ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

街にベンチアートが生まれた背景

2020-03-09 07:54:26 | 日記


江戸時代までは街中でも人々は通りの中央を闊歩していたと思うのです。それが明治時代以降になって自動車が普及したとたん、街中の通りの中央部分は自動車に占領され、街を歩く人々は通りの両側に押しやられて、許可された狭い道幅の中を窮屈な思いや、肩をぶつけ合いながら歩くしかなくなりました。更に過酷なことにその通路には疲れても休む場もありません。だから人々はひたすら目的地まで耐えて歩き続けなければならなかったのです。でも、そんな生活を文句も言わずに受け入れたのは、自動車の持つ利便性や経済効果を認めて、その利潤に頼った生き方を人々が選択したからですよね。

でもこうした抑圧的な生活環境は少しずつ通りを歩く人を疲弊させました。人々は街中を歩く魅力が持てなくなり、徐々に街中へ足を運ばなくなったのです。この結果、人の集まる場所にかたよりが生じて、活力の地域格差、地域の経済格差が生じ、街全体としても活力が失われていきました。

これではいけないと、街に人々を呼び戻そうと行政も商店主たちも立ち上がりました。その第一弾の矢として、最強の手段だとして取り組んだのが、1階に、地面に、人があふれる、人が滞留し続ける街づくりです。そこに軸足を持ってこそ、真にアクティブな街づくりは始まるのだと考えたのです。そして、着目したのが街にベンチを設置することでした。歩き疲れた時にいつでも座れるベンチこそが、最小の投資にして、街に最高の効果をもたらすと考えたのですね。実際、ニューヨークでは2,000ものベンチを座りやすさ、色調の統一、そして会話のできる配置などを考えて戦略的に設置しました。その結果、多くの人々が街に戻って来たのです。

この結果に意を良くして第2弾の矢が放たれました。こうして街中に戻ってきた人々を逃がさず、飽きさせず、長く留まってもらおうと「パブリックアート」の芸術作品が街中に出現したのです。人々はその作品を見に集まるようになりました。パブリックアートとは名前のとおり公共の場所に置いてあるアート作品で、美術館などに行かなくても、誰でも行けそうな場所に置いてあるのが特徴です。設置される空間の環境的特性や周辺との関係性において、街中の空間の魅力を高める役割を担ったのです。公共空間を構成する一つの要素と位置づけされ、記念碑的なものより、象徴的なもの、コンセプチュアルなものになります。そこには建築の壁画、音、風、光などを利用したものも含まれます。皆さんもユニークなアート作品を街中で見かけて実感されているのではないでしょうか。

現在は第3弾の矢が放されています。今、パブリックアート作品とベンチの組み合わせや、ベンチ自体がアート作品であるものなどが街中で見られるようになりました。アート作品とベンチの組み合わせの一つの事例が、写真で紹介した丸の内仲通りのベンチたちです。

街中を歩いていると、必要がなくても座りたくなる、そんな奇抜なデザインのベンチがいろいろと出現しています。年齢を重ねるごとに、お世話になる頻度も増えていく街中のベンチ。座り心地だけでなく、デザインやどんな材質かも気になるところです。

最近は街歩きが楽しくなってきました。これからはこうした奇抜なアイデアのベンチアートを見つけながら歩こうと思います。街を歩いていて、さまざまな形状、さまざまな場所にあるベンチを眺めていると、そこにたくさんの物語を感じることができるのが魅力ですね。
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