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『重力戦線』【高機動試作機】

2022-07-02 00:00:00 | 日記

まだ7月初頭というのに猛暑の中、いかがお過ごしでしょうか。

皆さん、ご無理なさらないでくださいね。

さて、絶賛上映中『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、本当に「安彦ガンダム」再現にスタッフの方々が心血注いだような印象を受ける作品で、興業収入も8億越えとか。

『ハサウェイ』が世界有数の「映像美」という名の高層ビルを目指した作品なら、「ドアン」は「安彦先生特有の描写」という日本古来の名城を最新の技術で復元したような映画です。

そんな大ヒット中の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』ですが、今日は同作に登場した『高機動型ザクⅡ(地上用)』と、ファーストガンダムMSV『高機動試作機』の繋がりや開発系譜を考察しながら、重力下でのジオニック社とツイマット社の興亡を浮き彫りにしたいと思います。

 

『高機動試作機』

ファーストガンダム・MSV世代の方には「こんなMSいたなあ」といったところでしょうか。

登場した当初と比べ、色々と設定に肉付けされているようです。

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①「ツィマット社」製MS。ザクの委託生産をしていた同社はザクをベースに新型開発として当機開発。

②「陸戦型ザクⅡ」の後継機として、ジオニック社製プロトタイプグフと競合。

③グフが陸戦型MSの完成度に主眼を置かれたのに対し、高機動試作機は重力下での高機動・接近戦・ゲリラ戦に主眼が置かれた。

④ラジエーターや装甲の強化、および機体の軽量化がなされ、背部と脚部には新開発の推進エンジンを装備し、短距離のジャンプ飛行も可能な設計となっている。

⑤プロトタイプグフより機動性は上回っていたが、推進系の欠陥が発覚。推進エンジンの出力不足で十分なジャンプができずに終わる。コスパも悪く、ツィマット社上層部と軍部の判断によって試作段階で計画中止となり、プロトタイプグフに計画が統合されたため、5機の生産に留まっている

⑥試作された5機は後に連邦軍・ガンダムのデータをもとに高機動化が図られるが、性能は期待されたほど向上せずに終わっている

⑦更に改良された機体がゲリラ掃討戦に参加したといわれる。

⑧本機で培われた技術はドムで結実する

⑨塗装は黒を基調に、一部白とグレーで塗り分けられている。

⑩型式番号『YMS-08A』。

 

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①~⑤は『MSイグルー』の「EMS-04とYMS-05の競合」をなぞっているみたいで、MS開発においてジオニック社に辛酸を舐めさせられるツイマット社の姿が垣間見えます。

『EMS-04』

⑥は『連邦軍・ガンダムのデータをもとに高機動化が図られる』とあります。

 『YMS-08A 高機動試作機 の腰』は、『ガンダム の腰』に酷似しています。

 (頭部のサブカメラも似てますね。)

 

『YMS-08A 高機動試作機 の腰』

『ガンダム の腰』

この『⑥連邦軍・ガンダムのデータをもとに高機動化が図られる』工程で、ガンダムに酷似した腰が導入されたとしたら、大河原氏デザインの『YMS-08A 高機動試作機』とは『連邦軍・ガンダムのデータをもとに高機動化が図られた後の状態』を指すのではないでしょうか。

 

⑦『更に改良された機体がゲリラ掃討戦に参加したといわれる。』の「更に改良された機体」とは一説には『YMS-08TX イフリート』とも言われています。

 

「イフリート」

 

『イフリート』も「ツイマット社」製と言われているため、信憑性もありそうな説ですが、『イフリート』は8機生産された試作機。5機の試作機しかない『YMS-08A 高機動試作機』をそのまま改良した機体とは言えません。

また「イフリート」の正式設定は「グフとドムの中間に位置する機体で、推力はゲルググを凌駕するといわれる。」です。

脚部はグフの意匠が見られますし、グフの発展機体な点は明らかと言えます。

『グフの脚部』

つまり全てを肯定すれば以下となります。

「YMS-08A 高機動試作機の計画はプロトタイプグフに統合される」

 ⇩

「プロトタイプグフからグフが開発され、地上で一定の成果を上げる。」

 ⇩

「YMS-08A 高機動試作機の不完全だった推進エンジンを完成させ、グフの技術を逆輸入し取り込む事で、重力下での高機動・接近戦・ゲリラ戦という当初目指した設計思想の完成形を「イフリート」として結実させた。」

「イフリート」は「YMS-08A 高機動試作機」の試作機5機をベースとせず、新規製造ラインで8機の試作機が製造された・・・というところでしょう。

「イフリート」はご存知のように「ガンダム・ピクシー」と互角の性能です。

「高機動試作機(YMS-08A)」の完成形が「イフリート」とすれば、ツイマット社はジオニック社「プロトタイプグフ」に敗れた「高機動試作機」の設計思想を貫き続け、ガンダムに迫る性能のMSを開発したと言えます。

 

⑧『本機で培われた技術はドムで結実する。』とありますので、「MS-09 ドム」までの開発系譜を見てみます。

 

「ザクⅡJ型の後継機・競合に敗れたツイマット社は、グフのライセンスを取得し生産開始。」

 ⇩

「グフのライセンスを生かし、グフ・ベースの『グフ試作実験機(MS-07C-5)』を開発。

 ドムの十字モノアイのベース開発に成功」

 ⇩

「地上での高速移動を狙ったジオニック社の開発であるグフ飛行試験型(MS-07H)系のMS単体飛行は失敗と見做され、飛行輸送のドダイ開発へ切替。

 ツイマット社にはMS飛行に代わる陸上高速移動・ホバーユニット開発が依頼される。」

 ⇩

「軽量化から重力下での高機動を目指した高機動試作機(YMS-08A)とは真逆の重量級・高出力により、高機動試作機(YMS-08A)と同じ「重力下・高機動」を目指す。

 重量級・高出力ベースにホバークラフト開発に成功。

 ホバークラフト装備のドム試作実験機(YMS-08B)が完成する。

 尚、頭部はグフ試作実験機(MS-07C-5)で開発されたノウハウを転用。」

 ⇩

「プロトタイプドム(YMS-09)開発を経て、ドム(MS-09)がロールアウト。」

 

ドムの元となった『ドム試作実験機(YMS-08B)』は、コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』でヴァシリーが搭乗した事で有名ですね。

この「ドム試作実験機(YMS-08B)」のコクピット部のベースは「プロトタイプグフ」というのが定説ですが、同じ『YMS-08』兄弟機の『高機動試作機(YMS-08A)』のコクピット部とも酷似しています。

『ドム試作実験機(YMS-08B)のコクピット部』

『高機動試作機(YMS-08A)のコクピット部』

ドム試作実験機(YMS-08B)は、

・頭部は実質ツイマット社の開発である「グフ試作実験機(MS-07C-5)」の流用。

・ホバークラフトはツイマット社の純正開発。

・「YMS-08」の兄弟機である「高機動試作機(YMS-08A)」がコクピット部のベースであれば、『ドム試作実験機(YMS-08B)』は機体のほとんどが純正ツイマット社ということになります。

 

そうなれば『ドム試作実験機(YMS-08B)』が『プロトタイプドム(YMS-09)』を経て完成した、地上用傑作MS『ドム(MS-09)』はツイマット社の純度が極めて高いMSといえます。

ヅダや「高機動試作機(YMS-08A)」でジオニック社に辛酸を飲まされ続けたツイマット社ですが、ホバークラフトを装備したドム開発成功によりようやく、ジオニック社・グフ飛行試験型が達成できなかったMS単体での重力下・高速移動で「勝った」事になります。

 

さて、ジオン軍ベテランパイロットの中には、ザク➡グフ➡ドム➡ゲルググとMS発展が進んでもザク系の操縦感覚を好み機種転換しない者が一部いたと聞きます。

そんなベテランパイロットの要請からなのか、ザク系MSの改修機体は大戦後期まで出続けています。

「陸戦高機動型ザクⅡ」もその1つです。

 

「陸戦高機動型ザクⅡ」

 

「陸戦高機動型ザクⅡ」はグフの技術をザクⅡJ型に落とし込んで、重力下で高機動化した機体です。

この「陸戦高機動型ザクⅡのシールド」と「YMS-08A 高機動試作機の楯」が左右反転していますが、酷似しているのです。

 

「陸戦高機動型ザクⅡの楯」

「YMS-08A 高機動試作機の楯」

これは、ジオニック社が「陸戦高機動型ザクⅡ」の開発に当たり、「重力下の高機動化」という同じコンセプトのツイマット社の「YMS-08A 高機動試作機」を参考にしている事を示唆します。

そして「高機動型ザクⅡ(地上用)」です。

 

「高機動型ザクⅡ(地上用)」

当機は「ザク」である事からジオニック社製です。

動力パイプ内蔵等、自社開発MSグフの技術も転用している事も想像できますが、一番の目玉であるホバークラフトはツイマット社が開発したという設定です。

つまりジオニック社がツイマット社から「技術供与」を受け、ザクにホバークラフトを装備した事がわかります。

ツイマット社は「高機動試作機(YMS-08A)」で「重力下の高機動・接近戦・ゲリラ戦」を目指しましたが、競合するジオニック社の「重力下の総合的MS運用の高水準な完成度」を目指したプロトタイプグフに敗れ、ジオニック社のMSをライセンス取得しグフを生産させてもらっている立場でした。

しかしジオニック社製MSの委託生産やライセンス取得し生産する傍らで、ツイマット社はそれでも「重力下の高機動・接近戦・ゲリラ戦」を目指し続け、遂には立場が逆転。

重力下のMS開発においては、ジオニック社が参考にしたり技術供与を受ける程になったのです。

この後、宇宙ではツイマット社「リックドム」がザクに代わり主力の座を奪います。

リックドム後の主力機の座は、ツイマット社・ギャンがジオニック社・ゲルググに敗れ、最終的には統合整備計画が発動されます。

しかし、MS開発途中でツイマット社にこんなドラマがあったと考えると面白いですね。