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神戸国際芸術祭2008“美しき青きドナウ”/7/16(水)「ドナウのさすらい」

2008-07-16 22:51:45 | 音楽
一流の優れた音楽家達が集まり、
馴れ合いややっつけ仕事ではなく、
各自が全ての音楽性を出しきった演奏は
想像を超えるくらいに聴衆を魅了する。
当たり前だが実際にはなかなか巡り会えない
その音楽的瞬間に出会えた、
そんな音楽会だった。


神戸国際芸術祭2008~美しき青きドナウ~
「ドナウのさすらい」
7/16(水)14:00開演
神戸市西区民センター・なでしこホール


曲目は以下。

J・シュトラウス
◆美しき青きドナウ〈ピアノ三重奏版(編曲者不明)〉
 ヴァイオリン
  アレクサンダー・シトコヴェツキー
 チェロ
  ヘーデンボルク・直樹
 ピアノ
  ダイアナ・ケトラー
R・シュトラウス
◆歌劇「薔薇の騎士」よりワルツ
 ヴァイオリン
  川田知子
 ピアノ
  ダイアナ・ケトラー
◆ピアノ四重奏のための2つの小品(1893年)
『アラビア風舞曲』『愛らしい歌』
 ヴァイオリン
  アレクサンダー・シトコヴェツキー
 ヴィオラ
  ラズヴァン・ポポヴィッチ
 チェロ
  遠藤真理
 ピアノ
  ダイアナ・ケトラー
F・シューベルト
◆弦楽五重奏曲 D.956
 第一ヴァイオリン
  川田知子
 第二ヴァイオリン
  アレクサンダー・シトコヴェツキー
 ヴィオラ
  ラズヴァン・ポポヴィッチ
 第一チェロ
  ヘーデンボルク・直樹
 第二チェロ
  遠藤真理


まず簡単に音楽家の紹介を。
ヘーデンボルク・直樹(チェロ)、
ダイアナ・ケトラー(ピアノ)、
アレクサンダー・シトコヴェツキー(ヴァイオリン)、
ラズヴァン・ポポヴィッチ(ヴィオラ)
は「アンサンブル・ラロ」のメンバーである。
勿論アンサンブルだけではなく、
各自がそれぞれ世界的な活躍をしている。
加えて神戸国際芸術祭に第1回から参加している
ソロ、アンサンブル、オーケストラでも活躍する
川田知子(ヴァイオリン)、
2006年「プラハの春」音楽コンクール第3位で
ザルツブルグ在住の遠藤真理(チェロ)、
(この日は出演しなかったが)
神戸市室内合奏団ヴィオラ奏者で
神戸国際芸術祭には第1回より参加している
中島悦子(ヴィオラ)
以上である。


演奏評に戻ろう。
最も圧巻だったのは
やはりシューベルトだろう。
弦楽五重奏曲というと
2つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、
1つのチェロという編成が多いが、
この曲はヴィオラが1つで
チェロが2つである。
当然低音部が強化されている訳で
重い暗めの響きになる。
如何にも?シューベルトらしいのだが
聴いている内に私なりにだが
この編成はシューベルトにとって
必然性があったのではないかと
思えるようになった。

その必然性とは何か?
それは「哀しみ」だと感じる。
勿論明るい長調の部分もある。
しかし全部を聴き終わった後に
残る印象は「苦悩を引きずるシューベルト」である。
これはシューベルトの楽曲全てに言えると
大胆にも言ってしまうと
彼の頭を巡り巡り、決して解決しない
うつ病的な気分の重み、
そしてそこから生まれる「諦念」である。
その心理を表現するために
シューベルトはこの編成を取ったのではないかと
思われてならない。

演奏は熱演・力演を超えた「情念」の演奏。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた
アンサンブルの糸が緊張感をもたらす。
第一ヴァイオリンと第二チェロが合わす
ピチカートの連続にも
アンサンブルの糸がピーンと張り巡らされている。
またハーモニーのバランスが
絶妙のバランスで作られている。
そして、誰かスターがいる演奏ではない。
五人が正に結集して奏でられる響き。

約50分という長い曲だが
聴いている間はその長さを感じない。
しかし一聴衆として音楽家と真剣に対峙していると
演奏が終わった後に、
音楽家がアンコールを弾けないまでに疲弊するのと同様に
聴衆もその50分に疲弊する。
しかし一瞬はドドッと出る疲れだが
何か「満足」を得た後の疲れである。
聴覚は勿論だが、それだけではない
五感で得られる疲れの「満足」である。

その他の曲も小気味の良い演奏。
「美しき青きドナウ」は
神戸国際芸術祭2008の三公演で
全て違うアレンジ。
R・シュトラウスのワルツの川田も
カフェで気楽に聴けるような
ウィットに富んだ演奏。
ロマンスもヘーデンボルク・直樹の
丸みを帯びた柔らかい音色と響きが
曲にマッチする。
そしてダイアナ・ケトラーのピアノは
軽やかで柔らかい。
アレクサンダー・シトコヴェツキーの
ヴァイオリンは非常にアンサンブル、
特に途中からの入り方が絶妙。
ラズヴァン・ポポヴィッチのヴィオラは
今回も内声の美しさを
存分に味合わせてくれた。

神戸国際芸術祭2008は
あと7/18(金)の子ども対象の音楽会、
7/19(土)の舞子ビラ・あじさいホールでの
演奏会が残っている。
「超お薦め」である。
詳しくはHP http://kulturtage.jp/ja/
を参照されたい。












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