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サントラ評 007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021-10-06 00:15:20 | 映画音楽
007シリーズ10代目の音楽担当を拝命したハンス・ジマー
これでミッション・インポッシブルと007という二つのスパイシリーズで音楽を担当したことになる
(ちなみにジマーにはこれまでにもバットマンとスーパーマンとスパイダーマンの音楽担当歴がある)
結論から言うと、サントラアルバムとしてはとても素晴らしいものだった

といっても現時点で映画は見てないし、どんな話かも知らない
映画がクソつまんない可能性もあるし、音楽が作品にマッチしてない可能性もあるから、映画音楽としての評価は保留
しかし、単に音楽CDとして聴くと、けっこう素晴らしいと思う。

とはいえ、ハンス・ジマーが、90年代やゼロ年代のころと比べると、つまらない作曲家になったなあ・・・という思いを払しょくするには至っていない。

あのころのジマーはひたすらにカッコいいメロディでグイグイ引っ張る人で、作る曲はいちいち私を熱狂させた
だが10年代くらいから、なんかミニマルミュージックかぶれのように、短いメロディ未満のフレーズを繰り返すだけの、雰囲気音楽ばかり書くようになってしまった。
クリストファーノーランと組んだあたりからその傾向が強くなった気がするので、ジマーの心変わりというよりノーランの要求のせいかもしれない。
彼のそうした楽曲がハリウッドメジャーを席捲し、彼の弟子たちも似たような曲を増産。映画音楽のスタイルを変えてしまった。
それによってジョン・ウィリアムズのようなライトモチーフ型アプローチを古臭い古典的なものにしてしまったことには功と罪があると思う。


で、今回のジマーによる007音楽は、10年代以降の(古典的な映画音楽好きな私には物足りない)ジマー音楽の延長である。
とはいえ、ひとつひとつの楽曲の完成度は、そこはさすがはジマーというか、非常に高い。それでいて気張ることなくいつものジマー節をしっかり作って、007をジマー色に塗り替えていて、その点は濃いというか癖の強い人なんだなと思った。
だけでなく、シリーズへのリスペクトも感じる。
アルバムの2曲目はジョージ・レイゼンビーがボンドを演じた「女王陛下の007」の主題歌というか挿入歌でルイ・アームストロングが歌っていた「We have all the time in the world」のメロディだ。それをたっぷりと抒情的に大らかに歌い上げる。
そして「女王陛下の007」のオープニングタイトルやアクションシーンで使われたメインテーマをゆったりと、不気味な響きにアレンジした曲も11曲目に登場。ブロフェルド登場シーンにでも使うのだろうか。
この「女王陛下の007」リスペクトはいったいどういうことだろう。
"Cuba Chase"というタイトルの曲では、キューバ出身のトランペット奏者のアルトゥロ・サンドバル(ディブ・グルーシンのアルバムによく参加。最近だとクリント・イーストウッドの「運び屋」で作曲担当としてクレジットされている)のトランペットによるラテン音楽風味が炸裂して、かなりしびれる。
もともとアクションシーンの音楽で時代を築いてきたジマーだけに、アクション場面の音楽はやはり上手い。個人的には最近の007のメイン音楽担当のデビッド・アーノルドや、「スカイフォール」のトーマス・ニューマンより(アクション場面については)うまいと思う。
でも、一番心をつかまれる曲は、ラストシーンの曲と思しきサントラの20曲目"Final Ascent"だ。
007映画らしからぬ、悲しみを湛えたような、悲痛な響き。しかも最近のジマーにしては珍しく、メロディが立ってる。こんな悲しい曲で一体映画のラストでは何が起こるって言うんだ。

で、この曲のメロディが立っていた理由がよくわかるのが、サントラの最後を飾るビリー・アイリッシュの歌う主題歌「No Time To Die」で、なんだ"Final Ascent"は主題歌と同じメロディじゃんか
と思うと同時に、重要なことに気づく。
007で、作曲担当が主題歌の作曲も担当するというのが、実は久しぶりのことではないか。だからインストメインのサントラアルバムに主題歌も一緒に収録できたのだ。スカイフォールの主題歌はとても素晴らしい歴代ボンド主題歌でNo.1かもしれない名曲だったが、サントラには収録されていない!!!!大人の事情なんだろうけど、そこは無理してでも入れてほしかった。だからビリー・アイリッシュの曲を収録できたのもジマーという大物起用のおかげかもしれない。その一点でもジマー、グッジョブ!!
さらに言えばジマーが主題歌の作曲をすることも久しぶりじゃないか。「ライオンキング」も主題歌はジマー作曲じゃないし、ジマーが主題歌作曲をしたなんて「ブラックレイン」くらいしか思いつかない。
それくらい、ジマーは今回の007に入れ込んでいたのだろうと思うのである。
ビリー・アイリッシュの歌はもちろん素晴らしく、このか細い声は、恐らくオープニングでなく、エンディング用の曲ではないかと想像。もしくは「女王陛下の007」のように挿入歌か?
一体映画でどんな風に使われるのか?楽しみだ。
洋楽聞かない私でもなんとなく聞いていて、なんとなく好きなビリー・アイリッシュ。単に人気があるから使ったという感じの曲には聞こえない。きっとビリーアイリッシュとハンス・ジマーを使う前提で映画が作られていったのじゃないだろうか。

映画はどうなってるかわからんが、サントラアルバムとしては快心の出来となっている「ノー・タイム・トゥ・ダイ」ぜひともサントラをお楽しみください

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