個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
鑑賞はもちろん震災前。感想が書き難くなった。
本作は冒頭のTSUNAMIシークエンスの映像表現が高く評価されアカデミー賞で視覚効果賞にノミネートされた。
冒頭の場面は津波である必要は無い。火山噴火でも竜巻でもいい。異国の地で天変地異に遭遇するシチュエーションが必要である。映画の構成においてはツカミの場面として、自然に対して人間の無力さを感じさせ、それをもって神ではないけど人知の及ばない力を感じさせるため。制作が震災の後なら他の場面に変えたに違いない。仮に竜巻に差し替えたとしたらアメリカで2011年4月に発生した巨大竜巻による大災害の影響は避けられなかっただろう。自然災害を扱う映画は常にリスキーということだ。
しかし本作は自然災害をスペクタクルなショーにした映画というわけではなく、生きる孤独を乗り越えていく話であり、ロマンチックなラブストーリーである。それでも冒頭のワンシーンのために複雑な思いを感じてしまうのは確かだ。
また、これが単なる駄作であるなら別にいいのだが、実は個人的にはかなり気に入った佳作だっただけに難しい。
ともかく、思いつくまま、たらたら書いてみる。
「グラントリノ」で自らを葬ったイーストウッドは、その後に「インビクタス」で国家の再生と人々の平等を描き、そして魂の不滅を今作で描く。言い残すことはないかと探しているようだ。
本作はヨーロッパ人たちの物語だ。題材が「死」であるだけに宗教や文化により考えも価値観も大きく異なるので、変に物語を複雑にしないための配慮かもしれない。
けれども宗教や文化の問題だけではなく、人種というものへのこだわりを感じる。
少年の兄は黒人を含んだストリートギャングによって命を落とす。フランス人ジャーナリストの女性は中国系女性によって地位を奪われる。アメリカ人の霊能力者は深い意味は無いかもしれないが劇中においては黒人女性の願いだけは拒絶し、4人の白人に対して霊能力を使う。
変に勘ぐっているだけかもしれない。フランス人女性はインドネシアで被災したけれどもアジア系の男の蘇生を受けたし、何より彼女が垣間見た死後の世界で共に被災したインドネシアの少女を見ているのだから。
イギリス人の少年は危なく爆弾テロに巻き込まれるところだったが、あのテロがイスラム原理主義系のテロ組織によるものとは限らないだろう。お国の事情を考えれば北アイルランド独立派によるものとも考えられる。ここも誰によるテロなのかは重大でなく少年の目の前で起こる惨事として地下鉄テロが物語に組み込みやすかっただけだろう。
文明と繁栄を享受してきた白人たちの世界に、様々な宗教や文化が流入している(思えば津波は流入のメタファーだったのかもしれない。)。消えゆく古い世界の中で死を身近に感じる者たちはそれでも愛を求める。
繁栄が副産物として破壊をもたらす一方で、愛は創造をもたらす。
ぼんやりしたイメージで死後の世界を感じていた霊能力者は、ラストで愛による未来を鮮明にイメージする。単なる妄想かもしれないがはっきりと感じた創造的な未来へ2人は歩を進める。ちょいと音楽がおセンチすぎるというかオーバーな印象はあったけど(ドリフの志村けんと桜田淳子の夫婦コントの曲を思い出す)、破壊と死と喪失の果てに愛に着地したこの映画のラストはやはり忘れえぬ感動のシーンなのだ。
なのに・・・
[追記]
映画.comの3月17日の記事より引用
3月15日に全米でリリースされた、クリント・イーストウッド監督作「ヒア アフター」のDVD収益の一部が、東日本大地震で被災した人々のための義援金として寄付されることが明らかになった。
同作には、大津波の被災シーンがあることから内容が適切でないとして、日本では上映が中止になったばかり。発売元のワーナー・ブラザース・ホーム・エンターテイメント・グループは、寄付金の比率を明らかにしていないが、関係筋によれば100万ドル前後になりそうだという。
今回の発表に際し、イーストウッド監督は「日本がいま直面している荒廃と損失は、理解しがたいほどだ。日本の人々に手を差し伸べようという試みにワーナー・ブラザースとともに参加できてうれしい」と声明を発表した。
[追記2]
レディ・イン・ザ・ウォーター ブライス・ダラス・ハワード
スーパーナチュラル女優としてこれからも奮闘してほしいものです
彼女もスーパー能力持っててマット・デイモンと対決したら良かったのに~
********
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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鑑賞はもちろん震災前。感想が書き難くなった。
本作は冒頭のTSUNAMIシークエンスの映像表現が高く評価されアカデミー賞で視覚効果賞にノミネートされた。
冒頭の場面は津波である必要は無い。火山噴火でも竜巻でもいい。異国の地で天変地異に遭遇するシチュエーションが必要である。映画の構成においてはツカミの場面として、自然に対して人間の無力さを感じさせ、それをもって神ではないけど人知の及ばない力を感じさせるため。制作が震災の後なら他の場面に変えたに違いない。仮に竜巻に差し替えたとしたらアメリカで2011年4月に発生した巨大竜巻による大災害の影響は避けられなかっただろう。自然災害を扱う映画は常にリスキーということだ。
しかし本作は自然災害をスペクタクルなショーにした映画というわけではなく、生きる孤独を乗り越えていく話であり、ロマンチックなラブストーリーである。それでも冒頭のワンシーンのために複雑な思いを感じてしまうのは確かだ。
また、これが単なる駄作であるなら別にいいのだが、実は個人的にはかなり気に入った佳作だっただけに難しい。
ともかく、思いつくまま、たらたら書いてみる。
「グラントリノ」で自らを葬ったイーストウッドは、その後に「インビクタス」で国家の再生と人々の平等を描き、そして魂の不滅を今作で描く。言い残すことはないかと探しているようだ。
本作はヨーロッパ人たちの物語だ。題材が「死」であるだけに宗教や文化により考えも価値観も大きく異なるので、変に物語を複雑にしないための配慮かもしれない。
けれども宗教や文化の問題だけではなく、人種というものへのこだわりを感じる。
少年の兄は黒人を含んだストリートギャングによって命を落とす。フランス人ジャーナリストの女性は中国系女性によって地位を奪われる。アメリカ人の霊能力者は深い意味は無いかもしれないが劇中においては黒人女性の願いだけは拒絶し、4人の白人に対して霊能力を使う。
変に勘ぐっているだけかもしれない。フランス人女性はインドネシアで被災したけれどもアジア系の男の蘇生を受けたし、何より彼女が垣間見た死後の世界で共に被災したインドネシアの少女を見ているのだから。
イギリス人の少年は危なく爆弾テロに巻き込まれるところだったが、あのテロがイスラム原理主義系のテロ組織によるものとは限らないだろう。お国の事情を考えれば北アイルランド独立派によるものとも考えられる。ここも誰によるテロなのかは重大でなく少年の目の前で起こる惨事として地下鉄テロが物語に組み込みやすかっただけだろう。
文明と繁栄を享受してきた白人たちの世界に、様々な宗教や文化が流入している(思えば津波は流入のメタファーだったのかもしれない。)。消えゆく古い世界の中で死を身近に感じる者たちはそれでも愛を求める。
繁栄が副産物として破壊をもたらす一方で、愛は創造をもたらす。
ぼんやりしたイメージで死後の世界を感じていた霊能力者は、ラストで愛による未来を鮮明にイメージする。単なる妄想かもしれないがはっきりと感じた創造的な未来へ2人は歩を進める。ちょいと音楽がおセンチすぎるというかオーバーな印象はあったけど(ドリフの志村けんと桜田淳子の夫婦コントの曲を思い出す)、破壊と死と喪失の果てに愛に着地したこの映画のラストはやはり忘れえぬ感動のシーンなのだ。
なのに・・・
[追記]
映画.comの3月17日の記事より引用
3月15日に全米でリリースされた、クリント・イーストウッド監督作「ヒア アフター」のDVD収益の一部が、東日本大地震で被災した人々のための義援金として寄付されることが明らかになった。
同作には、大津波の被災シーンがあることから内容が適切でないとして、日本では上映が中止になったばかり。発売元のワーナー・ブラザース・ホーム・エンターテイメント・グループは、寄付金の比率を明らかにしていないが、関係筋によれば100万ドル前後になりそうだという。
今回の発表に際し、イーストウッド監督は「日本がいま直面している荒廃と損失は、理解しがたいほどだ。日本の人々に手を差し伸べようという試みにワーナー・ブラザースとともに参加できてうれしい」と声明を発表した。
[追記2]
レディ・イン・ザ・ウォーター ブライス・ダラス・ハワード
スーパーナチュラル女優としてこれからも奮闘してほしいものです
彼女もスーパー能力持っててマット・デイモンと対決したら良かったのに~
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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
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この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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