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「レディ・プレイヤー・ワン」サントラ評

2018-12-27 19:06:12 | 映画音楽
「レディ・プレイヤー・ワン」サントラ評
スティーブン・スピルバーグ監督
アラン・シルベストリ作曲


久しぶりにクラシック以外のCDを買ったので、色々書きたくなってきまして…

スピルバーグがなんか吹っ切れたかのように描くワチャワチャドタバタSFアクションに、バックトゥザフューチャーでおなじみのアラン・シルベストリが渾身のアクション音楽で応える。伊福部ゴジラテーマも鳴らして音楽も映画以上にお祭り状態なサントラの感想だ!


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スピルバーグとジョン・ウィリアムズは映画界でも伝説的な監督作曲家ペアと言って良い。こんなに長く、創作上のぶつかり合いとかの話もあまり聞かせずに一緒に取り組んできたペアは他にあまり例がない。
そんなジョン・ウィリアムズも最近はさすがに寄る年波には抗えずスピルバーグ作品を毎回担当するわけには行かなくなってきたらしい。
スピルバーグは「ブリッジオブスパイ」ではトーマス・ニューマンを作曲に起用。いままでJWの指定席だったスピルバーグ映画に空席が出来てきたので、それは作曲家たちも張り切る。トーマス・ニューマンのBOSのスコアは素晴らしく見事にアカデミー賞ノミネートを果たす。(トーマス・ニューマンはみんなの大好きな映画「ショーシャンクの空に」「アメリカンビューティ」「ファインディングニモ」などでアカデミー候補になっているがいまだに受賞のない、不運の作曲家である。キリッとした印象に残る曲を書くタイプではないので、アカデミーウケしないのはわかんないでもないが、ニモでダメなら一生ダメじゃないかと悲しくなったものだ)
これでスピルバーグの信頼を勝ち得たのかと思ったが、スピルバーグのBOSの次作「ペンタゴンペーパーズ」はまたJWに戻り、トーマス・ニューマンもやっぱまだ代打屋で、チームスピルバーグのスタメンにはなかなか上がれないのだ。

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そしてスピルバーグのドタバタ妄想バーチャルアクション「レディ・プレイヤー・ワン」
音楽にJWの名はなく、ではまたトーマス・ニューマンかと思いきやそこに記された名前はアラン・シルベストリであった。
アラン・シルベストリは「バックトゥザフューチャー」などのロバート・ゼメキス監督作品のほぼ全部で音楽を担当している人である。ゼメキス×シルベストリのペアもまた蜜月が30年以上続く稀有な例だ。
シルベストリもまたアカデミー賞の受賞経験はなく、ノミネートですらわずかに「フォレストガンプ」くらい。実力の割にアカデミーからは距離を置かれている人である。

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ふと思うにスピルバーグなら受賞歴も人気もあるハンス・ジマーやアレクサンドル・デスプラとかハワード・ショアとか選び放題だろうに、あえてこのような人選をしているのは、もしかするとJWが作曲を断った時には、アカデミー受賞暦のない映画音楽の功労者を起用して俺の映画であの人にアカデミー賞取らせてあげよう!なんて使命感を持っているのかもしれない。


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さて、なぜ今回スピルバーグはアラン・シルベストリに作曲を頼んだのか?
今回はアクション映画だからというのもあるかもしれない。
トーマス・ニューマンに、あんまワチャワチャしたアクション映画のイメージはない(007スカイフォールとか、アクション映画音楽の傑作もあるけど)。
対してシルベストリは、最近は「アベンジャーズ」の音楽やったりアクション映画は得意だ。

でも、直接的な理由は、「レディ・プレイヤー・ワン」の主人公の専用メカが、バックトゥザフューチャーのデロリアンだからという、単純な理由なんだろう。
シルベストリもデロリアン登場シーンにさりげなくバックトゥザフューチャーで使った曲をかける。とはいえ例の有名なテーマではないので、気付く人も少ないだろう。私もサントラ買ってやっと気付いたくらい。

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あとスピルバーグとしては80年代サブカル祭りの本作には80年代を駆け抜けた作曲家を使いたかったのではないか。トーマス・ニューマンはどちらかというと90年代以降の人だし。
シルベストリはバックトゥだけでなく、「ロマンシングストーン」に「プレデター」に「アビス」といった作品で80年代を駆け抜けた作曲家だ。
もちろんJWはもっと80年代ど真ん中だったわけだけど、スターウォーズやE.T.という80年代のど真ん中台風の目よりもやや周辺部に対するオマージュ感のある本作の場合、JWよりシルベストリの方が立場的にはマッチしてる気がする。

とは言えシルベストリはそこまで80年代感プンプンの曲を書くでもなく、あの頃も今も変わらないシルベストリ節の音楽で勝負する。
大物感のない軽口なアクション音楽は、しかし最近のシルベストリにはないキャッチーなメインテーマ2曲(戦いの曲と、勝利の曲とでもいうか)を軸にするおかげで、耳に残りやすくさわやかな印象。
珍しくコーラスを使ったオープニングテーマも、ジェームズ・ホーナー風で80年代を共に駆け抜けたライバルへの讃歌ともとれる。

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日本人的に1番テンション上がるのは、メカゴジラ登場シーンに、シルベストリアレンジによる伊福部ゴジラテーマがかかるところだ。原曲へのリスペクトも感じさせながらも原曲以上の迫力には喝采を送りたい
…のだけど、怪獣音楽マニア的にいうと、メカゴジラ登場なんだから「メカゴジラの逆襲」の伊福部メカゴジラテーマか、あるいは「ゴジラ対メカゴジラ」の佐藤勝メカゴジラテーマであるべきだろ!という突っ込みも。
そういえばガンダム出撃シーンのセリフが「俺はガンダムで行く」だったところも、そこは「トシロウ、ガンダム、行きまーす」だろうと思ったところと合わせてスピルバーグ、微妙にクールジャパンをわかってないな、なんて思ったりもする。
もちろんそんな些細なことで、2010年代映画界の奇跡のような「レディ・プレイヤー・ワン」の評価や、アラン・シルベストリ渾身のスコアの評価を下げたりはしない。


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スピルバーグの要求にきっちり答えたシルベストリは、ポストJWの有力候補に躍り出た。
今後JWが一線を退く場合、スピルバーグはシリアス系作品ではトーマス・ニューマン、アクションコメディ系作品ではアラン・シルベストリと使い分けるのではないだろうか?
あるいは、ジェームズ・ニュートン・ハワードとかダニー・エルフマンとか無冠の功労者たちに行くかもしれないし、今後のスピルバーグ映画と音楽の動向にも注目したいのであります。

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