3月で一旦終了してしまいましたが、もちろん皆さん「葬送のフリーレン」観てましたよね。フェルンがプリプリしてるの見てほっこりしてましたよね。フェルンとシュタルクに対してあなたも「もう付き合っちゃえよ!」って思ってましたよね。断頭台のアウラに「自害しろ」ってフリーレンと一緒に言ってましたよね。
いやぁ、面白かったですね。
でもこのアニメ、音楽がまた良かったんですよ。
フリーレンと言えば、主題歌を、最近岸田と一緒にアメリカ行って夜遊びしていたとか言う二人組のなんとかって音楽ユニットが歌ったのも話題でしたね。もちろん皆さん知ってますよね。「🎵君は完璧で究極のアイド…」…ん?あ、そっちじゃない?
まあ、クラシックと映画音楽と少しジャズしか興味ないおじさんなのでそいつらはほっとくことにします。
問題なのは主題歌じゃないんです。
劇伴音楽です
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作曲担当はアメリカ人のエヴァン・コールです。
いままで、日本のアニメで、こんなに壮大なシンフォニーでそれでいて古い時代のヨーロッパからそのまま抜け出してきたようなクラシカルな響きのスコアを書ける人がいたでしょうか。
エヴァン・コールの今のところのフリーレンを除いた代表作はアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」と、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」となりましょうか。
どちらもそんなにしっかり見てなかったので、ほぼフリーレンがエヴァン・コール初体験だったわけですがえらい衝撃を受けました。
似たような作風の作曲家がいそうでいない。
曲の一部をきりとれば、ジェームズ・ホーナーっぽいとかハワード・ショアっぽいとか、言って言えないこともないですが、やっぱり誰か似た人の要素をさがすより遥かに圧倒的にエヴァン・コールの個性が勝っています。
天才なんだなこの人…と単純にそんなふうに思いました。
どうして日本で仕事しているのでしょう?
ハリウッド映画手掛ければ10倍のギャラで、アカデミー賞ノミネートくらい軽くいけそうなんですが。
それでもなんでもエヴァンさんのおかげで日本の映像作品の音楽が大幅にレベルアップしそうで、ありがたい限りです。
なんといっても壮大なシンフォニックスコアが魅力的な本作ですが、サントラに付いていた分厚いブックレットでのインタビューを読むと「葬送のフリーレン」が凄まじく音楽に力を入れていたことがわかりました。
本作のサントラはハンガリーのブダペスト・スコアリング・オーケストラというオケで演奏・録音をしています。同じくハンガリーのコーラスを用いて様々な楽曲に荘厳さを加えています。のソリストとしてクレジットされているアリーナ・レスニックはエヴァン・コールがインスタ投稿で見つけたドイツの方で直接オファーしたそうです。
また、オーケストラに加えて様々な古楽器が演奏されます
(中世フィドル、ヴィオール、レベック…など)
それらの古楽器はまずエヴァン・コールがこういう楽器が欲しいとアニメの音楽スタッフに所望し、そしてスタッフが古楽器を集め、さらに演奏家を探したとのことです。
ツテとコネで、その楽器の奏者ならあの人が知ってそう…という情報をもとにそこから辿っていって、これぞと言う人が見つかったらオファーして、しかもそう言う変わった楽器をやる人はSNSをやってない人もいて、電話番号おしえてもらって、電話でオファーしたり
その楽器、電子音でなんとかできませんか?なんて言わずに数々のマイナーな楽器と奏者を集めに集めて録音。
映画でもそこまで音楽に力入れない気がしますが、「フリーレン」スタッフとエヴァン・コールの情熱を感じます。
そしてまた、驚くことに本作では編集済みの映像に合わせて音楽を作曲する、フィルムスコアリングという手法を多用したそうです。
普通、アニメやドラマの音楽は使いやすいサイズ(1〜3分くらいの長さ)の曲をたくさん作り、音楽スタッフが映像に合わせて音楽素材を切り貼りして仕上げます。こういうのを「メニュー式」というそうです。
それに対して、「フリーレン」では、映画のサントラのように映像に合わせて曲の中でライトモティーフを出したり引っ込めたり転調したりといった作曲をしているそうです。こういう作曲の仕方をフィルムスコアリングというのだそうです。
EC「私はもともとフィルムスコアリングという形式が好きなんですよ。ある種の自由度がとても高くなるので。フィルムスコアリングでは映像を見ながら決まった尺の中で話の進め方に合わせて曲を作らなくてはならないのですが、その曲が編集されない前提で作れるので、自分が本当にやりたい演出や音楽の聴かせ方を細かく調整することができるんです」
やっつけで適当に曲書いてあとよろしくで済ませないこのこだわりにも、エヴァン・コールの本作への意気込みを感じます。
主に第一話(金曜ロードショー枠で4話分一挙放送した第一回)でフィルムスコアリングを多用したそうです。
こうしたことを読める割と厚いブックレットがいいです。
サントラ高くてちょいと躊躇しましたが、その価値はありました。ブックレットのおかげもありすっかりエヴァンファンになっちゃいました。
1曲目のフリーレンのテーマの、なんかオリンピックの表彰式とかまとめ映像に使えそうな、壮大かつ感動的な響き
ヒンメル一行の魔王討滅後の平和なひととき、別れ、再会の曲など、どれも聞いてるだけでなんか泣けてきます。
少年漫画原作のくせにバトルシーンをあえて避けるような展開の本作ですが、それでも時折挟まれる魔族やドラゴンとのバトルシーンは、熱く盛り上がります。
ケルト風の木管が激しい音楽の中でピーヒャラ鳴るのがとてもいい味出してます。
中世ヨーロッパのミサ曲風の荘厳なコーラスにも心洗われます。
サントラでこんなに感動し興奮したのはいつ以来でしょう。
いやマジな話、日本育ちの映像界隈の音楽で歴史に残るくらいの、久石譲とか岩代太郎とか、なんなら伊福部昭とか武満徹くらいに世界に轟く存在になるのではと思ってしまいます。
サントラ聴いた最初の衝撃でいえば、ジェームズ・ホーナーやジョン・ウィリアムズを初めて聞いた時くらいのものはありました。
テレビアニメのサントラなので短めの曲が多く、もっと長い尺のエヴァン・コールの音楽を聴きたい!と強く思います。交響曲でも書いてくれないかしら。
8月の葬送のフリーレンオーケストラコンサート、マジに行こうか悩み中
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サントラには未収録ですが、「葬送のフリーレン」エンディングのmilet(ミレイと読む)の「Anytime, Anywhere」もいい曲でした。
この曲もエヴァン・コールが編曲を務め、miletの歌声に壮大なオケが重なり美しいです。音楽に統一性を与えて、毎週の余韻を醸すことに大きく貢献していました。
miletさん、NHKの冬季オリンピックのテーマ曲(そのままカーリング中継のテーマ曲としても使われてます)を歌っていた方です。
音域の広い声が魅力です。歌詞の中の「せめて、会いたいよ、なんて言わないから、ねえ、今日だけは、思い出していいかな」のところ何度聞いてもなんか泣けてきます。
フリーレンのヒンメルへの想いのようでもあります。
1000歳のフリーレンの旅はまだ続きます。エヴァン・コールの音楽にのって…
#エヴァンコール