絶好調の劇場公開『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
今日は以前予告してました
「同作とファーストガンダムを融合させた場合、公式年表はどうなるか」
という今更無粋なテーマを、いってみたいと思います。
※今回の記事は「劇場版・ククルスドアンの島」が、過去作「劇場版・哀戦士」との時系列の設定が違う中、その矛盾を解消し、どっちも正しい設定にしたい人向けの記事です。そのあたりを気にしない方はスルー下さい。
1.そもそも「何が問題」なの❔
機動戦士ガンダム・シリーズの『サンライズ公式設定』は、
『サンライズ公式設定、いわゆるガンダムワールドにおける真のオフィシャルは厳密に言うならば、映像化されたものと映像化作品の中に登場するものに限って認められると考えてもいい。』
と2004年当時のサンライズ企画開発室室長・井上幸一氏が語っており、他にも
「ガンダムの創造者である意味〝神〟である富野由悠季が執筆した小説は映像化されていないものの、皆が正史と捉えるのだから、オフィシャル扱いでないとするのもおかしな話だ」
として、富野由悠季の執筆した小説に関しては例外として、準公式ではなく公式設定とする意向を語っています。
また、
「サンライズが監修し出版許可を出した漫画や小説、ムックなどの書物やゲームに登場するオリジナル設定も広義的には準オフィシャルと言えるかもしれない」と語っており、
「言ってしまえば、サンライズ公式の他にもガンダムにおけるオフィシャルはいくつも存在している。」
とも語っています。
まとめると、
【サンライズ公式】『アニメ化作品』『富野氏小説』
【 〃 準公式】『サンライズ監修の漫画・小説・ムック等の書籍』>『ゲーム設定』>『サンライズ公式外のもののうちオフィシャルに認められそうなもの』
となり、サンライズは広く「ガンダムのオフィシャル」としての門を開けてくれている事が世間に広まりました。
そして、次々と発表されるガンダム作品同士で双方並び立たない矛盾する設定が発生していきます。
有名な設定の矛盾の例を挙げると、
「機動戦士ガンダム」では「ホワイトベースがジャブローに到着する頃に、ようやくガンダムの量産機ジムが登場」し、当時の設定ではジムの実戦投入もその頃と認識されていました。しかし「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」では、ガルマが戦死する時期に既に「4年後の機動戦士ガンダム0083にジムの改良型として登場するジムC型にそっくりなジム」が登場した事。
などでしょうか。
こういった矛盾を解決するため、いつからか世間では「ガンダムの宇宙世紀・公式設定」に相反する矛盾が発生した場合に限り、以下の優先順位で公式化されると認識されるようになりました。
①「劇場版アニメ」>「テレビ版アニメ」>「富野氏小説」
上記・公式作品>『サンライズ監修の漫画・小説・ムック等の書籍』>『ゲーム設定』
上記・準公式作品>『サンライズ公式外のもののうちオフィシャルに認められそうなもの』
②上記①で同ジャンル(例:2つの劇場版アニメ)で矛盾が発生した場合、「後発作品」が「先発作品」に優先する。
この優先順位に関しては井上氏が語った訳ではなく世論が一人歩きしたのですが、論理的に導かれた結論であり、広く受け入れられています。
さて、改めて『ファーストガンダム』と劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の時系列の差異を見てみます。
左列が『ファーストガンダム』、真ん中が劇場版『ククルス・ドアンの島』です。
『ファーストガンダム』の『濃い黄緑』は『劇場版アニメ』、『薄い黄緑』は『テレビ版アニメ』です。
一方、劇場版『ククルス・ドアンの島』はコミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の時系列をベースにしている為、真ん中の時系列で『濃い緑』のタイミングになります。
見てのとおり時系列が違う事で双方が並び立たない状態あります。
先の説明とおり「サンライズ公式設定」となれば、『劇場版 ククルス・ドアンの島』が「後発の劇場アニメ』で最優先の公式設定となりますが、当作品の前後の物語の時系列がコミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』。
しかしコミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』より劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 哀戦士」が「サンライズ公式設定」として優先する為、大きな矛盾が生じているのです。
2.問題点ごとの解説
(1)劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の時期
劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は「後発の劇場アニメ」である為、最優先で「サンライズ公式設定」となります。
本作では、スレッガー中尉が補充されている上、公式HPで明言されているので、「ジャブロー攻防戦」後の時期で、舞台は「大西洋上のアレクランサ島」でなければなりません。
しかも、本作後のホワイトベースは(実際に到着したかは別として)「ベルファスト」に補給に向かう事でなければなりません。
この時点でまだ「オデッサ攻略戦」はされていない事もポイントです。
(2)「オデッサ攻略戦」「ベルファスト襲撃」「ジャブロー降下作戦」の時期
「オデッサ攻略戦」「ベルファスト襲撃」「ジャブロー降下作戦」が描かれているのは、劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」と「TV版 機動戦士ガンダム」ですが、「サンライズ公式設定」は「劇場アニメ」が優先する為、劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」がオフィシャル設定となります。
その為、「オデッサ攻略戦」➡「ベルファスト襲撃」➡「大西洋(ミハル死亡)」➡「ジャブロー降下作戦」が、「サンライズ公式設定」の順番になります。
ここにはコミック版でしか描いていない『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』が公式に入り込む余地はありません。
(3)「ジャブロー攻防戦」の矛盾
ホワイトベースは、劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の到着前にジャブローに入港。
おそらくその時期にジャブローはジオンの襲撃を受けている事になりますが、劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の後に「オデッサ作戦」へ参加し、再びジャブローに入港。その時期にまたジャブローはジオンの襲撃を受ける事になります。
つまり「ジオンのジャブロー襲撃は2度あった」事になります。
また、ジャブローでシャア専用ズゴックとガンダムが対決したのは、劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」がオフィシャル設定である以上、「2度目のジャブロー襲撃時」という事になります。
更にいえば、この「2度目のジャブロー襲撃時」にウッディ大尉はマチルダの死を口にした後に戦死。
逆説的に「1度目のジャブロー襲撃時」にウッディ大尉はマチルダの死を知らないか、ホワイトベースのクルーと会っていない、もしくはマチルダが存命と考えられます。
(4)1回目の「ジャブロー襲撃」とはなにか
こうなると劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」で描かれていない、1回目の「ジオンのジャブロー襲撃」とは何だったのか・・・という疑問が頭を出します。
1回目のジャブロー襲撃を「第一次ジャブロー降下作戦」とした場合、2回目は「第二次ジャブロー降下作戦」となりますが、「第二次」が「哀戦士」とすれば「第一次」はそれ以外となります。
「哀戦士」以外でジャブロー降下作戦を描いているエピソードとすれば、コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のガルシア・ロメオ少将とスレッガー小隊のエピソードでしょうか。
とすれば『第一次ジャブロー降下作戦』『第二次ジャブロー降下作戦』はそれぞれ以下となりますね。
【第一次ジャブロー降下作戦】
シャアが「ギアナ高地」にある「ジャブロー・ゲート4」の入口をキシリアへリークした事から、ジオン内で「第一次ジャブロー降下作戦」が決定。
ホワイトベースも「ジャブロー・ゲート4」へ入港。
時を待たずにジャブロー攻撃軍指令・ガルシア・ロメオ少将は「ジャブロー・ゲート4」の入口から侵攻開始。
ガルシア・ロメオは自ら「アッザム」へ乗りモビルスーツ主力部隊と共に、月夜の闇に乗じて「ギアナ高地」にある「ジャブロー・ゲート4」入口付近に降下。
連邦側もスレッガー小隊を先方とした「先行型ジム部隊」で応戦。
アムロもガンダムが修理中だたった為、「先行型ジム」で参戦。但しシャアとは会敵せず。
(ガルシア・ロメオの功名心から、シャアが、この作戦に不参加にさせられた可能性もある。)
ガルシア・ロメオ率いるジャブロー攻撃軍・主力部隊は、「ジャブロー・ゲート4」から「ジャブロー・ゲート6」へ侵攻。
しかし「ジャブロー・ゲート6」は新造中の工事区画で、連邦側に誘い込まれたもの。
連邦側は「ジャブロー・ゲート4と6」から「ジャブロー・中枢部」通じるルートを全て閉鎖した上に、「ジャブロー・ゲート6」に誘い込まれたジオン侵攻部隊を天井崩落させる事で一網打尽した。
「ジャブロー・中枢部」は(「哀戦士」の設定が優先する為)「アマゾン川流域の地下」にあり、ギアナ高地にある「ジャブロー・ゲート4と6」とは相当な距離がある。
連邦はこの防衛戦に勝利したものの、「ジャブロー・ゲート4と6」から「ジャブロー・中枢部」通じるルートは壊滅状態となる。
その為、ホワイトベースのクルーはジャブロー中枢部への往来が困難となり、結果としてジャブロー中枢部にいるレビル将軍とホワイトベース・クルーが会う事も無くなる。(カツ・レツ・キッカが子供施設に行く事も「ガンダム工場」を見る事も無くなる。)
ホワイトベースやガンダムの修理も「ジャブロー・ゲート4」の素材のみで行う事となり、結果として「ORIGIN形状のホワイトベース」、「RX-78-02 中期型 形状のガンダム」として仕上がる。
ホワイトベースの修理担当も「ジャブロー・中枢部」にいるウッディ大尉ではなく別な担当なため、アムロがウッディ大尉に会うことも無くなる。
一方、ジオン側はジャブロー侵攻する戦力に壊滅的な打撃をうけ、中米・カラカスのジャブロー攻撃軍・基地から北米へと追いやられていく。
また今後ジオンがジャブロー攻略する場合、「ジャブロー・ゲート4と6」から「ジャブロー・中枢部」通じるルートは壊滅状態となった為、「ジャブロー・中枢部」により近いゲートの発見が必要となる。
余談ですが、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」で白黒2機のガンダムが出るジャブロー降下作戦も、この「第一次ジャブロー降下作戦」でしょうね。
【第二次ジャブロー降下作戦】
ホワイトベースを追跡していたシャアの功績で、アマゾン川流域の地下「ジャブロー・中枢部」により近いゲートが発見され、ジオン内で「第二次ジャブロー降下作戦」が決定。
但し、この時点でジオンは劣勢を強いられており、北米キャリフォルニアベースから出せる最大限の戦力で作戦に向かうが、『第一次ジャブロー降下作戦』時と比べ戦力が明らかに不足した侵攻となる。
以下、「哀戦士」と同じ。
尚、この時のカツ・レツ・キッカが見た『ガンダム工場』にある「ジム」は、『ORIGIN版・初期型ジム』では無く、より量産しやすく改良された『ファーストガンダム版・ジム』となります。
(5)「第一次ジャブロー降下作戦」時までのホワイトベースの航路
(4)の仮説からホワイトベースは「第一次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」前に一度「ジャブロー・ゲート4」へ入港している事になります。
「第一次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」前までのホワイトベースの航路は、コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』と劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 哀戦士」では下記のように相違します。
(A)コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』
大気圏突入後、北米へ降下。中南米経由でジャブローへ入港。
(B)劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」
大気圏突入後、北米へ降下。アジア経由でジャブローへ入港。
コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』が、一年戦争開戦までしかアニメ化されてない以上、アジア経由の劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」が「サンライズ公式設定」として優先します。
更に「第一次ジャブロー降下作戦」前にマチルダが戦死していないとすれば、ホワイトベースの航路は以下のようになりますね。
①SIDE7でガンダムを受領
②ルナツーへ入港
③大気圏突入。シャアの奇襲を受けジオン占領地の北米へ降下
④ニューヤークでガルマ撃破
⑤北米から西へ抜けアジアへ
⑥ラル隊やハモンの特攻を退ける
⑦ギアナ高地にある「ジャブロー・ゲート4」へ入港。「第一次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」
要するに「劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」でハモンの特攻を退けた後、黒い三連星ドムと会敵する前に、一度ジャブローに入港している事になります。
⑥スレッガー中尉の謎
スレッガー中尉は「第一次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」後にホワイトベースに補充されたとなれば、劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』との矛盾は解消しますが、劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」の「オデッサ作戦」「ベルファスト襲撃」のホワイトベース隊にスレッガー中尉が在籍していないので、そこに矛盾が生じます。
スレッガー中尉に劇場版「機動戦士ガンダム 哀戦士」と矛盾があるとすれば、「哀戦士」では描かれていない
彼のエピソードが必要になります。
「哀戦士」以外でスレッガー中尉を描いているエピソードとすれば、コミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の「ジブラルタル前哨戦」のエピソードでしょうか。
とすれば、劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』以降の物語は以下となりますね。
**********
『アレクランサ島(ククルスドアンの島)』のアムロ捜索し出発に遅れたホワイトベースは、「オデッサ作戦」の前哨戦「ジブラルタル攻略戦」に間に合わなくなる。
「ジブラルタル前哨戦」はホワイトベース不参加のまま連邦軍の勝利。
しかし、ジオンが撤退した後の「ジブラルタル」にジオンのモビルスーツ1機が残置。その一機によりジム2個小隊が壊滅させられる事態が発生する。
「ジブラルタル前哨戦」に不参加となったホワイトベースに、この「ジブラルタルに残置するモビルスーツ1機の掃討」する命が下される。
ジム2個小隊が壊滅させられている事から本作戦を実行するホワイトベース隊に、「ジム1個小隊」のモビルスーツとパイロットが補充される。
補充された「ジム1個小隊」はかつてのスレッガー中隊の面々で、「第一次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」で先陣を切った「スレッガー小隊」が再結成され、討伐に向かう。
しかしジオンのモビルスーツ残置1機はシャアのザクであり、「スレッガー小隊」か返り討ちに遭い全滅。
アムロが救援に向かいシャアを退けたものの、スレッガー中尉は重症を負ってしまう。
スレッガー中尉は治療の為、ホワイトベースを下りる。
この時点で連邦軍のオデッサ侵攻はベルファストからヨーロッパ北部へ進んでおり、ホワイトベースはレビルのベルファストでの合流ができなくなった為、南西よりオデッサへ侵攻する部隊として進軍する。
ホワイトベースはジブラルタルから独立部隊として黒海付近へ侵攻。
ここでマチルダの補給部隊と合流し補給を受ける。
この補給で、ホワイトベースはファーストガンダム版の形状に修復し、ガンダムは「ORIGIN版 RX-78-02 中期型」形状から、「ファーストガンダム版 RX-78-2」は戻った形となる。
修復直後に黒い三連星ドムの強襲を受ける。
以下、「哀戦士」と同じ。
尚、「第二次ジャブロー降下作戦(防衛戦)」後、怪我から復帰したスレッガー中尉が、ホワイトベースに再補充される事になります。
⑦時系列の再編(まとめ)
ここまでの整理で、「サンライズ公式設定」の時系列は以下(上の「表」)となる事がわかります。
「SIDE7 ガンダム大地に立つ ~ ハモン特攻」(劇場アニメ「機動戦士ガンダム」~)
⇩
「第1次ジャブロー降下作戦」 (コミック版「ORIGIN」の一部の物語)
⇩
「ククルス・ドアンの島」 (劇場アニメ「ククルス・ドアンの島」)
⇩
「ジブラルタル攻防」 (コミック版「ORIGIN」の一部の物語)
⇩
「オデッサ作戦」 (劇場アニメ「哀戦士」)
⇩
「ベルファスト~大西洋を血に染めて」 (劇場アニメ「哀戦士」)
⇩
「第2次ジャブロー降下作戦」 (劇場アニメ「哀戦士」)
⇩
「ホワイトベース、宇宙へ」 (劇場アニメ「めぐりあい宇宙」)
ところどころの劇中セリフに不自然な点は出ると思いますが、粗方の矛盾は解消出来たんじゃないでしょうか。