音の四季~風の彩

作曲家、しの笛・龍笛奏者、ジャズピアニスト、城山如水の徒然日記。
オカリナ、フルートの事も・・・・

宇宙文明間 人類の知的レベル調査

2012年07月31日 | ショート・ショート

太陽系調査課の課長と部下のQは、超銀河連合総裁に呼び出された。

太陽系調査課というのは銀河系調査部の一番小さな部署だった。いわば左遷部署、窓際部署というところだった。

課長は通称、船長と呼ばれている。

Qは「船長、また下らん太陽系調査じゃないでしょうねえ」と退屈そうに言った。

「まあ、そんなとこだろう」と船長も仏頂面だった。

超銀河連合総裁室に入ると、総裁と総合調査局長が控えていた。

「ご苦労様。このたび超銀河連合では、全宇宙文明を調査し知的進化のレベルをランク付けすることになった。
ついては、太陽系調査課には人類の知的レベルを調査し、レポートを提出してもらいたいと思います」と、総合調査局長が述べた。

「はい承知しました」と船長は返事しながら、心の中では、また馬鹿馬鹿しい調査だと投げやりな気分になった。

総合調査局長は承知の上で「まあしばらく、太陽系観光のつもりで、のんびり休養を兼ねて調査のうえレポートを提出してくれたらよろしい」と付け加えた。


船長とQは調査出張という名目で太陽系観光に出発した。

この出張中に船長とQで適当にレポートをまとめようと話し合った。

太陽系まではワープすれば瞬時に到着した。

一番景色のいい土星の軌道上でリゾート休暇を過ごすことにした。

「おいQ、人類の知的レベルなんぞ、どう評価するよ。どうしようもない調査だぞ」と船長がいう。

「まあどうしようもないレベル評価なんですから、適当にいきましょうや船長」とQ。

「まず人類は同類で殺戮しあう、最低レベルの知的生命体といえるでしょうなあ。
たしか太陽系調査課が調査を続けて数万年、人類が相互殺戮を行わなかった時期はなかったですなあ」とQ。

「ことに金、財産、領土、権利、などを発明してから、ますますひどくなった。まあ馬鹿に拍車がかかったというところだなあ。人類時間の20世紀というのは、第一次世界大戦、第二次世界大戦という馬鹿をやらかして、人類同士で数千万から億を超える殺戮をやった。こりゃもう、知的生命体としては手の付けられない最悪の馬鹿としかいいようがないぞ。」と船長

「そうですなあ船長。人類は三大宗教とか五大宗教とかを信奉していて、この宗教文明間で殺戮を繰り返してますからなあ。これがまず人類馬鹿の第一とでもいえるでしょうなあ。

それから民族紛争という馬鹿戦争。ケシ粒みたいな小さな地球で、たくさんの民族に分かれて民族文明間戦争という殺戮を続けている。これが人類第二の馬鹿。

そして第三の馬鹿は国家という大馬鹿でしょうなあ。
それこそケシ粒ほどの小さな地球で国家どうしで領土と資源利権を巡って戦争をし何千万という殺戮を人類同士でやるんですからなあ。
これが知的生命体と呼べるかどうかと思うんですがねえ、船長」

「そうだなあ、人類は知的生命体の前段階と看做してもいいだろうなあ。
宗教文明間戦争、民族文明間戦争、国家利権戦争、この人類の三大馬鹿はようするに、人類が発明した金と利権という「拝金主義」と人類が呼ぶものに翻弄されている状態に過ぎないのだからなあ。
まあ超銀河連合の知性からすると、凶暴動物的レベルとしかいえないしなあ。」

「船長、でも人類は一応科学技術に目覚めたばかりですが、知性の萌芽が見られますから。まあ、最低レベルの馬鹿生物と分類するしかありませんなあ」

「そうだなあQ。人類の一部には「存在の絶対的尊厳」に目覚めるものも認められるし、国際連合とかいうのを作って地球全体の平和を考えようとする萌芽も見られる。この点だけをかろうじて評価することにするか」

「船長、それでいいんじゃないですか。人類は宇宙文明レベルでいうと、凶暴な最低レベルの馬鹿。知性の萌芽がようやく見られる、金と利権を奪い合う凶暴生物ということでいいじゃないですか。的確なレポートに仕上がってますよ」

「そうだなあQ。これで全く間違いはないなあ」

「船長、これで人類レポートもまとまったことだし。早いとこ太陽系を離れて、白鳥座Xでお色気リゾートをたっぷり楽しんで帰りましょうや」

「ようしそうしよう。おもいきりリゾートを楽しむぞお。白鳥座Xに急行だ、Q」

「はい船長、白鳥座Xにワープします!!」



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    作 aoitori

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