以下は2021年2月11日に産経新聞出版から、中国の電撃侵略2021-2024,と題して出版された、門田隆将と石平の対談集からである。
現在の日本を代表する気鋭の評論家である御両名の最新著作である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
中国が隣国として存在している日本国民全員は今すぐに最寄りの書店に向かわなければならない。
彼らならではの中国についての世界最高レベルの真実の解明である。
世界の人たちには私が出来るだけ知らしめよう。
以下の章が読まれなければならない最たる人達は米国の民主党支持者達である。
何故なら、彼らの多くは、この章で明かされている真実を全く知らないからである。
米国民はいい意味でも悪い意味でも大雑把なところがある。
自分達の国が資源にまで恵まれた世界一幸せな国だったからだろう。
民主党支持者の多くは自分の家の庭の芝生の事にしか関心がないはずだ。
世界の国々の動向等に関しての知識は、日本国民とは比較にならない程、少ないはずである。
だから私は、この章を先ず米国の民主党員とその支持者達に届ける。
日本国民は、全員が最寄りの書店に今すぐに購読に向かわなければならない。
序章 バイデン政権の4年
p50ーp75
歴史に刻まれる危機
門田
バイデン政権がいよいよ始まりましたが、今回の米大統領選ほど釈然としないものはなかったですねえ。
あれほど不正選挙の明白な事例が明らかにされても、「不正があっても結果が出たんだから、もうそれでいいよ」ということになってしまったことが驚きです。
事情を知らないはずなのに、不正なんてなかったんだよ、と断定する人もいる。
アメリカって、正義を愛する国であり、国民であり、最後は「やっぱり不正を解明してから、次に進もう」となるのかと期待していました。
でも、駄目でしたね。
巻頭文でも書いたように、長い期間と犠牲のもとに、やっと人類が獲得した白由と民主主義がこうも簡単に踏みつぶされたことに愕然としました。
これを平気でやってのけたアメリカ人たちは、自分たちが全体主義への道、つまり、”異論を許さない”暗黒社会に向かって突き進んでいることになぞ気がつかないのか、と思います。
逆に、あそこまで追い詰められていた習近平体制にとっては、本当に天祐ですね。
バイデン政権誕生で完全に”息を吹き返し”ました。
これまで巨額な”投資”をしてきた甲斐があったわけですよ。
トランプ氏の退陣によって、これからの世界は、まちがいなく中国を中心にして動いていきます。
”中国の世紀”が始まるのです。
バイデン氏を推し、応援した日本の識者たちには、これから起こることにどんな感想を持つのでしょうか。
あなたは、中国の人権弾圧をどう思うか、人間の命をどう思うか、アジアの危機についてどう思うか、香港やウイグル、チベットの人々についてどう思うか……聞きたいことが山ほどあります。
しかし、アメリカ人以上に中国への警戒心がないのが日本人です。
「日中友好」を言えば、なんでも許されるのが日本です。
私はこれを”日中友好絶対主義”と名づけていますが、本当に真の意味で危機感を持って欲しいですね。
日本人は危機意識がまるでない。
新型コロナウイルスでこれだけの目に遭っても、中国の恐ろしさに目を向けない。
経済界はまたぞろ中国、中国と言っています。
石平
日本が中華帝国に飲み込まれたらどうなるかを知らないからですよ。
2020年(令和2年)ほど中華帝国の恐ろしさを表した年はありません。
コロナがあり、香港があって、最後はアメリカ大統領選。
われわれの子供、孫、そのまた孫の世代が中学校で世界史を勉強するとき、2020年のこの三つの出来事が分岐点だったとして登場するかもしれません。
これらすべて「民主主義の危機」という意味で歴史に刻まれる可能性があります。
門田
いや「かもしれない」ではなく、必ずそうなりますよ。
2020年が、歴史の大転換点であると”太ゴチック体”で表されることになるのは、間違いありません。
この2020年は中国の干支の組み合わせで37番目の「庚子(かのえね)」に当たります。
これは「大厄」で歴史的に動乱などが起こるとされる年なんですよ。
その通りに中国にとっては1月から大変なコロナ禍になり、アメリカの強力な経済制裁もあった。
打つ手打つ手が全部失敗し、6月30日の香港国家安全維持法(国安法)によって世界中の自由主義陣営からそっぽを向かれるというような事態に陥った。
中国は本当に大厄の年だと思っていたわけです。
ところがその大厄の年に流行った疫病によって、中国は大敵であった日本の歴代最長政権となった安倍晋三政権、そして”最大最強の敵”アメリカのトランプ政権、この両政権を倒してしまった。
これは肉を切らせて骨を斷つ、中国の恐ろしい大逆転劇です。
大厄が、逆に中国にとっての幸運の年に変わってしまったわけです。
石平
そうです。そして民主主義は危機にありますね。
欧米における「コロナ禍」の拡大では民主主義の弱点が明らかになりました。
「香港」では民主主義も人権も法も、いとも簡単に中国に殺されてしまった。
そして2020年の「アメリカ大統領選」が民主主義の否定と破壊になりかねないという展開です。
簡単に言えば、もし不正な手段で選挙が行われたなら、民主主義は終わりだということです。
今回の大統領選では、民主党とその支持者たちは政権を取り戻すために、あるいはただトランプという自分たちの嫌いな人間を引きずり下ろすために、絶対に越えてはならない一線を越えた可能性があります。
もし、そうであれば民主主義の根幹を破壊したことになります。
門田
習近平率いる中国は「中華民族の偉大なる復興」を実現するために全精力を注ぎ込んできましたが、ついに最大のターゲットであるトランプ政権を倒しました。
そしてかねて誼を通じていたバイデン氏が大統領になった。
21世紀は今後「独裁と弾圧の世紀」になるのではないかという、その”大転換点”として記録されることになりましたね。
石平
2020年の大統領選で、もしアメリカの民主主義が崩壊していたとしたら、中国共産党にとってアメリカという重しがなくなるだけではない。
中国人民に民主主義の失敗を告げることになります。
つまり、中国共産党政権の独裁政治、全体主義の一種の勝利になるということです。
全体主義に対する民主主義の戦いの行方に危機感を持って、ポンペオ国務長官は20年7月23日の段階で、ニクソン大統領記念図書館で、あの対中演説を行いました。
門田
「自由世界が共産主義体制の中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と警告して、自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗するよう訴えましたね。
石平
要するに、アメリカと中国の戦いは単なる両国間の戦いではないということ。
自由主義と共産主義、民主主義と全体主義の戦いだということです。
今になって考えてみたら、ポンペオ国務長官はアメリカの中にも民主主義を破壊する勢力との戦いが実際に起きていることを述べていたのかとも思います。
つまり、2020年という年はアメリカを中心とした世界秩序の崩壊によって、民主主義崩壊のスタートになったと記録されかねない。
冷戦の終結が民主主義の勝利だったわけですが、それから30数年が経ったら逆のことが起きてしまったわけです。
バイデン氏の疑惑
門田
2020年に行われたアメリカ大統領選を通して日本のメディアには「バイデンも反中だ」とわかったふうなことを言う識者が登場していましたね。
とんでもない話です。
石平
バイデン氏が2013年12月4日から中国を訪問したときにどんなことをしたかを知らないのか、と。
バイデン氏と習近平氏の癒着関係はこの中国訪問で一目瞭然になりました。
門田
問題の北京訪問ですね。
石平
このときバイデン氏は副大統領です。
副大統領であるバイデン氏が息子のハンター・バイデン氏を中国に連れて行ったのです。
夫人が外国訪問に同行することはあっても、息子が同行することは一般的にはない。
中国側が容認しなければ連れていけませんよ。
門田
そのバイデン氏に「疑惑の北京」で何があったかは、すでに2020年9月、上院に共和党が精力的に調べた結果として報告書が正式に出ています。
そこには多くのことが指摘されています。
それによれば、まずハンター氏は中国から帰国後、自身が代表となって「ローズモーント・セネカ・パートナーズ」という投資会社を設立。
ここに中国の複数の銀行から億ドル単位の出資金が振り込まれました。
ここが何をやったか。
まず同社は、中国の「中国華信能源公司」という投資企業と連動して、振動防止の軍事精密機械を製造していたアメリカ企業「ベレンス」を買収するのです。
中国華信能源公司は、人民解放軍との関係が極めて深い会社ですから、こことハンター氏の会社が何を狙っていたのかわかります。
さらにハンター氏は、中国華信能源公司の傘下にある「華信インフラ投資会社」と共同で、投資企業「ハドソン・ウェスト」を2016年に設立します。
この華信インフラはハンター氏の法律事務所に、判明している2017年8月から2018年9月の間だけで480万ドル(およそ5億円)を「相談料」の名目で振り込んでいる。
また、ハンター氏は同時期、華信インフラ社長の董龚文氏と共同の銀行口座を開き、董氏が振り込んだ10万ドルを叔父のジェームズ・バイデンとその妻サラの遊興費に充てたと指摘されています。
当該の上院委員会の報告書は怒りを込めて「父親の公的な立場を利用しての巨額の不正利得行為である」と告発しているんです。
興味深いのは、ローズモント・セネカ・パートナーズが中国銀行の子会社と共に上海に「渤海華美」(渤海華美股権投資基金管理有限公司 Bohai Harvest RST) という投資会社を設立したことです。
ハンター氏は同社の取締役になり、ここに中国側から実に10億ドル(約1000億円)が出資されているのです。
公安当局にも採用されている中国の代表的な顔認証システムの会社に同社が投資し、「ウイグルの人権伴圧に協力する企業への投資が許されるのか」と批判が巻き起こったのはご承知のとおりです。
中国はすでにバイデン家を「一家ごと買収済みだ」と言われる所以がそこにあります。
2019年5月、民主党の大統領候補選の過程で、バイデン氏は中国について「彼らがわれわれアメリカの昼ごはん(注/「利益」のこと)を”横取り”したって?冗談はよせ。彼らは悪い人々ではない。競争相手ではないんだ」と語り、民主党左派からも「バイデンの中国擁護は度を過ぎている」という声が上がりました。
しかし、ハンター氏への中国の“巨額投資”からすれば、このぐらいのリップサービスなど当然のことでしょうね。
下院でもアンディ・ハリス氏ら18人の共和党議員が「バイデン氏が副大統領在任中に家族の経済利益増大のために中国共産党幹部らと不正な協力をしていたことを示す証拠が出ている。われわれは司法省に対して特別検察官を任命して刑事事件としての捜査を開始することを要求する」との刑事事件捜告を求める声明も出ています。
アメリカは、あのウォーターゲート事件で国民の怒りが爆発し、ニクソン大統領が辞任に追い込まれた民主主義の国です。
それなのに、民主党支持が9割の米マスコミでは、これらが黙殺されたんですから、信じられません。
中国の水面下の工作、つまり、サイレント・インべージョン(沈黙の侵略)の凄さとマスメディアの左傾化には言葉もありません。
石平
バイデン氏の訪中は非常に戦略的に練られていますね。
門田
実は副主席時代から習近平氏はバイデン氏と関係が深いわけです。
バイデン氏の2011年8月の訪中時の担当が習近平国家副主席。
そのときバイデン氏は四川省まで行き、その案内まですべて習近平氏が行いました。
石平さんはご自身のチャンネル(YouTube「石平の中国深層分析」)でも彼らの写真を紹介されていましたね。
石平
そうそう。
門田
シャツの袖をまくり上げ、親友同士が笑い合っているような習近平氏とバイデン氏の写真です。
二人の蜜月ぶりがよくわかります。
この半年後の2012年2月には今度は習近平副主席夫妻が訪米し、バイデン副大統領がわざわざ空港のタラップの下まで迎えに行くという異例の厚遇をしました。
今度は逆にバイデン夫妻が習近平夫妻に西海岸を案内し、晩餐会はやるわ、華僑コミュニティに飛び込んでいって、即興で習近平を讃えるスピーチをするわ、とアメリカでも二人の関係は周囲を驚かせました。
そうした蜜月が2013年の息子ハンター氏を伴っての訪中につながります。
つまり、2013年12月までに話は全部まとまっていたわけです。
石平
副大統領という存在は、将来の有力なアメリカ大統領候補ですからね。
門田
そうです。だから中国にとってはたとえ上院議員が束でやってきても、それを接待するのと訳が違う。
2011年の、お互いが副大統領と副主席のときから関係を築いて今年、2021年にはその関係が10年になります。
習近平氏にとっては、「ついにこの時が来た」という思いでしょうね。
アメリカの民主党内で誰がいちばん習近平氏と親しいか、中国と誼を通じ合っているかについては”スーザン・ライスか、ジョー・バイデン゛かと言われてきました。
スーザン・ライス氏も4回訪中して、習近平氏にも確かに会っています。
しかし、バイデン氏の場合は、そのレベルでないことは、この2011年からの一連の経緯を見ればわかります。
その末に、息子の会社に10億ドルの資金がぶち込まれたわけですからね。
中国のことを知らない識者たちが「もはやアメリカは議会まで反中だから、バイデン氏が大統領になったところでアメリカの方針は変わらない」と言っていますが、それは表向きのことです。
バイデン氏が大統領になるということは、習近平氏の”側近”がアメリカ大統領になるようなものです。
普段はカモフラージュで反中を装っても、あとで話すように、最も肝心な台湾への中国の電撃侵攻などについては、信じられないような行動をバイデン氏は採るでしょう。
そういう危険な「バイデン政権の4年間」が始まるのです。