つめの甘かった地球侵略計画。
人類誕生前から監視していた割りに、微生物への配慮なし。彼らの星の食品会社は日本辺りの基準でいけば即営業停止処分だろう
H.G.ウェルズの原作の基本ラインを踏襲しつつ、スピルバーグ的味付け。冒頭とラストのナレーションといい、オリジナルへのオマージュというかリスペクトというか、思い入れは感じられるもののの、ふと「インデペンデンス・デイ」を思い出す。"ウィルス"を"コンピュータウィルス"に置き換えた「インデペンデンス・デイ」の方が、H.G.ウェルズの現代的解釈が施されていた。
**************************************
しかし・・・
流石にスピルバーグ。面白かった。
俯瞰しない映画。クローズアップの映画。そんな印象。
カメラワークのことではない。
ストーリーは全てトムの視界の範囲でのみ起こる。宇宙人の計画全貌も、メカの構造も、世界の被害状況も、ほとんど語られない。電気機器がいかれ日常、必要以上にたれ流しにされている"情報"が全て遮断され、デマか真実か判然としない事ばかりが伝えられる。
特撮スペクタクルではなく、突如戦時下にぶちこまれた一人の男のドラマに仕立てている。しかも一人の男が"大統領"とか"軍人"とか"科学者"ではなく、"普通の一般市民"というところがポイントだ。(ま、トムなので普通よりややスーパーヒーロー寄りだが)
ピンチをチャンスで乗り切り、勇気を持って立ち向かった結果として"偶然知りえた"敵の弱点を突いて敵を粉砕・・・という物語にせず、ひたすら逃げまくるドラマ。
ただあまりにも弱い男ではヒットは狙えない。ヒーローを求める人々の期待に応えるべく終盤のトムは映画としてありきたりな戦うヒーローになってしまった。
宇宙船に飲み込まれるが、他の捕虜の人たちの助けで、なんとか脱出。トムの手には手榴弾のピンだけ・・・ドガン!!!
ってシーン。トライポッドをいかにやっつけるか?ってサスペンスフルなアクション描写としては、まあ正攻法でいいんですが、今までトム視点で展開してきた演出が、ここだけ客観視点に切り替わる。ティムを殺すところもそうだけど、あそこは残虐さ緩和のための処置ということでよしとする。トライポッドを倒すところもトム視点にこだわれば、内部の多分グロテスクなメカニックとそれを垣間見たトムの恐怖感を味わうことができたと思うのだが・・・この辺からトムが一般市民をやめてヒーローに変貌、演出の視点も変わり、持続してきたトムへの「共感」が途切れた。
その辺さっぴいても、徹底的に主人公に寄り添ったドラマ運びは好感が持てる。
「未知との遭遇」も「シンドラーのリスト」も、設定の説明や、事件全体を観客に伝える、高みから俯瞰した映画作りだった。だから主人公の心情の描写がやや散漫になった。
これは相当深読みだが、ホロコーストを俯瞰目線で撮ったスピルバーグは、後年ホロコーストを極めてミニマムな目線で撮った「戦場のピアニスト」を見て"やられた!!"と思ったのかもしれない。ただ一人の人間に寄り添い、その人物が知りえる以上の情報を一切伝えない映画作りをしてみたくなったのでは・・・
実験的に導入したのが「ターミナル」で、より突き詰めたのが「宇宙戦争」かもしれない。
**************************************
他気に入ったところ
冒頭のトムと子供たちのすれ違い描写。かなり秀逸。音楽で派手に盛り上げることをせず、淡々とそれでいてテンポよく、カメラワークも楽しい。このまま二時間こういうドラマを続けてほしいと思ってしまった。
後は、ヤヌス・カミンスキーのカメラ。潤沢な予算ゆえのテクニックかもしれないが、車でハイウェイを逃げるシーンの長回しが凄い。いたずらにカットを割らず観客と主人公の心情シンクロに効果あり。
ストーリー、演出と一体となり、カメラも欲張らずにトムの周囲から離れない。常にトムの視点。真っ赤に染まる大地など映像美もかなりのものだ。
それから、情け容赦なくなってきたスピルバーグの人間観。
ぶっ殺すぶっ殺す。家族以外は冷酷に見捨てる。家族でさえ、息子と娘どっちをとる?という究極の選択を主人公に強いる。
暴徒と化した群集。宇宙人もひたすら冷酷・残虐。見た目的にも絶対友達になれそうもなく、彼らの滅亡に一点の同情も抱かせない。
そして何より、ティム・ロビンスとトムのシーン。はっきり言ってここが一番白眉のシーンだ。所詮一人の男が救うことができるのは、せいぜい一人。あとは切り捨てるほかない。父親であるとは、家族以外の全部を時に殺してまで見捨てること。この重要なシーンにティム・ロビンスを起用したスピルバーグ。さすがに映画のつぼがわかっている。
だからこそ終盤のジェームズ・ボンドばりの活躍がちょっと・・・と思うが、トライポッドの檻とか、「宇宙から襲来したホロコースト」の悪夢って感じで面白かった。
ただ終盤は息切れしたのか、なんかグダグダになってきた。
トライポッドに軍隊がかっこよく反撃開始。
「装填完了!!」「後ろに立つな!!」・・・って、おいおい随分余裕出てきたじゃないの、人類。
家族との再会も・・・都合よすぎかな?
前妻役ニコールだったら面白かったが、マジメくんのスピルバーグがそんなことするわけなし(だいたいトムが嫌がるって)
**************************************
テレビ映像で一瞬流れた数十体のトライポッドが街を破壊していくシーンのようなスペクタクルをもっと見たかったという思いはあるものの、自分があの戦争に遭遇したらきっとこんな感じだろうなぁ・・・と思わせるところが、スピルバーグの上手さ。
堪能させてもらった。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
人類誕生前から監視していた割りに、微生物への配慮なし。彼らの星の食品会社は日本辺りの基準でいけば即営業停止処分だろう
H.G.ウェルズの原作の基本ラインを踏襲しつつ、スピルバーグ的味付け。冒頭とラストのナレーションといい、オリジナルへのオマージュというかリスペクトというか、思い入れは感じられるもののの、ふと「インデペンデンス・デイ」を思い出す。"ウィルス"を"コンピュータウィルス"に置き換えた「インデペンデンス・デイ」の方が、H.G.ウェルズの現代的解釈が施されていた。
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しかし・・・
流石にスピルバーグ。面白かった。
俯瞰しない映画。クローズアップの映画。そんな印象。
カメラワークのことではない。
ストーリーは全てトムの視界の範囲でのみ起こる。宇宙人の計画全貌も、メカの構造も、世界の被害状況も、ほとんど語られない。電気機器がいかれ日常、必要以上にたれ流しにされている"情報"が全て遮断され、デマか真実か判然としない事ばかりが伝えられる。
特撮スペクタクルではなく、突如戦時下にぶちこまれた一人の男のドラマに仕立てている。しかも一人の男が"大統領"とか"軍人"とか"科学者"ではなく、"普通の一般市民"というところがポイントだ。(ま、トムなので普通よりややスーパーヒーロー寄りだが)
ピンチをチャンスで乗り切り、勇気を持って立ち向かった結果として"偶然知りえた"敵の弱点を突いて敵を粉砕・・・という物語にせず、ひたすら逃げまくるドラマ。
ただあまりにも弱い男ではヒットは狙えない。ヒーローを求める人々の期待に応えるべく終盤のトムは映画としてありきたりな戦うヒーローになってしまった。
宇宙船に飲み込まれるが、他の捕虜の人たちの助けで、なんとか脱出。トムの手には手榴弾のピンだけ・・・ドガン!!!
ってシーン。トライポッドをいかにやっつけるか?ってサスペンスフルなアクション描写としては、まあ正攻法でいいんですが、今までトム視点で展開してきた演出が、ここだけ客観視点に切り替わる。ティムを殺すところもそうだけど、あそこは残虐さ緩和のための処置ということでよしとする。トライポッドを倒すところもトム視点にこだわれば、内部の多分グロテスクなメカニックとそれを垣間見たトムの恐怖感を味わうことができたと思うのだが・・・この辺からトムが一般市民をやめてヒーローに変貌、演出の視点も変わり、持続してきたトムへの「共感」が途切れた。
その辺さっぴいても、徹底的に主人公に寄り添ったドラマ運びは好感が持てる。
「未知との遭遇」も「シンドラーのリスト」も、設定の説明や、事件全体を観客に伝える、高みから俯瞰した映画作りだった。だから主人公の心情の描写がやや散漫になった。
これは相当深読みだが、ホロコーストを俯瞰目線で撮ったスピルバーグは、後年ホロコーストを極めてミニマムな目線で撮った「戦場のピアニスト」を見て"やられた!!"と思ったのかもしれない。ただ一人の人間に寄り添い、その人物が知りえる以上の情報を一切伝えない映画作りをしてみたくなったのでは・・・
実験的に導入したのが「ターミナル」で、より突き詰めたのが「宇宙戦争」かもしれない。
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他気に入ったところ
冒頭のトムと子供たちのすれ違い描写。かなり秀逸。音楽で派手に盛り上げることをせず、淡々とそれでいてテンポよく、カメラワークも楽しい。このまま二時間こういうドラマを続けてほしいと思ってしまった。
後は、ヤヌス・カミンスキーのカメラ。潤沢な予算ゆえのテクニックかもしれないが、車でハイウェイを逃げるシーンの長回しが凄い。いたずらにカットを割らず観客と主人公の心情シンクロに効果あり。
ストーリー、演出と一体となり、カメラも欲張らずにトムの周囲から離れない。常にトムの視点。真っ赤に染まる大地など映像美もかなりのものだ。
それから、情け容赦なくなってきたスピルバーグの人間観。
ぶっ殺すぶっ殺す。家族以外は冷酷に見捨てる。家族でさえ、息子と娘どっちをとる?という究極の選択を主人公に強いる。
暴徒と化した群集。宇宙人もひたすら冷酷・残虐。見た目的にも絶対友達になれそうもなく、彼らの滅亡に一点の同情も抱かせない。
そして何より、ティム・ロビンスとトムのシーン。はっきり言ってここが一番白眉のシーンだ。所詮一人の男が救うことができるのは、せいぜい一人。あとは切り捨てるほかない。父親であるとは、家族以外の全部を時に殺してまで見捨てること。この重要なシーンにティム・ロビンスを起用したスピルバーグ。さすがに映画のつぼがわかっている。
だからこそ終盤のジェームズ・ボンドばりの活躍がちょっと・・・と思うが、トライポッドの檻とか、「宇宙から襲来したホロコースト」の悪夢って感じで面白かった。
ただ終盤は息切れしたのか、なんかグダグダになってきた。
トライポッドに軍隊がかっこよく反撃開始。
「装填完了!!」「後ろに立つな!!」・・・って、おいおい随分余裕出てきたじゃないの、人類。
家族との再会も・・・都合よすぎかな?
前妻役ニコールだったら面白かったが、マジメくんのスピルバーグがそんなことするわけなし(だいたいトムが嫌がるって)
**************************************
テレビ映像で一瞬流れた数十体のトライポッドが街を破壊していくシーンのようなスペクタクルをもっと見たかったという思いはあるものの、自分があの戦争に遭遇したらきっとこんな感じだろうなぁ・・・と思わせるところが、スピルバーグの上手さ。
堪能させてもらった。
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早速読ませていただてトラバさせていただきましたっ。
おっしゃられている通り「一般市民」という部分にこの映画のポイントが
あるのではないかなぁと私も思いました。
彼はむしろダメ男なぐらいの普通っぷりを見せてた主人公でしたし(笑)
観客の代理人のトムクルーズの取る行動が、リアルさを感じました。
群集って怖いですよね、本当。
しかし前半の飛ばしっぷりのスピルバーグのテクニックは本当に面白かったです。
それではまたお邪魔させていただきますねっ。
ーですね。僕はそこまで深く考えなかったです。
とにかく映像と迫力、リアリティは凄かったですね。
2時間を越えているのに長く感じさせないのはスピル
バーグだからでしょうか。ややこしい科学者とかが
出てこなかったのがリアリティに繋がってたんです
ね。ではではお邪魔しました。
ぼくも『インデペンデンス・デイ』と違い、
ひとりの庶民の目で終始描いていた点が面白かったです。
おっしゃるように、あの手榴弾のシーンは
トムの視線で描いてほしかった気がします。
映画の日に1000円で鑑賞しました。
普通っぷりを見せつけまくっても、出ずっぱり・・・
一般人の目線を描きたい、客が飽きないようにスターを使いたい・・というスビ
とりあえず出ずっぱりで色んな演技できればいいトム
二人の思惑が運良く一致してできた企画なんだろうね
トムを観客の代理にするのは、男客の願望をかなえる意味もあったのかな?
前半の生活に疲れた感じは「いい男トム」を忘れさせるくらいに、比較的薄味なトムの演技が良かった
>tomyさま
人生フカヨミな男なもので、ついつい必要以上に色んなこと考えます。スピもあまり深く考えて撮ったわけじゃないのかもしれません(終盤で一貫性が欠ける辺りから、そのように感じます)。
>えいさま
ですよね
企画の性質上、ほとんど描かれる機会のない、トライポッドの内部構造を映し出すチャンスだったのに
あんまグロイのはスピの趣味じゃないのかな?
インディの2作目の心臓えぐり出しシーンが結構非難されたらしいです。
しんさんを初めとする宇宙戦争肯定派の熱心な説得(?)により、ちょっとだけ見直し始めた、へー太です。
ラストが前妻ニコールの冷ややかなお出迎えで、兄も出てこなかったら、私的には、この映画の評価が一気にランクアップしますね。
ってか、個人的にはニコールのでてこない場合、トム・クルーズよりもはまり役がいたんではないかなぁ、と思えてなりません。
港湾労働者は似合いませんね。
まぁ、トムだからこんな膨大な制作費が調達できたのかもしれませんが。
ただ一人の人間に寄り添う映画作り・・・なるほど。
それをやってみたかったんでしょうが、最後までもたなかった感じかなぁ。
どうもいまいちスピルバーグとの相性が悪いのは、高みから俯瞰的に見た映画だからかしら?
家族愛を中途半端に入れるからかしら?
ご質問、こたえさせていただきました(笑)。
あの錯乱状態中で何も出来ず必死で
逃げ回るだけだった気持ちが観客も手に取るように
★感じられたんでしょう~ネ!
ラストの部分の異星人の自滅があっけなくて
少し物足りなさを感じたけど
あの緊迫感と恐怖はさすがですね!
★TBありがとうございました(*^-^)