいつ頃のものなのか分からないが、古くもなく新しくもない銭湯でよく遭遇する。
さらにその隣にサウナと水風呂。外に露天風呂と続く。露天風呂は通常、囲いを岩などで作られるが、ここは内風呂と同じく全部タイル。露天でタイルは珍しいが、個人的にはこっちのほうが好みだ。浴槽はバイブラでかなり泡立っており、見た感じ物凄く熱そうにみえるが、実際はぬるい。多分40℃ぐらいだろう。半身浴だと、ずっと入っていられる感覚がある。屋根がないので、開放感はある。ただ外壁がマンションと同じなので、風情はゼロ。
それと再三の指摘になるが、ところどころ浴槽が黒ずんでいた。古くてもしっかり手入れされてるところは綺麗だが、ここはちょっと清掃を徹底してほしいと思う。

【評価チェック箇所】
・値段 470円
・アクセス(道程)ほどほど近い
・周辺の店 コンビニやスーパーなど
・休憩所 自宅のような作り
・混雑ぶり それなりに
・清潔さ 汚い
・接客 普通
・客層 高齢者や子ども連れ。ほとんど地元の客だろう
・脱衣所 大きさは普通
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 普通
・温度 銭湯にしては全体的に温度が低い
・高低差 なし
・眺望 良くない
・食事 なし

【銭湯考】温度はなぜ明示されない?

2017-03-25 17:45:27 | 銭湯考

近年、東京を中心にリニューアルオープンしたお店がいくつかあるが、代表的なものに蛇骨湯(浅草)斉藤湯(日暮里)、改正湯(蒲田)、清水湯(南青山、武蔵小山)、光明泉(中目黒)、文化浴泉(池尻大橋)、千代の湯(学芸大学)などがある。どの店も限られた空間ながらとてもお洒落で快適な演出がなされている。
こういうリニューアルした銭湯は昔の銭湯と比べると斬新なデザインやコンセプトなどが注目されるが、その一方で、もう一つ注目したいのが温度の違いだ。
昭和初期頃から続く伝統的な銭湯は、だいたい45℃ぐらいがほとんどで、常連客を満足させる熱いお湯が用意されている。それに対して新しくリニューアルしたお店は、ほぼ全部と言っていいが、従来と比べて温度設定が低い。高くて42℃。それ以上はほとんどない。つまり家庭のお風呂とさほど変わらない温度設定になっている。
これは近年にみられる誰にでも優しいユニバーサルデザインの考え方だろう。こうした銭湯が増えることは、客の裾野を広げるうえでとてもいいことだと思う。

お湯の温度というのは、服にたとえるとサイズだと思う。人によってはこの温度は入れるけど、これ以上になると熱くて入れない。服も同じで、このサイズなら着れるけど、このサイズはきつくて着れない。
アパレルなら必ず商品にタグ(サイズ表記)をつけるのだが、銭湯ではこの温度で商売してますという表記がほとんどない。これはどういうことだろうか?
インターネットのレビューをみると、評価の低い銭湯というのは、接客や入浴客のマナーの悪さと同時に、温度設定の不満が書かれている。熱すぎて入れないという不満。あるいはぬるくて体が温まらないという不満。
こうしたミスマッチはお互いにとって不幸だと思う。
温度設定の多様は選択肢の多様であり、銭湯文化を盛り上げるうえでとてもいいことだと感じる。そうした多様性がある時代だからこそ、各店舗が温度設定を明確にし、客が好みの温度でも銭湯を選べるような環境を整えるべきではないだろうか。
いまは独自のホームページを持ってる銭湯がほとんどだし、組合のホームページも所管する地域の銭湯を紹介している。そういうところで多少のアバウトさはあれ目安となる温度設定を表記することがそんなに難しいとは思えない。このあたりは銭湯の温度というのが暗黙の了解としてきた長い歴史があったせいなのかもしれない。
新しく出現してきた銭湯は、見た目のデザインだけでなく、そうした今までの意識や慣習をも変えてほしいと思う。