月村了衛「半暮刻」を読んだ。
前半も良かったけど、後半がすごかった。
電通と思しき大手広告代理店アドルーラーに勤めるもう1人の主人公・海斗が、
電通と思しき大手広告代理店アドルーラーに勤めるもう1人の主人公・海斗が、
公金を自社の上層部や政治家に還流させるスキームを作り、そこに半グレやヤクザが
入り込み、他方、高橋まつりさんをモデルにしているだろう部下を追い詰めて自殺させる…。
電通の東京五輪談合事件もだし、きっと大阪万博の背後では、実際にこんなふうに
電通の東京五輪談合事件もだし、きっと大阪万博の背後では、実際にこんなふうに
公金を際限なくかすめ取ってる人たちがいるんだろうと思う。
海斗が大学のイベントサークルの後輩らに、芸能人等の接待のために、お持ち帰り用の
海斗が大学のイベントサークルの後輩らに、芸能人等の接待のために、お持ち帰り用の
女を用意させるとか、最近話題の松本人志の事案も想起させるし、いろんなことが
タイムリーすぎる。
海斗の上司が、次にアドルーラーが狙うのは憲法改正時の国民投票だと言ってて、
海斗の上司が、次にアドルーラーが狙うのは憲法改正時の国民投票だと言ってて、
オエッてなった。
前々から、憲法改正の国民投票について、直前以外はCM規制がなく、金に物言わせて
前々から、憲法改正の国民投票について、直前以外はCM規制がなく、金に物言わせて
政府与党の好きなように世論を作れるからヤバいと言われてるよね。
海斗は一旦破滅?するんだけど、もう1人の主人公・翔太とは異なり、本質的な
海斗は一旦破滅?するんだけど、もう1人の主人公・翔太とは異なり、本質的な
気づきや反省はまったくなく、薄気味悪い。
部下、ヤバいヤクザ、そして翔太という別々の立場の3人から、同じように邪悪だと
部下、ヤバいヤクザ、そして翔太という別々の立場の3人から、同じように邪悪だと
指摘されても、本人は何も分かってない。
海斗にはある意味、救いがない。
なので、物語としては、変な終わり方ともいえる。
最後、翔太が懸命に海斗に伝えようとするんだけど、会話だけでそれをやられると
海斗にはある意味、救いがない。
なので、物語としては、変な終わり方ともいえる。
最後、翔太が懸命に海斗に伝えようとするんだけど、会話だけでそれをやられると
読者としてはちょっとしらけてしまう。
著者の伝えたいことを台詞でダイレクトに伝えようとするのはあんまり好きじゃない。
翔太と海斗の対比が弱くて、その2人を主人公にして、最後に対峙させることで読者に
著者の伝えたいことを台詞でダイレクトに伝えようとするのはあんまり好きじゃない。
翔太と海斗の対比が弱くて、その2人を主人公にして、最後に対峙させることで読者に
何かを見せようとした著者の目論見はうまく行ってない。
でも面白い作品でした。
現実を描いてるだけじゃん、という見方もできるかもしれないけど、それをこんなに
でも面白い作品でした。
現実を描いてるだけじゃん、という見方もできるかもしれないけど、それをこんなに
緊迫感を持って読ませるのはすごいと思う。
月村了衛って筆が早いよね。
しかもこんなにテンションの高いものをコンスタントに出せるのは立派。
月村了衛って筆が早いよね。
しかもこんなにテンションの高いものをコンスタントに出せるのは立派。